ホワイトカラー労働者の組織化
2019-11-15
組織化による組合の力の強化は、インダストリオール・グローバルユニオンの主な優先事項である。組織化は重要な目標の達成に役立つ。例えば、生活賃金、不安定雇用の制限、人権・労働組合権の尊重、より健康でより安全な職場、より公平な社会などである。
第4次産業革命(インダストリー4.0)の影響が波及する中で、産業活動の転換が進んでいる。デジタル化や接続性、人工知能、先端技術(3D印刷、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなど)によって、ますます多くの労働者がこれらの技術に関する知識の対価として賃金を支給されるようになり、身体的スキルに対して賃金を支払われる労働者が減っていくだろう。
この転換を説明する1つの方法は、労働のホワイトカラー化である。労働組合運動が今後も関連性と有効性を保つには、増え続けるホワイトカラー労働者をうまく組織化しなければならない。
全世界の労働者ほぼ30億人のうち、自由で独立した組合の組合員はわずか7%で、民間部門のホワイトカラー職の組合組織率はそれよりもさらに低い。活動的な労働組合員となるとなお少ない。インダストリオールのホワイトカラー部門は加盟組合員総数の約12.5%を擁し、どの指標を見ても、この割合は増加している。
例外はあるものの、ここ数十年、多くの国々で組合員数と組合の影響力が低下している。OECD諸国(世界の富裕国の上位34カ国)の組合組織率は、1980年の33%から2013年には17%に低下した。その一因は、多くの政府や多国籍企業が組合を弱体化させ、労働者の権利を攻撃しようとしていることである。
アジア、ヨーロッパ、北米・中米、それにアフリカと南米の一部では、過去数十年間に組合の存在感が低下したために経済的不平等が悪化している。
この傾向を食い止めるために、世界中の組合がこれまで以上に効果的に組織化しなければならない――世界の労働人口に占めるホワイトカラー労働者の割合が大きくなっているとしたら、これらの労働者が労働組合運動にとって重要であることは明白である。
労働者の力の強化とは組織化を主要優先課題にすること
そのためには組合の文化を変える必要がある。組合は新規組合員の勧誘と現組合員の定着に、もっと多くの時間と努力、資源を注ぎ込まなければならない。連帯の構築と、すべての組合問題への組合員の積極的関与に焦点を合わせる必要もある。
組織化とは何か、なぜ組織化すべきなのか?
組織化とは、組合員数の増加、労働者間の連帯構築、労働者の組合加入の拡大を意味する。
組合員の勧誘と定着が組織化への鍵である。資本家と企業は組合よりも資金力があるが、組合の力の源泉は組合員である。
だが、組合員数の増加だけでは十分ではない。組織化には、労働者の間で連帯を構築するとともに、労働者を組合に関与させて活動させ、共通の目的の達成に向けて協力させることも必要である。
組合は組織化すれば強くなり、以下のための力と資源を獲得できる。
- 組合員のために賃上げ、給付および労働条件の改善を達成する。
- 多国籍企業と効果的に交渉する。
- 不安定な職場を減らす。
- より健康でより安全な職場を確保する。
- 不当解雇や虐待から労働者を保護する。
- よりよく現組合員にサービスを提供し、新規組合員を勧誘する。
- 世界中で労働者の権利を求めてネットワークを構築し、キャンペーンを展開する。
- より大規模なピケやストを実施する。
組合員数や組合員の連帯、組合員の行動を拡大する組合は、政治力も獲得する。そのような組合は、より大規模な政治デモを動員したり、政治的な意思決定に対する影響力を強めたり、例えば勢力基盤に基づくロビー活動によって、労働者と組合に関係のある法律により大きな影響を与えたりすることができる。組合の力にとって、政治的影響力は前提条件ではなく結果である。労働者の力を最優先しなければならない。安全性の高い仕事に従事し、組織化して団体交渉を行うホワイトカラー労働者の権利は、日常的に侵害されている。労働者の権利が承認されるのは、いつも労働者の行動や闘いのあとであり、それに先行することは決してない。
一般に、組合が十分に組織化されている場所では経済的不平等が小さい。組合組織化は、富と権力のより公正な配分によって強力な組合と経済を確立するうえで役立つ。
組合員は組合の最大の資源
組合員が多いほど、組合は力を持つことができる。
