プロフィール:マレーシアで権利を求めて闘うオルグ
2015-12-04
マレーシアのインダストリオール加盟組織12団体のうち2団体、電機産業労組(EIWU)と電子産業従業員組合連合(EIEU連合)は、この国で電子労働者を組織化するという困難な仕事に取り組んでいる。
ここ50年間、マレーシアの国内総生産(GDP)は年率平均6.5%で増加しており、アジア諸国で最高の記録を達成している。好景気の電子産業は、この成長に貢献している大きな要因の1つである。
この産業は、「東洋のシリコン・アイランド」と呼ばれるようになったマレーシア初の自由貿易地区バヤンルパスで1972年に誕生し、その後他の州に拡大した。
2013年には、およそ35万人が電子産業で働いていた。そのうち最大60%が主としてインドネシアからの移民労働者だが、ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、フィリピン、ベトナム、カンボジア、インド出身の労働者もいる。
これらの移民労働者はほとんどが未組織で、高い就職斡旋手数料、低賃金や賃金の遅配・不払い、給付の不支給、危険な労働条件、不適切な宿泊設備など、職場で多数の問題に直面しており、法的保護が不十分であるために使用者による虐待にさらされやすい。労働者の約70~80%が女性である。
組合承認に関する法律
インダストリオール加盟組織のEIWUとEIEU連合は状況を改善したいと考え、電子労働者の組織化推進を決めた。しかし、両組合は2つの深刻な問題に突き当たっている。マレーシアの抑圧的な労働組合法・労働法と、移民労働者とのコミュニケーションを妨げる言葉の壁である。それに加えて、専従オルグと弁護士も足りない。
マニヤム・プーバンEIWU書記長は、労使関係法はマレーシアの労働組合にとって大きな障害だと言う。「この法律によると、労働組合は使用者による承認を申請しなければならず、それを受けて使用者が人的資源省への組合登録要請により、組合を承認するか否かを決める。人的資源省が承認を却下すれば、組合員は解雇から保護されない」
無記名投票で組合支持率が51%に達すれば、承認を得ることができる。しかし、交渉単位の規模が法律で定められていないため、使用者は票を不正に操作することができる。例えば、投票権を持っていないが、棄権によって反対票を投じたとみなされる臨時労働者や移民労働者を追加することができる。このため、50%の最低基準を達成するのは難しい。
しかし、問題はあるものの組合は意欲を失っていない。2014年、EIEUとEIWUは共に、ASEAN地域の電子労働者を対象とするインダストリオールの5カ年組織化プロジェクトに参加した。インドネシア、タイ、ベトナム、台湾のインダストリオール加盟組織の労働組合員600人が組織化訓練を受け、直ちに効果があった。
マレーシアでは、経営側による強い抵抗と組合つぶし戦術にもかかわらず、EIEU北部地域が多国籍エレクトロニクス企業で900人を超える労働者の組織化に成功。初めて、移民労働者も対象とする団体交渉協約を取り決めた。
マニヤムEIWU書記長は組合組織化活動についてこう説明する。「成功するか失敗するかにかかわらず活動を続けている。新しい会社を確認し、そこの労働者との接触を試みている。そして会合を開き、労働組合とその機能について簡単に説明している」
女性の役割を承認するための措置として、2014年にインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織から成る女性委員会が設置された。EIWU代表のクマリが議長に選出された。女性の問題が議題に含められ、インダストリオール・マレーシア協議会の優先課題に組み込まれるよう確保していく。
インダストリオールは2015年6月、マレーシアでICT電機・電子世界会議を開催した。この会議の主な議題は組織化と不安定労働との闘いだった。