第46回協議委員会   来賓あいさつ

皆さん、こんにちは。大変遅参をして申しわけありませんでしたが、会議の冒頭、鈴木議長のほうから途中で入るというご紹介もあったようでありがたいと思っております。
 今日は、中央労福協の年次全国総会と国際労働財団の総会と、両方行ったり来たりをしておりまして、こちらのほうに駆けつけるのが遅くなりました。おわびを申し上げたいと思います。
 なお、議長のあいさつについては、昨日、事務局のほうから私のところに送っていただきまして、事前に見させていただきましたので、あいさつは聞いておりませんが、中身は承知をして、これからお話を申し上げたいと思います。
 先週行われた中央委員会の中で幾つか申し上げたのですが、1週間たった段階で極めて様相が一変をしてきていると申し上げられると思います。


衆議院選の結果について
中身的には、衆議院選挙が終わった、その審判の結果がどうだったのかということから申し上げたいと思います。ご承知のように民主党は改選議席を大きく伸ばしはしたものの、当初意図していた政権交代に至るという数には届かなかった。勝ったということを言う方と、いや、そうではないと言う方とおられるのですが、目標としたところから見れば、私は勝ち切れなかったというふうに申し上げたい。
 その上で、昨日も税制調査会、それから、その前に財政制度審議会等が建議を出したり中間報告を出したりという内容を受けて、夜の『ニュースステーション』だとかいろいろな番組の中で、これに対する取り上げ方が行われた。けさの新聞でもかなり大きく載っておりますが、私はその中で言われた言葉、共通して言われたのが、結果的に、今政府が打ち出そうとしている内容を、今回の衆議院選挙の中で、絶対安定多数を与えた、国民が認めてしまったことだ。だから、それをやろうとすることに対してツケを請け負うというのは、これは今回の選挙結果から見れば、国民が押しつけられてもやむを得ないという選択をしてしまったことは非常に残念だったと、こういう評価がされている。まさにそのとおりだと思うのです。
 選挙の関係については鈴木議長のほうからも触れられておりますが、数字的なものも含めて少しだけ申し上げておきたい。今回、解散前の自民党と民主党の議席差は110ありました。それを50埋めて60まで接近をしてきて、二大政党体制の足場は固まったことは間違いなく言えると思う。しかし、この60の差がどこに起因しているか。もちろん、そこまで追い込んで、二大政党だというような選挙戦に持ち込んで、政権公約(マニフェスト)を掲げたこの戦略は、私は成功したと思う。しかし、勝ち切れなかったという部分はものすごく政策的な中身も含めた地域差があり過ぎたということなのです。特に中国・四国・九州、ここには選挙区が70あります。この70の選挙結果を見ると、自民党の60勝、民主党の10勝なのです。ここの50の差があるわけです。では、それを除いた比例に置きかえると8ブロック、近畿以東の地域はどうだったかというと、108対95なのです。完全に二大政党体制のそういう足場が固まったという状況になっている。しかし、この中・四国・九州ブロックの中の差が埋め切れてないということです。

これはもっと細かく言えば、日本海側だとか、北関東の3県だとか、圧倒的な勝利をおさめた愛知県に隣接する岐阜県だとか、勝ち切れないというのは全く勝てないというような地域もあるわけだけれども、そこにどういう政策を打ち出し、そして、そのことに対する評価を得られるかということを考えていかない限りは、今の状況の中での民主党が政権を取るという逆転現象というのはまず起き得ない。だけども、国民はそれに比較をすれば比例の票は比較第一党を民主党に与えたという、非常に矛盾をしたような選挙結果になっていますが、要するに地域性が色濃く出たと言える。その地域性に対してこれから政治がどう打っていくのかということが1つ、選挙の戦略としてあると思う。

その上で政権公約の問題について、私は草野事務局長と今週の初めに民主党の菅さん、岡田さんと非公式にお会いし、こちらの注文を言わせてもらいました。来週、そのほかの幹部の方々と個別にお話をするという予定になっています。
ここの中で、民主党は今まで女性の支持率が非常に低く、消費税率を超えたことがなかった。しかし、今回それが自由党との合併によって、そして政策を打ち出すことによってかなり高まってはきたけれども、まだまだ自公政権与党の比ではない。ここの部分、何が欠けていたのか。いろいろな女性の方々、いろいろな年代や層の方々とも選挙が終わった後、意見交換をさせてもらった中で、一様に言われることは、民主党には生活感が感じられないということです。 
マニフェストの中でいろいろなことを打ち出したけれども、ほんとうに今国民が希求しているものに対して、こうだという政策をきっちり打ち出せたのかどうか。特にあの最後に絞りに絞った5つの約束、2つの提言、あの中に国民が今、ほんとうに日本全体を覆っているものに対する不安感、不信感、不満感を払拭してくれるものを打ち出せたのか。これが欠けていたし、そこにもっと言えば生活に密着した政策が明確に打ち出されてなかったのではないか。