インダストリオールの組織化支援
インダストリオールは、世界中で組織化プロジェクトを支援している。特に重視しているのは、加盟組織が永続的な組織化文化を発展させ、独自の組織化プログラムを運営するよう奨励し、それを可能にすることである。
インダストリオールは加盟組織とともに、ワークショップや会議、職場訪問、訓練を実施し、組織化計画を討議・立案。調査やマッピング、出版物、資料などにより、加盟組織の組織化活動を支援している。特に南側諸国で、インダストリオールのプロジェクトがオルグの活動資金を供給しているケースもある。
インダストリオールは、14産業部門の労働者に加えてホワイトカラー労働者も代表しており、それぞれの部門にアクション・プランがある。すべての部門アクション・プランで、組織化による組合の力の強化が目標に掲げられている。各部門は、さまざまな方法でこの目標を追求している。
組織化して組合組織率を高めるとともに、アジア6カ国を対象とする組織化プロジェクトを支援することに重点を置くことは、インダストリオールのICT・電機・電子部門アクション・プランの一部である。
インダストリオールは20社を超える多国籍企業でグローバル組合ネットワークを支援している。そのうちいくつかは世界従業員代表委員会(一般に、使用者が正式に承認し活動しているグローバル組合ネットワーク)である。多くのグローバル組合ネットワークが、組合代表が存在しないか不十分な社内の職場で組織化に取り組んでいる。会社での組織化活動にあたって連帯支援も動員している。これらの多国籍企業のすべてが、ホワイトカラー労働者と呼ぶことのできる労働者を大量に雇用しており、その数が増え続けていることは覚えておくに値する。
組織化はアルミ会社アルコアのグローバル組合ネットワークの優先課題である。このネットワークは、米国バージニア州のアルコア労働者がインダストリオール加盟組織の全米鉄鋼労組(USW)に加入しようとする動きに経営側が反対していることについて、アルコアのCEOに繰り返し懸念を表明した。このネットワークの組合は、世界行動デーでもこれらの労働者を支援した。2015年6月に組織化活動が成功し、労働者はUSW加入を票決した。
インダストリオールは企業や国家に接触し、必要があれば、組織化を支援するために企業・国家に対抗するキャンペーンを調整する。加盟組織からインダストリオールに、企業や国家による団結権侵害がたびたび報告される。対応としては一般に、まず経営陣または担当の政府当局者に書簡を送り、労働者の団結権尊重を要求する。
侵害が続けば、労働者の団結権を尊重させるために、企業や国家に圧力をかける戦術を用いる。例えば、他の組合や当該企業の欧州従業員代表委員会による連帯支援の動員、当該企業の顧客との対話、オンライン請願、年次株主総会での抗議、国際労働機関(ILO)やOECDへの提訴である。
ホワイトカラー労働者も、すべての労働者と同様にこの種の支援を必要としている。これまで、ホワイトカラー労働者は労働条件や賃金に恵まれているので労働組合代表は必要ないとか、ホワイトカラー労働者は機械的に経営陣の一部とみなすべきだと考えていた人もいるだろう。決してそうではなかった。現在、ホワイトカラー労働者もまったく同じように、権利の侵害や生産圧力、不安定な雇用関係、賃金・給付に対する攻撃、労働安全衛生上の危険にさらされていることが、痛々しいほど明らかになっている。
インダストリオール組織化プロジェクトの支援を受けて、世界中の組合が何十万人もの新規組合員を組織化した。
インダストリオールは、ラファージュホルシム、リオ・ティント、ゲルダウ、テナリス、キャタピラーはじめ世界有数の企業で、キャンペーンによって組織化を支援している。
インダストリオールは加盟組織と協力しながら、多国籍企業とのグローバル枠組み協定(GFA)を交渉・実施している。これらの協定は、高水準の労働組合権(団結権など)を導入し、組合が企業のグローバル事業とサプライヤーで組織化する機会を生み出している。インダストリオールは現在50本以上のGFAを締結している。
組合がインダストリオールGFAを利用して組織化に成功した例として、インドのBMWとダイムラー、マレーシアのボッシュ、アメリカのソルベイが挙げられる。
