拒否権
2020-04-09
「権利」の意味
権利とは、人が道徳的または法的に行う資格があるもの、または所有する資格があるものである。
労働者は、あらゆる管轄区域、あらゆる状況で危険な作業を拒否または中止する法的権利を自動的に享受するわけではない。しかし、危険な作業を拒否または中止する道徳的権利は常にある。重大な状況においては、危険な作業を拒否または中止する権利があるだけでなく、そうする義務があると私たちは考える。
その権利の行使が使用者による報復から保護されていなければ問題が生じる。
国内法や地域法または労働協約で、労働者が危険な作業を拒否する法的権利を与えられている場合、この権利は常に労働者の行動や要求の結果獲得されており、その前に与えられたものでは決してない。私たちの権利が無償で与えられることはめったにない――権利を要求し、それを求めて闘わなければならない。
国際法
国連の世界人権宣言第3条は、「すべての人は、生命、自由および身体の安全に対する権利を有する」と定めている。これらの権利は職場に行けば消滅する、とは書かれていない。それどころか、世界人権宣言には望ましい労働条件に対する権利も記載されている。別の国連文書である経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約は、すべての人は安全で健康的な労働条件に対する権利を有するべきであると規定している。
しかし、危険な作業を拒否する権利への最も重要な言及は、国際労働基準を扱う国連専門機関である国際労働機関(ILO)によるものである。ILOは、危険な作業を拒否する権利に言及する条約・勧告をいくつか出している。その中で最も一般的に重要なのは、1981年の職業上の安全および健康に関する条約(第155号)である。
第155号条約は次のように述べている(抜粋)。
- 「第4条(1)各加盟国は、国内の事情および慣行に照らして、かつ最も代表的な使用者団体および労働者団体との協議の上、職業上の安全および健康ならびに作業環境に関する一貫した国の政策を策定し、実施し、および定期的に検討する。(2)1の政策は、作業環境におけるその存在が不可避な危険の原因を、合理的かつ実行可能である限り最小にすることにより、就業に起因し、もしくは関連し、または就業中に生ずる事故および健康障害を防止することを目的とする。
- 「第5条(e)前条の政策に従って労働者およびその代表により適正に取られた措置の結果を理由とする懲戒措置からの労働者およびその代表の保護
- 第13条。自己の生命または健康に急迫した重大な危険をもたらすと信ずる合理的な理由のある作業状態から退避した労働者は、国内の事情および慣行に従い、不当な結果から保護される。
- 「第19条。企業の段階において、次の事項に係る措置が取られる。(f)労働者が、自己の生命または健康に対し急迫した重大な危険をもたらすと信ずる合理的な理由のある状態を直ちに直接の監督者に報告すること。この場合において、使用者は、必要がある場合に是正措置を取るまでは、生命または健康に対し急迫した重大な危険が引き続き存在している作業状態に戻ることを労働者に要求することができない。
分かりやすく言えば、国内法においては、労働者は正当な理由で危険な作業から離れ、使用者が状況を改善するまで作業に戻らないことができ、この権利を善意で行使した場合に不当な影響を被ってはならない、ということである。
他のILO条約もこの権利に言及している。例えば、1995年の鉱山における安全および健康条約(第176号)、1995年の鉱山における安全および健康勧告(第183号)、1986年の石綿勧告(第172号)、1990年の化学物質勧告(第177号)である。
ILO条約は批准されれば法的根拠を持つが、これらの条約を批准していない国もあるだろう。勧告は、その名称が示すように、必ずしも法的強制力を有するわけではない。しかし、ILO条約とILO勧告はいずれも、場合によっては当該条約を批准していない国においてさえ、国際的な最優良事例の一部として引き合いに出すことができる。
国家レベルまたは地域(州・省など)レベルの労働安全衛生法
国内法や地域法は世界各地で大きく異なるので、管轄区域の法規定を確認する必要がある。
管轄区域の法律上および規制上の労働安全衛生枠組みが危険な作業を拒否または中止する権利を保護している場合は、通常、この権利の行使にあたって従うべき厳格な手続きがある。この手続きは、どのような種類の危険な作業が法的に拒否可能とみなされるかを概説し、そのような作業の実施を拒否するために取らなければならない措置を説明する。これには通常、上司への危険の報告、問題調査中に当面の危害を受けないようにする対策、紛争解決手続きが含まれる。自分に適用される手続きをよく理解して厳密に従い、懲戒処分や解雇から身を守らなければならない。
労働安全衛生法が危険な作業を拒否する権利を明確に保障していなくても、ほとんどの国の一般的な法律は自らの生命を守る権利を保護している。この権利は職場に入ったら消えるわけではない。管轄区域の法律に詳しい人に確認すること。
労働協約
労働協約を確認しなければならない。多くの労働協約が、危険な作業を拒否または中止する権利に言及している。多くの場合、この権利を行使するための厳格な手続きも明記される。その手続きをよく理解して厳密に従い、懲戒処分や解雇から身を守らなければならない。
結論
労働法や労働協約の解釈にあたって使用者と労働者の意見が一致しない場合、原則は、現時点では遵守して後日苦情を申し立てることである。この助言は、「労働仲裁人や裁判官がその後労働者に有利な判決を下せば適切な救済措置を適用できる」という考えに基づいて、当面の懲戒処分や解雇から労働者を保護するのに役立つ。逸失賃金が支払われ、労働者が正当な職務に復帰し、侮辱的待遇が補償される可能性がある。
しかし労働安全衛生の場合は、この原則を適用することができない。生命や健康が失われれば、それを取り戻すために仲裁人が課すことのできる救済策はない。
危険または不健康な作業を拒否または中止する権利は、法律や労働協約で自動的に保障されるわけではない。すべての人権と同様に、その権利を要求するとき、私たちは道徳的権限を主張しているのである。それは勝ち取らなければならない権利であり、さもなければ健康や生命と一緒に失うことになる。
労働組合が「危険な作業を拒否する権利がある」と言うのは、そういう意味なのである。
権利を墓場まで持って行ってはならない。