インドのマルチ・スズキ事件で労働者117人が無罪、31人が有罪
2017-03-10
インドのグルガオン地方裁判所は3月10日、マルチ・スズキ・マネサール工場の暴力事件に関する判決を下し、労働者117人に無罪、組合役員全員を含む31人に有罪を言い渡した。
2012年7月18日にマルチ・スズキで暴力事件が発生し、管理者1人が死亡した。これを受けて同社は、常用労働者546人と契約労働者1,800人を解雇した。大勢の労働者が逮捕され、139人が3年半以上にわたって投獄、11人は保釈を認められなかった。
結審にあたって裁判所は、労働者117人を無罪放免とし、31人に有罪判決を言い渡した。
有罪とされた労働者の量刑は3月17日に発表される。労働者が管理者の死と放火にかかわったという確証がない中で、組合役員全員に有罪判決が下されたことは、労働者とその家族に衝撃を与えた。
無罪になった労働者の1人で、2年9カ月を獄中で過ごしたジテンダール・クマールは次のように述べた。
「ただ自分たちの権利を要求したというだけで弾圧され、何の証拠もなしに逮捕された。服役で人生がめちゃめちゃになった。私は家で唯一の稼ぎ手だ。私がいない間、家族は言葉で表せないほどの苦しみを味わっている。無罪放免になったので、普通の生活に戻りたい。必要なのは、家族と2人の娘を養うための仕事だけだ」
無罪となった労働者のバスデブは暴力事件のわずか18日前に工場に就職し、33カ月を刑務所で過ごした。同様に、工場で働き始めて5カ月だった臨時労働者のスニル・クマールと、3カ月しか働いていなかった見習工のビジェンダール・クマールも、33カ月の刑期を務めた。2012年7月以降、逮捕された労働者全員とその家族が辛酸をなめてきた。
労働者の法律問題を扱う労働者機関、暫定作業委員会のラム・ニワスは言う。
「31人の労働者が有罪判決を受け、うち13人が殺人罪で有罪とされたのは不当だ。検察側は公判で、労働者と暴力・放火を結びつける実質的証拠を何も示さなかった。それどころか、CCTVの映像さえ提供しなかった。私たちは全労働者に対し、有罪判決を受けた労働者の家族に連帯と支援を提供し、将来的に全員を釈放させるための取り組みに加わるよう訴える」
労働者側弁護士のブリンダ・グローバーは次のように語った。
「労働者117人の無罪放免で、検察側の主張に根拠のないことが明らかになった。18人は重傷害と不法進入だけで有罪とされ、13人が殺人で有罪判決を受けた」
「理解しておくべき重要な点は、この13人が組合役員であり、主要な指導者であることだ。彼らは事件に関係し、労働者の権利を支持したために、経営側の証人は彼らに不利な証言をした」
「彼らは労働者を擁護したために代償を払わされている。大変残念なことに、マネサール工場の火災で1人の管理者が一命を落とした。しかし、この13人の労働者を火災と関連付ける確たる証拠はない。マルチ労働者の弁護団は、高等裁判所への上訴で今回の判決に強硬に異議を申し立てる自信を持っている」
被告側の弁護士は公判で、警察が不正な捜査を行ったと主張した。弁護側の指摘によると、捜査はいくつかの重要な面で不公正・不公平に行われ、例えば裁判で警察が凶器を変更したり、被告148人のうち約88人をアルファベット順にロープで縛ったりし、目撃者は面通しで加害者を確認しなかった。
労働者や警備員は検察側の証人に採用されず、凶器に関して司法精査に耐える証拠はなく、凶器の回収自体が虚偽であり、当初はけがをしていないと言っていた証人が入手した診断書の多くも偽造だった。
判決後、すべてのマルチ・スズキ工場、ホンダ、リコ・オート、ベルソニカなど、首都圏のさまざまな企業の労働者と組合代表がグルガオンに集まり、有罪判決を受けた労働者との連帯を表明した。
彼らは今回の判決に強い不満を示すとともに、労働者の家族を支援して集団行動を取る旨決定した。抗議のしるしとして、3月16日に地域のすべての工場で昼食を拒否することが決定された。