インダストリオールは、主に繊維・衣料部門で多数のブランドや小売業者と関係を築いている。ブランドとのGFAを利用して、ブランド各社が原料を調達している工場で労働者の団結権を促進している。これによって、工場所有者が組合組織化活動に反対することが少なくなり、反対した場合はブランドに介入を求めることができる。
インダストリオールは、国際的ブランド・小売業者と製造業者、労働組合とのACT(行動、連携、転換)イニシアティブの創立メンバーである。ACTは繊維・衣料サプライチェーンにおける生活賃金の問題に取り組んでいる。インダストリオールはACTを利用して、この部門で組織化を促進していく。
組織化の基本方針
インダストリオールは、組織化成功の土台を作るために、加盟組織とともに以下の基本方針を促進している。
1. 強力な組織機構の構築
強力な組合機構は職場で始まる。
これは組織化委員会や職場代表機構、女性委員会、安全衛生委員会、職場コミュニケーション担当者や活動家のネットワークなど、何であれ必要な職場組合機構である。これらの組織機構は、労働組合が最終的かつ正式に結成または認証される前でさえ、労働者が積極的に組合に参加して連帯を構築する機会を提供し、組合員の勧誘・定着にとって重要である。
強力な組合機構は職場外で効果的に組織化するためにも必要である。大規模な組合機構の傘下に入っていない個々の職場レベル組合は、グローバル経済では弱い。組合は連合すれば強力になり、全国組合は効果的な大規模組織化プログラムの運営資源を動員できるようにする点で優れているので、より大きな力を持つことができる。
韓国金属労組(KMWU)は長い間、企業別組合の連合団体だった。組合の資源の大部分が企業レベルにとどまっていた。そこで同労組指導部は組合員と協議し、全国組合への転換に対する支持を集めた。これによって、KMWUは地域・全国組織化戦略に資源を振り向けることができたのである。その結果、同労組はサムスンなど反組合的な巨大企業で組織化を成功させることができ、何千人もの不安定労働者を組織化するに至った。
ある国で1つの部門に複数の組合がある場合、統合して部門別組合を結成することで力を強化できる場合が多い。複数部門にまたがる統合によって、組織力のある強力な組合の構築を達成した例もある。
イギリスのユナイトやカナダのユニフォーのようなインダストリオール加盟組織は、複数部門の統合の結果である。ユナイトとユニフォーは多数の部門で労働者を代表しており、強力な全国組織化キャンペーンを実施して毎年数千人の新規組合員を組織化することができる。
いくつかのインダストリオール加盟組織がある多くの国々では、加盟組織が集まって国別協議会を結成した。これらの協議会は、加盟組織が会合を開いて全国的に重要な問題について議論し、共同行動を計画するための基盤となる。多くの国別協議会が、どの部門が優先的な組織化ターゲットであるか、どこで組織化プロジェクトを開発すべきかを決定している。
例えばアルゼンチン、ボツワナ、カメルーン、チリ、コロンビア、ガーナ、インド、インドネシア、モザンビーク、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ウルグアイ、ザンビアでは、インダストリオール加盟組織が国別協議会を通して団結と組織化能力を強化している。
2. 民主性と透明性
組合が明確なルールを定め、包括的な組織機構を確立し、定期会合や選挙を実施し、民主的に活動すれば、労働者が組合に加入して活動的な組合員になる可能性が高くなる。組合は組合活動に関して定期的に労働者とコミュニケーションを取ることによって、透明性と組織化の成功率を高めることができる。
Travailleurs Unis des Mines, Metallurgies, Energie, Chimie et Industries Connexes(TUMEC)はコンゴ民主共和国で、不活発な小規模組合から、労働者にサービスを提供する大規模組合への移行を主導している。この組合は組合員教育プログラムを実施し、組合幹部や活動家向けのワークショップもたびたび開いている。さらに、組合員と頻繁に会合を開き、自分たちが学んだことを共有している。テーマには、安全衛生や効果的な組合員代表、組合員の勧誘が強力な組合の構築にとって重要である理由といった主要問題が含まれる。TUMECは過去2年間に数千人の組合員を組織化した。
3. 包括性
団結は組合の基本原則である。労働者は団結すると強い。しかし、ほとんどの組合が大規模な労働者セグメントを歴史的に無視したり、過小評価したりしてきた。例えば、ホワイトカラー労働者や事務技術職労働者、女性、不安定労働者、若年者、移民である。
