スイス、多国籍企業のサプライチェーン責任に関する国民投票へ
2020-10-22
<JCM記事要約>
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スイスは11月29日、責任ある企業イニシアティブに関する国民投票を実施する。イニシアティブが票決されれば、スイスに本社を置く企業はサプライチェーンの出来事に対して法的に責任を負う。
イニシアティブに関するドキュメンタリー映画
このイニシアティブは、国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づいて、他の国々で一斉に提案されている類似の法律の1つである。
スイスの政治制度は、政党政治よりも直接民主主義を優先させている。大きな政策問題は、年に数回行われる国民投票で決定される。スイスの市民は国民発案によって連邦憲法修正を求めることができる。投票を実施できるようにするには、イニシアティブの支持者が18カ月間で10万人の署名を集めなければならない。成立させるには、有権者と州の過半数がイニシアティブに賛成票を投じる必要がある。
責任ある企業イニシアティブはスイス企業正義協議会が発案したもので、同協議会はスイスの人権・環境保護団体、宗教団体、労働組合(インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織のSynaとUNIAを含む)で構成される。このイニシアティブは、NGO120団体や国内のすべての教会をはじめ、幅広い一般の支持を集めている。協議会は1年足らずで12万人の署名を集め、後続の段階のために議会に提出した。
イニシアティブの標的はスイスに本拠地を置く企業の活動であり、グレンコアやラファージュホルシムなど、インダストリオールが関与する多国籍企業も含まれる。このイニシアティブが成功すれば、これらの企業とすべてのスイス企業は世界中どこでも、管理下の企業で発生した人権侵害や環境違反に対して法的責任を負うようになる。人権侵害や環境破壊の犠牲者は、スイスで補償を求めることができる。
キャンペーンを5年近く続けた末に、このイニシアティブを投票に付すことができた。企業ロビー団体はイニシアティブに猛反対しており、この国民発案はサプライチェーンのあらゆる場所で起こった侵害に対してスイス企業を「無罪が確定するまで有罪」とし、活動家による「脅迫」への道を開くものだ、と述べている。政府は当初、このイニシアティブは致命的な法的責任を負わせて企業の競争力を低下させると懸念し、イニシアティブの拒否を勧め、その後、骨抜きにされた反対提案を示した。
インダストリオールは、イニシアティブを投票にかけるプロセスに最初から関与してきた。インダストリオールは2018年、オーストラリア、コロンビア、コンゴ民主共和国のグレンコア事業の労働組合員をスイスに集め、海外での同社の行動について話した。
投票に向けた勢いが強まるにつれて、全国の窓やバルコニーに特徴的なオレンジ色のキャンペーンの旗が掲げられ、人々が支持を表明している。
ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。
「あまりにも長い間、多国籍企業が、自社の悪しき行動が強調されるたびに一見もっともらしい反証を示し、上っ面の世間体の陰に侵害を隠すことのできる状況が続いてきた。責任ある企業イニシアティブは、企業に自社の行動に責任を負わせるための組合と市民社会組織によるグローバルな運動の一部だ」
「私たちのメッセージはこうだ――私たちは企業に狙いを定めている。隠れる場所はない。企業に責任を負わせる」