自動車工場の閉鎖が相次ぐ理由
2019-03-06
自動車工場は組合組織率の高い高賃金・高熟練の仕事を提供しているので、いくつかの国々における工場閉鎖や人員削減の多発は労働組合に懸念をもたらしている。工場ごとに閉鎖と闘う必要があるが、より幅広い構造的要因を理解する必要もある。
メーカー各社は自動車部門の重大な変革の勢いに乗じて、赤字の自動車工場だけでなく、黒字ではあるが利益の少ない事業も閉鎖・統合している。若い消費者の間で自家用車への需要が減少するともに、公共性の高い新しいモビリティー・ソリューション手段に向かう動きが見られる中で、自動車会社は全世界で製造モデルを再考している。
ゼネラル・モーターズは極端な例である。同社はオーストラリアで1工場を閉鎖し、ヨーロッパ、ロシアおよびアフリカで事業を売却、今年はアメリカ4工場、カナダ1工場を閉鎖する予定で、ほぼ6,000人の雇用が犠牲になる。
ホンダは、英スウィンドン工場の閉鎖(3,500人の雇用削減)と、トルコ・ゲブゼでのシビック生産中止(労働者1,000人に影響)を発表した。
ジャガーランドローバーは全世界で4,500人の雇用を削減する予定で、日産はイギリスで新型SUVの製造計画を中止した。フォードは欧州事業を見直しており、ブラジルでサンベルナルド工場の閉鎖(3,000人の雇用を削減)を発表した。
この混乱の背後には何があるのか。イギリスのブレグジットなど局地的要因も決定に影響を及ぼしているが、これはグローバルな大型再編である。自動車産業は次の段階に移行するために大規模投資を必要としている。私たちは、この変化の管理をめぐる対話に加わる必要がある。
変化を推進している主な要因は何か。
需要の減退
車の所有形態や消費者の習慣が変化しており、ほとんどのアナリストが需要はピークを打ったと考えている。車を必需品と考える若者がはるかに少なくなった。車は主に輸送手段とみなされ、多くの人々がウーバーのような相乗りサービスのほうが便利だと考えている。自転車やオートバイ、スクーターなどの個人輸送手段の利用も増えている。
脱石油と気候変動
炭素ベースの経済からの移行の必要性に対する認識が高まっている。いくつかの国々は、すでにガソリンとディーゼル油の使用禁止計画を発表している。だが、電気自動車のような代替手段や、それらの維持に必要なインフラは、まだ大規模な採用の準備ができていない。
電気自動車
これからは電気自動車の時代であることは誰もが知っており、ほとんどの自動車メーカーがモデルを開発している。しかし、これには多額のコストがかかり、これらのモデルはまだ採算が取れないので、開発は投機的である。電気自動車は内燃機関より可動部品が少なく、労働者が少なくてすむ。ドイツIGメタルの予想によると、電気自動車が原因で16万人の雇用が失われる。
自律走行車
自律走行車が将来どれだけ普及するかをめぐって盛んに議論されているが、ほとんどのメーカーが車に自動機能を追加している。そのためにはコストのかかる開発を重ねる必要がある。グーグルのウェイモ・プロジェクトは自動運転タクシーに巨額の投資をしている。
新しい競争相手
自動車会社は、テスラのような新興メーカーだけでなく、グーグルやウーバーなど、代替的な個人輸送手段を提供する技術系企業との競争にもさらされている。ますます技術によって車に付加価値が与えられるようになっており、メーカーが直面する危険は、単なるハードウェア・プロバイダーになってしまうことである。このリスクを緩和するために、各社は多額の資金を投じて技術的専門知識やソフトウェアを入手する必要がある。
インダストリー4.0と仕事の未来
自動車製造はすでに高度に自動化されており、かなりの量の作業をロボットが担っている。新世代の電気自動車や自律走行車を実現するには、サプライチェーンのすべてのプロセスを対象とする新しい完全統合システムを設計しなければならない。高度熟練労働者は今後も組立や機械管理に必要とされるが、多くの補助業務は削減されるだろう。
解決策は?
介入がなければ、未来の自動車工場が雇用する労働者数は現在よりもはるかに少なくなる。産業における変化を管理するという原則はこれまでどおりだが、組合は信頼できる計画の立案に大いに集中しなければならない。
今こそ企業と協力
インダストリオールは、いくつかの自動車会社とグローバル枠組み協定を締結している。これらの協定は、産業の未来に関するハイレベル討議を促進し、新しい形態の生産への移行について交渉する機会を提供する。
政府・地方当局に対するロビー活動
組合は政府と協力しながら持続可能な産業政策を策定しなければならず、企業が雇用を創出するのを待っていてはならない。インフラや交通政策、都市計画が重要である。都市設計の方法は輸送の未来に重大な影響を及ぼす。
自動車工場の目的の見直し
上述の課題を踏まえて、組合は新しい仕事の世界に備える必要がある。高熟練自動車労働者の能力を保存・開発し、将来の自動車産業のニーズを満たすだけでなく、閉鎖が避けられないときに、その穴を埋める新産業のニーズに応える必要もある。この作業は企業や地方・国家政府と協力して実施しなければならない。
最終的に、組合、企業、政府および都市計画立案者が、大規模な産業配置転換プロジェクトで一致協力しなければならない。
アクション・プランの策定
インダストリオールは今後1年間、これらの変化を経験した加盟組織からの最優良事例を開発するために一連の会合を主催する。
一連の企業別ネットワーク会議だけでなく、今年は産業の変化に関する専門家会合も開催される。総仕上げとして12月に自動車会議を開き、部門の変化に対処するための勧告について議論する。