労働力の構成が変化しているが、すべての組合がこの変化に順応しているわけではない。組合は積極的な戦略を採用し、これらの新たに出現している社会的に無視された集団を取り込んで組織化しなければならない。そのためには多くの場合、現在の機構の修正や新しい機構の創出が必要である。
ホワイトカラー労働者を効果的に組織化するために、組合はこれらの労働者にとって信頼できる適切な組織にならなければならない。現在、ホワイトカラー労働者には多くの女性や不安定労働者、若年者、移民労働者が含まれているため、組合はこれらの集団にも適した組織になり、指導的役割、スタッフ、委員会、職場代表機構など、すべての組合機構にこれらの労働者を参加させなければならない。
これらの取り残された集団にとって重要な問題にも集中しなければならない。これらの集団のメンバーがすべての組合組織機構とプログラムに加われば、組合は集中しやすくなる。
時には、不安定労働者の加入を妨げている障壁を取り除くために、組合の規約を変更しなければならない。ドイツでは、組合が派遣労働者向けの交渉機関を設置し、これらの労働者を勧誘するとともに、労働協約で派遣労働者の平等な待遇を達成した。IGメタルは派遣労働者の労働条件改善に焦点を絞って、2012年に臨時スタッフの中から3万8,000人の新規組合員を獲得した。
タイ産業労働組合総連合(CILT)の規約は、執行部の少なくとも3分の1は女性でなければならないと定めている。CILT加盟組織TEAMの月例会議では、女性問題が常に議題に盛り込まれている。
4. 協力と連携
労働者と組合は連帯して協力すると強くなる。組合は協力・連携し、お互いの組織化活動を支え合えば、より効果的に組織化することができる。
ウガンダのインダストリオール加盟組織は、国別協議会を結成して了解覚書を締結し、組織化活動などで協力・連携することを約束している。
組合は、より広い社会との協力によっても組織化成功率を高めることができる。組合組織化の成功がより広い社会にどのように利益を与えるかを示し、直接的な連帯支援を提供すれば、社会からの支持が高まる。
アメリカの加盟組織、全米自動車労組(UAW)は米国南部で、黒人やその他の少数民族の権利を求めて闘う市民権擁護団体と幅広く協力している。UAWが米国南部で組織化している自動車産業労働者の多くが黒人である。人権擁護団体は、南部でUAWの組織化活動を支援する行動を日ごろから実施している。
ホワイトカラー労働者グループを組織化するには、彼らのコミュニティーに接触して認知度を高めることが特に重要である。例えば、これまでの労働者よりも若く、高学歴で、多様な傾向のあるホワイトカラー労働者の希望や夢に関係のある社会・環境運動との関係づくりを試みなければならない。
労働時間と賃金率は依然として中心的な問題だが、それだけでは十分ではない。現在の労働者は、環境や人権、ジェンダー問題、平等といった問題を気にかける傾向があり、組合にもこれらの問題を気にかけるよう求めている。
5. 競合禁止
同じ部門の労働者を代表する複数の組合が、職場で同じ労働者を同時に勧誘しようと競争してはならない。これは限りある資源を浪費し、組合間の対立や紛争を悪化させるだけである。この不統一は組合全般の信頼性を損なうおそれもある。組合は、このような形で互いに競争しないことについて合意しなければならない。ほとんどすべての国々では、組織化の標的にする労働者や職場に事欠かない。
ガーナ鉱山労組とガーナ輸送・石油・化学労組、ガーナ産業・商業労組は国別協議会を結成し、組織化にあたって競合を制限する方法について議論している。3組合は競合禁止協定を公式化するために了解覚書に取り組んでいる。
インドでは、組合が歴史的に党の路線やナショナルセンターごとに分裂しており、同じ労働者を代表する資格を持っている。インドの鉄鋼部門労組は昔から競い合ってきたが、民間部門の組織化にほとんど成功していない。
インド鉄鋼・金属・機械労連とインド全国金属労連は競合禁止協定を結んだ。それ以来、両組合はインドの民間部門鉄鋼業で数千人の労働者を組織化し、この協定は今やエネルギー部門と鉱業部門の組合にも適用されている。
6. 自立性