そのほか、もう1つだけ言われたのが、民主党は全体的に非常に優秀な議員はおられるし、年齢層も若くなっているが、イメージとして「いい男ぶってる」というイメージがある。ほんとうにいい男なら女性は好きだと。それから多少薄汚れていて危なっかしいようなおっさんでも、頼りになれるというのならやっぱり好意を持てるという。どうもそこの「ぶってる」というのが一番拒否反応が多いという意見もある。これは直接言わしてもらいました。ちょっと苦笑いしていましたけどね。
だけど、そういうものを含めて結果的には自民党に絶対安定多数を与えたツケ。その中で特に今、我々がこれから行動展開をしていかなければならないのは、選挙戦の焦点を与党がぼかした。特に社会保障に対する部分ということになると思うのです。具体的に言った公明党もあります。しかし、そのことに対する是非をこれから問わなければいけない。<ページのトップヘ>

日本全体を覆っている3つの不安をどう解消するのか
今、日本全体を覆っている部分の中では、やはり3つの不安をどう解消するかが一番の問題だと思う。1つは我々が直面している雇用不安、2つ目が社会保障制度、税制を中心とする将来の先行き不安、3つ目が失われてしまった安全神話を取り戻さなければいけない安全への不安、この3つをどう取り戻すのか。言ってみれば暮らしの安心を取り戻し、そして将来の安定を確保して、地域の安全を確立させるということに対してどう取り組むか。中でも今すぐやらなければいけないのが、先ほど申し上げた、今矢継ぎ早に出てくる社会保障や税制に対する問題である。

これに対して私は、きょうも事務局長と午前中相談をして、来週月曜日、緊急的な記者会見をやって、そこから具体的な行動に出ることを宣言したい。その中身についても明確に打ち出しをしていきたいと思っています。その上で来週中に総理との政労会見のセッティングができたので、総理に要請し、その翌日から社会保障制度を中心にした連合の行動展開に入る。来年は年明け早々からもう具体的な行動を矢継ぎ早に展開し、我々が求めていくものの実現に向けての全国的な行動展開へ持っていかなければいけないだろうと思う。

なぜかといえば、今出されているさまざまな問題、例えば、サラリーマンを直撃する負担増、給付の切り下げなど、すべてサラリーマンに押しつけようとする内容になっている。言ってみれば公明党が提起している定率減税の問題、そして住宅ローン減税を全部なしにようとしている問題などもある。社会保障の問題でも財政審や税調の中には、労働側の委員は30名中1人しかいませんから、かなりいろいろなやりとりをしても結局多数決で押し切られたという経過もありますが、その論議に対する紹介もせずに、いかにもこう固まったというような出し方をしてくる。<ページのトップヘ>

年金制度の改革について
特に許せないのは、社会保障の問題の中で年金制度の問題についてです。これは具体的に連合案があります。まだ、まとまってないところもありますが、我々はまじめな納税者であり、まじめに保険料を払っているという立場の中から、ほんとうに安心して支払いができ、そして給付を受け取れるという内容に切りかえなければいけない。言ってみれば戦後50年のいろいろなシステムを21世紀型の新しいシステム・ルールに変更させるという役割は、私は連合に参加している労働団体の役割にこれはもう一番かかってくると思っています。

2つだけ個別的な問題について言及をしますと、1つは定年制度の問題があります。65歳の制度化の問題について厚生労働大臣が提起をし、経済界挙げて反対の声が起こる。すべてこれはコストの問題、人件費の問題から来ている。しかし、今、その中で特にまた許せない発言が1つだけありました。それは年金支給開始年齢65歳までの引き上げでは、もうこれももたないから67歳までどうかという発言を日本経団連の副会長のお1人が発言をされたという報道があった。接続の問題をどうするのか。定年制度の問題については我々自身もいろいろな意見が2つに分かれている部分もありますが、いずれにしても雇用保障と年金支給開始年齢の問題についての接続というのは、これがなさなければ生活設計なんてできるはずがない。イージーに経営側がすべて支払いコスト問題から出てくるということに対して、労働側はシステムの再構築をしながらそれにどう対応していくのか。そのことをやっていかない限りは将来の安定というのはまず成り立たないという部分について我々の考え方を明確に打ち出し、その実現に向かっていかなければいけない。その上で定率減税等の問題について触れれば、不公平税制が全く解消されていない。税制のどこを改革したのかというと、言ってみれば一番取りやすいところから取るということを矢継ぎ早に打ち出し、そしてその全部をサラリーマンに押しつけていることになれば、それに対してどういう対応をしていくのか。この行動計画も含めて私は来週以降、皆さん方にも提起をし、一緒の行動をお願いをしていくということをやらせていただきたいと思っています。<ページのトップヘ>


