機関誌「IMF-JC」2005冬号

すくらむトライ

労働組合の社会貢献活動事例

「電機連合田圃」
“新しい生き方との関わりを持つ”

電機連合組織部長
片岡 武夫


◆鈴木前委員長の思い
 
そば打ちに興ずる参加者
私たち電機連合が千葉県の鴨川市にある「大山千枚田」に2反の田圃を借りて農業ごっこを始めてから2年が経過しました。事業も一通り軌道に乗ってきましたので、これまでを振り返ってご紹介させていただきます。
先ず、私たちにとっても驚きだったのが02年4月1日の朝日新聞に載った「労組が農園つくります」という見出しでした。その下に「電機連合、来年度発足へ計画」となっていたものだから、その日は朝から大騒ぎになりました。最近までJC議長も務めた、当時の鈴木委員長の思いが強く出た記事でしたが、今度はそれを、私に事務局として形にしろと下命されました。何しろ私、自慢じゃないですが下町生まれの下町育ち、米は米屋で、野菜は八百屋でしか見たことがないといっても過言でないレベルでした。困りました。手始めに近くに畑を借りて、農民の真似事も始めてみました。そのうちにわかってきました。
新聞記事では退職した組合員の第2の人生を農業でという、いわゆる帰農が話題となっていましたが、農業という異業種への大きな舵取りをするには、先ず遊びから入らなければダメだと思いました。実際、遊び感覚で楽しくやると、農業は苦じゃない。収穫の喜びはお金じゃ買えない至福の瞬間です。
ですから、肩肘張らずに「農業ごっこ」しましょうと声を掛けました。同時に、食の安全に関信が高まっていた時期でしたので、安心・安全な食物とは?という観点でもボールを投げかけました。鈴木前委員長の思いとはちょっとズレてしまった感がありますが、ゴールはまだ先ですから、評価は後日談に委ねるとします。



◆徹底した遊びと真面目な姿勢
 
収穫の秋−稲刈り作業
こうして滑り出した電機連合田圃計画、電機連合結成50周年行事の一環として募集し、90名の参加を得ました。田圃は、東京から一番近い棚田・千葉県鴨川市の「大山千枚田」に2反の田圃を借りました。コーディネートは加藤登紀子さんがご主人の遺志を継ぐ「鴨川自然王国」にお願いしました。
どちらも、棚田や里山、古くから人間の周りに存在し人の手が必要な自然、これを守るための活動をしています。技術指導は大山千枚田保存会の農家の方々です。なにしろ、苗なんて見た事もないような参加者ですから、教える方も大変です。鈴木委員長はじめ、指導員の方に怒られまくりながらの作業です。田植え、草取り、稲刈り・・・もちろん無農薬で天日干しです。農作業が終われば、地元農家の人たちとバーベキューで交流会です。手作りの伝統芸「祭り寿司」もテーブルを飾ります。宿泊は大山千枚田会員農家へ民泊し、交流を深めています。翌日は農作業とは違った遊び、蕎麦打ちやうどん打ち、凧作りや炭焼き、こんにゃく作りにハイキング・・・遊びの要素タップリですが、中にしっかりと学習を調和させた試みを行っています。遊び心に真面目な意識が調和し、大変素晴らしい雰囲気が出来上がりました。







◆安心できるものを安全に

なれぬ手つきで田植え
 このように滑り出しから2年が過ぎましたが、当初は受け入れ側農家の方と「ふざけるな!」と衝突したり、民泊をすればお上からお咎めを受けたりと、いろいろとありました。労働組合がこのような取組みをすることへの是非も議論の途中です。しかしながら、滑り出して加速しているのも事実です。本年は関西での試行を行う勢いです。
電機産業と農業、全く異なるフィールドではありますが、農業を通じて新しい生き方との関わりを持ち、農業という人間の営みに欠かせない「食」、安心できるものを安全に供給されることを真剣に考える、これがいわゆる「農」とのの関わりなんだと思います。こんなあたりまえの事を真剣に取組む、こんな事があってもいい、いや、あるべきだと私たちは思っています。

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