インダストリオールは、世界中の組合が組織化を改善・拡大しやすくするプロジェクトを支援している。しかし、インダストリオールの支援に頼っている組合が自立することが重要である。組合員数の増加はこの移行にとって重要である場合が多いが、それだけで十分というわけではない。
自立するには、組合が定期的に会費を徴収するための効果的なプログラム(強力な組織化プログラムを含む)を開発・維持し、現地・地域・全国レベルで組合活動を実施するに十分な会費を確保する必要がある。また、組合員が払う会費を増額したり、組合に加入させるために逆に特定の労働者の会費を引き下げたりする必要が生じることもある。時には、組合が非常に小さいために、他の組合と統合しなければ自立できないこともある。
インド鉄鋼・エネルギー・鉱業組織化プロジェクトの参加組合は、このプロジェクトによって組合員が増えた組合が、インダストリオールに加盟費を収める申告組合員数を増やすことで合意した。これらの組合は、組織化プロジェクト実施国に設立された新しいプロジェクト事務所の資金と機能を提供することも約束している。
ブラジル、韓国、南アフリカのインダストリオール加盟組織は、国際支援への依存を脱して自立し、海外で他の組合を支援するまでになった。これは世界的規模で組合の力を強化するための理想的な移行である。
組織化への準備
目的が職場で新組合を結成することであれ、すでに組合がある職場でより多くの組合員を勧誘することであれ、組合員の連帯や行動を拡大することであれ、準備を整えることが重要である。
目標
どの労働者を組織化のターゲットにするかの決定にあたって検討すべき要因がいくつかある。組合は、次のような組織化ターゲットを優先すべきである。
- 組合の力の強化に役立つ――これは例えば、部門全体で労働条件に影響を与える大手使用者が考えられる。
- 他のインダストリオール加盟組織がまだ代表しておらず、組織化のターゲットにもしていない。
- 勝算がある、すなわち、その組合には組織化を成功させる資源と能力がある。
組合は組織率の上昇を目指して組織化ターゲットを選ぶべきである。組織率とは、労働者全体に占める組合員の割合である。組織率が高いほど、労働者と組合はより強力になることができる。多くの国々では、職場で労働者の一定割合が組合に加入していれば、経営側は組合を承認して交渉しなければならない。組合が会社に経済的影響を与える力を持っている場合に限り、経営側が組合と交渉している国もある。その力は組織率が高く、かつ活動的な組合員が多い場合に得られることが多い。
組合組織率の強化は、職場の常用フルタイム従業員の大部分の組織化だけを意味しない。不安定労働者も含めて、すべての労働者の大部分を組織化することを意味する。
1ダースの職場で組織化しても、それぞれの職場でわずか数人の組合員しか勧誘できなければ、組合の力は強くならない。そうではなく、数は少なくても戦略的な職場にターゲットを絞り、それらの職場で高い組織率を達成すれば、労働者のために本当の利益を実現することができる。
現実的に行動し、勝算がある目標を優先させることは、常用労働者だけを狙うことを意味しない。世界中のインダストリオール加盟組織が不安定労働者の組織化に成功している。不安定労働者は労働者全体に占める割合が大きく、しかも増え続けているため、これは不可欠である。
今日では、ホワイトカラー労働者の多くが代替的な作業構造のもとで働いている。例えば、請負業者やフリーランサーに不適切に分類されているプラットフォーム労働者である。伝統的な組合組織化の目的は、十分な人数の組合員を獲得し、1つまたは複数の職場で合法的あるいは法定の団体交渉代表権者として認定されることである。時には、1つの職場で少数の労働者を、あるいは多くの職場に分散している類似の労働者を代表している非公認組合が効果を上げ、大きな成果を達成できていることもある。労働者の特徴を考慮しなければならない。影響力を持つには何パーセントが必要か。これらの労働者について決定的な組合組織率を達成できるか。
調査
どんな職場を組織化ターゲットにすればよいか判断する前に、組織化を行う部門や地域を調査することが重要である。この作業には、職場の所在地、労働者数、労働者の男女構成、他の組合の存在、主要顧客、その職場を所有している会社や、その職場から調達している会社に関するその他の関連情報の確認が含まれる。
いくつかの職場は、組織化活動の勝算を高めることのできる国際的な関係を築いている。
組織化ターゲットを決めて組織化キャンペーンを始める前に、組合は以下の質問の答えを求めるべきである。
