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第73号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年11月30日)

銀行と船主、安全なシップリサイクル求めるキャンペーンに参加

2017-11-24

南アジアの船舶解撤における人権・環境問題について討議する、王立オランダ船主協会と組合代表団(オランダ・ロッテルダム)
松﨑寛インダストリオール造船・船舶解撤担当部長も討議に加わった

 インダストリオールは、このほどオランダで一連の会合を開き、安全なシップリサイクルを求めるキャンペーンを推進した。

 船舶解撤は世界で最も危険な仕事である。1年前、パキスタンのガダニ造船所で、海岸で船舶を解体中に爆発が起き、28人の労働者が亡くなった。インダストリオールは、ずいぶん前から安全なシップリサイクルを求めてキャンペーンを展開しており、業界の利害関係者と一連の会合を開き、この産業を改善するための集団的対応を練り上げてきた。

 10月30日にオランダの組合FNVが進行役を務めた会合で、インドとパキスタンの船舶解撤労組代表も加わった組合代表団が、オランダの銀行ABNアムロ、INGおよびNIBCダイレクトNLの代表と会談した。

 オランダの銀行は新造船の建造資金を融資しており、ノルウェーの銀行DNBおよびノルウェーの輸出金融機関Eksportkredittとともに、船舶解撤産業が環境や人間に及ぼす影響を懸念している。

 INGの持続可能性問題管理者Rikjan van Zalingenと持続可能性責任者ロビン・ウィリングが、同行の「責任あるシップリサイクル基準」を共同で発表した。この基準は、ベスト・エフォート・ベースで船舶建造融資や再融資の条件を定めることを目指している。この条件によって、ライフサイクルの終わりに安全なシップリサイクルの準備を確保できるだろう。

 インド鉄鋼・金属・機械労連のビジャーダール・バスデオ・ラネーが、新造船に課税し、耐用年数の終わりに安全なシップリサイクルの代金を払えるようにすることを提案した。

 将来、銀行は所有者に対し、EUシップリサイクル規則によってホワイトリストに登録された造船所で船舶を解体し、危険性物質の目録を作成することを約束させるかもしれない。組合は、EU規則は高い基準を定めているが、現在バングラデシュやパキスタン、インドにはホワイトリストに掲載されている造船所がないので、この基準は雇用を犠牲にすることになるだろうと感じている。

 南アジアの海岸では13万人の労働者が船舶の解体に従事しており、川下で何百万人もの労働者が雇用されている。船舶解撤は南アジアで鉄鋼の主な供給源となっている。この仕事は危険で、環境にリスクをもたらすが、人々は雇用を必要としている。

 組合の考えでは、国連の国際海事機関が立案した香港条約(船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための国際条約)は、条件を改善するための最も効果的かつ普遍的なメカニズムである。香港条約は平等な競争条件を提供し、危険な造船所が安全な造船所の水準を引き下げることのないようにしている。

 組合代表団は11月2日に王立オランダ船主協会(KVNR)とロッテルダムのKVNR本部で会談し、船舶のライフサイクルにサーキュラー・エコノミーの考え方を導入するための最も効果的な方法をめぐって討議した。KVNRは船舶解撤における人権・環境問題に関して非常に懸念している。

 KVNRのニールズ・ファン・デ・ミンケリスが、組合との共同アプローチを策定し、オランダ政府に条約批准を勧めることを提案した。香港条約は、総トン数の40%と再生利用施設の3%を占める15カ国によって批准された時点で効力を生じる。現在、6カ国が批准しており、間もなくトルコも批准すると予想され、総トン数に占める割合は21%となる。

 その晩、インダストリオールとFNVはロッテルダムで公開の会合を開き、船舶解撤について話をした。FNVメタール組合員で元造船労働者のヨープ・ファン・オードが、南アジアの船舶解撤労働者に安全訓練を提供する活動について語った。
 「解体される船の中には私が造った船もある。だから私は安全な解体方法を知っている」

 松﨑寛インダストリオール造船・船舶解撤担当部長が次のように述べた。
 「南アジアの海岸のひどい状況を懸念している利害関係者が大勢いる。船舶解撤を安全にする最善の方法は、すべての人々を団結させて共同アプローチを策定することだ」
 「銀行も船主協会も、船舶解撤産業を改善するために印象的な取り組みを進めている。香港条約の批准・実施は、第一歩として船舶を安全にリサイクルする最も現実的かつ包括的な方法だと思う」

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