医療保険・介護保険制度の改革について
もう一つは、医療保険制度、介護保険制度、これは来年4月以降の国会論議ということになっていくと思う。いずれにしても来年度中に制度変更ということになりますが、この中でも特に介護保険制度は3割負担ということが明確にいろいろな審議会の中で言われ始めている。その比較が非常にひどい。医療保険制度に比べれば負担が低いと言う。医療保険制度が3割だから介護保険制度も3割にしていいのではないかと馬鹿げたことを言っている。医療保険制度全体の問題のパイがあまりにも負担が大きくなり過ぎてきているので、財政の負担の問題を含めて目立たないようにさせて制度をつくり、そしてこれの1割を負担させるようになった。医療保険のほうがいつの間にか3割に上げられて、抜本改革もされてないのにこちらを3割にする。こちらと比較をしたら低いからって、そんなばかな論拠でいつまでも負担を上げるというほうに全部ぶつけられて、何も制度ができ上がっていないというようなことを許しておくわけにいかない。だから、我々の役割は、雇用と暮らしを守るということがどうしても貫かなければならないときに、この2つが極めて明確におびやかされようとしていることに対してどう立ち向かっていくのかというのが、今労働運動がやらなければならないことだろうと、私はそう思っています。<ページのトップヘ>


2004年春季生活闘争について
その上で、そういうこととあわせながら2004春季生活闘争という問題が始まります。私は中央委員会のときに2つ申し上げました。1つは今年の交渉ほど毎年言われている以上に企業別労働組合、企業連を含めた現場の経営に対応しているところの交渉力が問われる年はないと申し上げた。これは事前にもう既に定昇制度の問題を含めて制度見直しの交渉が始まっておりますし、それによって今までの我々が持っていた賃金制度というものが大きく変わってくる。そして、それに対して給与水準や労働条件水準がどうなるかということを全部整理しなければならない。し直しをしなければならんということになるわけですが、どういう制度にしても、今までの原資がどうなっていて、そのことがどう確認をされて、それの配分がどうなっていくかというのは、これは労使交渉の最大の役割になっている。この問題について明確に組合側のそういった問題に対する交渉力、そして、それ以降のチェック力と、さらには制度をこれから維持していくための責任力も問われるということになっていくだろうと思います。各論の問題、幾ら上げるとか何とか、そういうことについてはとかく申し上げるつもりはございませんが、大きな変化の流れの中で、今確実に直していかなければならないことに対して、労働側の責務としてそれをどう果たし抜くのかということが問われる2004の春季生活闘争というふうに位置づけられると思います。
もう一つ申し上げたのが、中小を中心とするところに対して、これはナショナルセンターの役割を負うということと、そして非典型労働、いわゆるフルタイマーでユニオンショップのない人たちに対する我々の労働条件カバーをどうするかということについて、新しい運動展開の中で、これは10月に行われた連合の大会の中で、連合評価委員会からの提起について、すべての産別がその実践とその具体的な実現に向けて向かっていくべきだという意見を言われました。もしそれを実現していくということになれば、私が今言ったようなことを1つ1つ、企業別まで含めた縦の三段階構造、そして地方連合も含めれば4つのそれぞれの役割の中でどういうふうに変革をさせていくか。思い切って取りかえていかなければならないことにつながっていくだろうと思っています。

本の先導役としてのJC共闘の役割は今後も変わらない
いろいろな意味合いを込めながら、21世紀、新しいスタートを切って、もう4回目の春季生活闘争の交渉展開になっていくわけですが、時代変化と、そして役員のいろいろな心根も含めて問い直し、そして、そのことの新たなる検証をし、その実践の中で実効を上げていくということが求められるというふうな重要な位置づけの年だと思っております。そういう意味ではいろいろな今までの日本の先導役の中でこのJC共闘が果たしてきた役割、私はパターンがどう変わろうとも、それは変わらないと思う。物づくりを中心にしながらの今の日本の労働側の総意が、このJC共闘の中にすべて託される先導役、そのことをまた切り開いていく役割を、心からご期待を申し上げ、連合としても総力を挙げた闘いの中でJCと一緒に闘いを進めていくということも申し上げて、連合としてのごあいさつにさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。(拍手)<ページのトップヘ>