潜在的組織化ターゲットは、
- GFAを締結しているか? 締結している場合、インダストリオールはターゲットが組織化活動に反対しないようにすることができるかもしれない。企業はGFAで、労働者の団結権の尊重を約束している。
- GFAを締結している顧客がいるか? いる場合、インダストリオールはこの顧客に、ターゲットに圧力をかけて組織化活動に反対しないようにさせることができるかもしれない。企業はGFAで、サプライチェーンにおける労働者の団結権の尊重を約束していることが多い。
- 有名ブランドである顧客がいるか? いる場合、インダストリオールはこの顧客に、ターゲットに圧力をかけて組織化活動に反対しないようにさせることができるかもしれない。インダストリオールは、サプライチェーンにおける労働者の団結権の尊重を約束している多くのブランドと関係を築いている。
2013年のラナ・プラザ災害を受けてインダストリオール・グローバルユニオンが発案したバングラデシュ協定は、ブランド名を利用してサプライチェーンの使用者に圧力を加えた実例である。
- グローバル組合ネットワークがあるか? ある場合、インダストリオールは組織化活動にあたってグローバル組合ネットワークに支援を求めることができる。インダストリオールは多国籍企業数十社と活発なネットワークを築いている。
- インダストリオールと関係を結んでいるか? インダストリオールのウェブサイトを検索のこと。インダストリオールは100社を超える多国籍企業と、対話が可能な関係を築き上げている。
- 他国に職場があるか? これらの職場に組合があれば、組織化活動を支援してくれる可能性がある。組織化を行うかもしれない国で、その会社の他の職場の組合が支援してくれる可能性もある。
- 組織化ターゲットになる可能性のある複数の職場や事業所があるか? 複数の部門や職場で同時に組織化キャンペーンを開始できれば、使用者は組合つぶしのための資源を複数のターゲットに分けなければならず、その効果が下がるかもしれない。
組織化は戦略的な企業調査の裏付けによって強化される。この調査は企業を分析し、企業に圧力をかけて労働者の要求を受け入れさせる方法を確認する。この調査の実施方法に関する情報については、インダストリオール・グローバルユニオンに問い合わせを。
潜在的組織化ターゲットが上記の関係のいずれかを築いている場合、インダストリオールは、それらを利用するために手助けできるかもしれない。これは組織化活動を行う組合を潜在的組織化ターゲットの他の組合に接触させたり、ブランドやGFA締約企業に連絡を取ったりすることによって実行できる。
計画の策定
組合は、ある地域を調査して1つまたは複数の組織化ターゲットを選んだら、組織化キャンペーンのために計画を練り上げるべきである。この計画では、何をする必要があるか、誰が何に責任を負うか、いつまでにそれをする必要があるかを明確にする。計画の実施にどんな資源が必要かも確認しなければならない。
組織化計画の策定・実施に参加する労働者が多いほど、計画は強力になる。より多くの人々に仕事を分散させることも、誰にも負担をかけすぎないようにするのに役立つ。
組織化計画には、特定の期日までに達成すべきベンチマークあるいは目標を盛り込むべきである。例えば、決まった日までに支持を取りつける労働者数、決まった日までに連絡先を入手する労働者数などが挙げられる。明確なベンチマークは、組織化キャンペーンが順調に進んでいるかどうか、調整を加える必要があるかどうか判断するうえで役立つ。
組織化計画には柔軟性を持たせ、予期せぬ状況が発生したときに対応できるようにしなければならない。組合または組織化委員会が定期的に計画を見直し、必要に応じて調整すべきである。
組織化計画の構成要素
- 労働者のリーダーの確認
- 組織化委員会の設置
労働者のリーダーの確認と組織化委員会の設置は密接に関係している。組織化したい労働者グループの中で、組織化キャンペーンを主導する能力と意欲のある人を確認することが不可欠である。これらのリーダーを中心に内部組織化委員会を設置する。部外者が主導する組織化はほとんど成功しない。職場に献身的な中核的組織化委員会が設置されていれば、組合はその委員会を通して活動し、集団行動や連帯に関して他の労働者を教育することができる。
労働者リストの作成
