機関誌「IMF-JC」2005冬号


IMFインフォメーションNo14
欧州GMリストラ交渉の行方
IMF(国際金属労連)シニア・エグゼクティブ・オフィサー(SEO)
鎌田 普(かまだ・ひろし)
72年 IMF−JCに入局。
75年 IMF本部に派遣。各種産業担当部長を歴任し、99年に現職に就任。

GM社リストラ計画発表

GM社 は、昨年9月初頭、2006年末までに当社の西ヨーロッパにおける子会社、即ち、独アダム・オペル社、、英ヴォクソール社、スウェーデン・サーブ社の不採算部門を閉鎖、1万2000人を解雇、5億ユーロ(約700億円)のコストを削減するというリストラ策を発表した。会社の意図は、余剰設備の削減を通じて生産を集中させ、余剰人員を整理し、賃金・労働条件の切り下げなどによってコストを削減し、もって生産性を向上させ、競争力を回復し、収益性を確保・向上をさせる、とみられている。

プロローグ − 2004年IGメタルの交渉

欧州抗議行動日にデモするIGメタル労働者1
2004年2月、バーデン・ヴュルテンベルグ州を皮切りにドイツ各州金属労使間で26ヵ月に亘る新労働協約が締結さた。困難を極めたのは、使用者側から提案された賃金の調整を伴わない週35時間から40時間への労働時間の延長をめぐる交渉であった。IGメタルは、週35時間労働の原則の放棄を全面的に拒否したが、同時に必要な場合においては、労使合意の下に通常の賃金にて労働時間を延長することに同意した。

通常年の協約交渉は、州別の協約が企業レベルで大きな問題もなく適用されるが、2004年の場合、事情は大いに異なった。この稿では、欧州ゼネラル・モーター(GM)社、特に同社のドイツ子会社であるアダム・オペル社での交渉と国際連帯活動に焦点を当ててみたい。




アダム・オペル社での交渉

ドイツでは、昨年9月以降数ヵ月に亘った困難な交渉の結果、12月半ば、アダム・オペル社とその労働者協議会との間で協約が結ばれるに至った。その大まかな内容は、以下の通りである。
9千500人の自主退社。
「移転会社(Transfer Company)」と呼ばれる民間再訓練専門企業での再訓練。最長1年間の再訓練中最高退職時賃金の85%が政府によって支給される。経費は、ドイツ政府とオペル社で折半。
退職一時金 の支払い。

 会社側は、9千500人中、6千500人は、上記協約の適応を受け、1千人が早期退職、2千人は子会社へ転籍すると見ている。9千500人については、政・労・使三者による協力で一応の見通しはたったが、9千500人の枠が果たして「自主退社」という形で埋まるのか、埋まらなければ強制解雇ということになるのか、状況は予断を許さない。GM社は、さらに残る2万5千アダム・オペル社の労働者の賃金についてその引き下げを考えているといわれ、2005年に入っても厳しい交渉が続くと予想される。

 またGM社は、イギリス、スペイン、スウェーデン、ベルギーにおいても計2千人に上る「自主退社」に関する交渉を控えており、IMF加盟組合は、厳しい状況におかれている。


国際連帯活動

欧州抗議行動日にデモするIGメタル労働者2
さて、ここでGM社の攻勢に対し、欧州各国の労働組合、欧州金属労連(EMF)、またIMFがどのような国際連帯活動を行ったのかみてみたい。

欧州各国で厳しい交渉が続く中、欧州GM労働者協議会 は、欧州金属労連(EMF)と緊密な連携の下、10月19日を欧州抗議行動日 とし、ベルギー、ドイツ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、イギリスで「欧州GM枠組み協定」に基づいて抗議行動を行い、集会を開いた。ほぼ全ての欧州GM社の工場で同日抗議行動・集会が組織されたことは、特筆に価する。

独アダム・オペル社のボッホム工場の労働者は、10月14日、ストに突入し、20日、会社側から強制解雇は行わないとの保証を得るまで7日間に亘るストを打った。同工場で労働者協議会側が会社側から強制解雇は行わないとの保証を引き出したのは、19日の欧州統一抗議行動が大きな影響を及ぼしたことは言を待たない。

 IMFも欧州域外でGM労働者を組織するIMF加盟組合に抗議行動への参加を呼びかけた。ブラジルにおけるIMF加盟組合が呼びかけに応え、GM社の3工場において同日集会持ち、ヨーロッパのGM労働者の連帯活動を妨げるような過剰生産・輸出活動を行わないことを申し合わせた。しかし残念なことに親会社の労働者を組織する全米自動車労組(UAW)から苦境に立たされている欧州GM労働者・労組への国際連帯の意思は表明されなかった。

 国際連帯は、IMF活動の生命線でもある。ややもするとそれは、口先の連帯にとどまってしまうきらいがある。意味のある国際連帯を実現するためには、問題の「当事者解決の原則」を超えた関係加盟組合の問題解決への「積極的な関与」が不可欠ではなかろうか。

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