パキスタンの船舶解撤場事故の犠牲者に補償
2017-02-23
全国労働組合連盟(NTUF)による一連の抗議行動を経て、2017年2月9日、ガダニ船舶解撤場の大規模な事故の犠牲者が補償金を受け取った。
2016年11月1日、パキスタン・バルチスタン州のガダニ船舶解撤場で同国史上最悪と言える労働災害が発生。石油タンカーの爆発で労働者26人が死亡し、19人が負傷した。
インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織NTUFによる3カ月に及ぶ一連の抗議行動を経て、合計45人の労働者がパキスタン政府と船舶解撤場の使用者から補償を受けた。死亡した労働者16人それぞれの遺族が150万パキスタン・ルピー(1万4,217米ドル)の補償金を受け取った。使用者が直接110万パキスタン・ルピーを、労働者補償委員会事務局が40万パキスタン・ルピーを支払った。
さらに、労働者福祉委員会が亡くなった労働者の遺族に死亡給付金として1世帯当たり50万パキスタン・ルピー(4,739米ドル)を支払う予定で、合計補償金額は200万パキスタン・ルピー(18,956米ドル)になる。
負傷した労働者19人も3区分の補償金を支給され、8人に10万パキスタン・ルピー(948米ドル)、10人に5万パキスタン・ルピー(474米ドル)、1人に2万パキスタン・ルピー(190米ドル)が支払われた。
船舶解撤労働者を組織化しているNTUFは一連の抗議行動と記者会見で、船舶解撤労働者が直面している問題を強調した。NTUFは事故の犠牲者が確実に補償を受けられるようにするうえで重要な役割を果たした。
NTUFのナシル・マンスールは次のように述べた。
「補償額が要求額に満たないことに失望している。しかし一貫した抗議のおかげで、船舶解撤労働者は過去に一度も支払われたことがなかった補償金を受け取った」
「あのような恐ろしい事故のあともなお、ガダニ船舶解撤場の労働者が危険な状況下で働いていることを私たちは懸念している。労働者は安全保護具を支給されていない」
「政府は労働者に安全な作業方法に関する訓練を受けさせるための施策を講じていない。労働者とその家族は依然、安全な飲料水、汚染されていない食べ物や住居を確保できない状況にある」
「何より、ガダニ船舶解撤場には病院も医療施設もない。私たちは船舶解撤労働者の安全を確保するために引き続き懸命に努力していく」
NTUFは既存の国際規則・基準に基づいて船舶解撤法案を立案した。バルチスタン州政府に対し、船舶解撤場の使用者ならびに労働者代表とともに政労使会合を開き、船舶解撤場の安全を確保するための法律を採択するよう求めている。
松崎寛インダストリオール造船・船舶解撤担当部長は次のように述べた。
「この法案は、これ以上ないほど最悪の状況にあるガダニ船舶解撤場の状況を変えるための重要な第一歩だ」
「バルチスタン州政府は、NTUFが立案した法案に基づき、船舶解撤場の安全と検査を改善するために緊急に行動しなければならない。そして、パキスタンが船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約を批准すべき時が来ている」