ターゲットの労働者や労働者グループを確認する。できれば連絡先リストの入手を試みる。入手できない場合は、労働者に接触しながらリストを作る――個人的接触に代わるものはない。ソーシャルメディアは特にホワイトカラー労働者にとって重要だが、組合はソーシャルメディアで組織化されるわけではない。どれだけ慎重にターゲット・グループを確認しても、使用者が反対することを認識しておかなければならない。
- 会合の開催
- 結集する問題の確認
組合組織化キャンペーンは、いくつかの問題で成功することが多い。ホワイトカラー労働者の組織化を成功させるには、まず労働者が結集する問題を確認しなければならない。ホワイトカラー労働者、あるいは事務技術職労働者の目標は何か。ホワイトカラー労働者は、移動性や育児休暇、教育、便宜または健康のような問題をブルーカラー組合員とは異なる視点から見ているのか、それとも、もしかすると優先順位の違いにすぎないのか。組合はどうすれば労働者の目的達成を支援できるか。
組合を労働者に関連づける。つまり、労働者の課題や問題、希望、夢を理解し、労働者が問題を解決したり目標を達成したりするうえで組合がどのように援助できるか説明する準備をしておく。組合はすべての問題を解決できるわけでも、すべての目標を達成できるわけでもないが、組織労働者と未組織労働者との大きな違いは、組合が使用者に労働者の声を聞かせ、労働者間の分裂や競争に乗じてその声が抑え込まれないようにすることである。
組合は本当に自分たちを代表・代弁してくれる、と労働者に信じてもらわなければならない。特に労働条件に関するものであるかどうかにかかわらず、成功をもたらす問題が提示されたら、それを推進する準備をする。言うまでもなく、私たちが組織化したいと考えている労働者の使用者が、労働者の怒りを買うことをして私たちに手段を提供してくれることが往々にしてある。
教育プログラム
模範を示して連帯を教える。これこそ組合が信頼性を得る方法である。使用者は頻繁に職場や職務内容(ブルーカラーとホワイトカラーなど)、階級、人種、宗教によって労働者を分断しようとする。使用者の未来は、組合の組織化努力を弱めることである。「1人の痛みは全員の痛み」という古いスローガンを指針としなければならない。困っている労働者への目に見える組合の支援は、それだけで強力な連帯教育プログラムである。
コミュニケーション
ホワイトカラー労働者を組織化するための効果的なコミュニケーションとは、労働組合活動、特に成功例についてターゲット・グループに定期的に情報を提供することを意味する。潜在的組合員を闘いに関与させなければならない。例えば、インダストリオールの請願書に署名させたり、電子ニュースレターで組合行動を逐一知らせたりする。
しかし、達成できるはずがないことを約束してはならない。信頼を守ること――結局、最後に残るのは信頼だけである。常に自分や組合の信頼性にどんな影響を与えるかという点から行動や声明の計画を考え、信頼性をあまりにも大きく損なう場合は拒否しなければならない。組合にできる最も大きな約束は、労働者が発言権を得るということである。
労働者を計画立案に関与させれば意欲が高まり、より活発な組合員になる。
世界中のインダストリオール加盟組織が進んで難題に取り組み、多様な環境で革新的な組織化解決策を提案している。
労働者の減少と非正規労働化に直面している自動車労連(JAW)は、正規従業員と不安定従業員の両方を対象とする複数年の組織化計画を策定した。
エチオピア繊維・皮革・衣料労組(IFTLGWTU)は、関連部門で活動する企業に比べて財源が少ないが、インダストリオールとドイツの衣料品ブランド、チボーとの関係を利用し、ある工場で組合組織化活動のために労働者に接触している。
マレーシア電子産業従業員組合連合(EIEU)は、移民労働者に明確にターゲットを絞った組織化キャンペーンによって移民労働者数の増加に対応している。EIEUは移民労働者と協力しながら低賃金など共通の問題に取り組み、権利に関して労働者を教育するために特別法律相談を提供している。
世界の労働者のうち自由で独立した組合の組合員はわずか7%で、活動的な組合員はさらに少ないため、組織化は手のつけようもない大仕事のように見えることがある。そんなことはない。
これまで以上に効果的にホワイトカラー労働者を組織化しよう。インダストリオールは支援を提供する準備ができており、今こそ組織化するときである。いつものように、労働者は団結すれば強くなる!