広報ニュース

第122号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2021年3月3日)

ドイツの組合、サプライチェーンのデューデリジェンスめぐる議論に勝利

2021-02-18

<JCM記事要約>

  • ドイツでは、組合が必要性を主張してきたサプライチェーンのデューデリジェンスに関する新しい法律が2021年秋の選挙までに成立することとなった。この法律により、ドイツに本社を置く企業は、サプライチェーンの全レベルで人権基準および関連環境基準の遵守されるよう法的義務が課される。
  • デューデリジェンス法導入の傾向は全世界で高まっている。しかし多くの多国籍企業は、このような法律は不要であり、自主的な行動規範によって自社の事業を監視できると主張しているが、ドイツの組合はこれが事実ではないことを示し、法律の必要性を訴え、多くの市民や経済学者、いくつかのGFA締結企業からも法律への支持を得ている。
  • インダストリオール会長であるIGメタルのホフマン会長は連邦政府の合意を歓迎しながらも、法律の実施に時間がかかりすぎるというマイナス面を挙げ、使用者に対し、法定基準を事前に満たすよう強く促すとともに、問題発生に応じた間接的なサプライヤーの検査で十分かどうか見極める必要がある、と述べた。

 

ドイツの組合は長い間、サプライチェーンのデューデリジェンス(Sorgfaltspflichten)に関する法律が必要だと主張してきた。現在、組合の主張が真剣に受け止められており、サプライチェーンのデューデリジェンスに関する新しい法律が2021年秋の選挙までに成立する見通しである。

この法律は、国連ビジネスと人権に関する指導原則とOECD多国籍企業行動指針の条項をドイツの国内法に組み込む。法案文面はまだ発表されていないが、閣僚は2月12日の記者会見で詳細を発表した。

この法律は、ドイツに本社を置く企業に、サプライチェーンの全レベルで人権基準および関連環境基準を遵守されるよう法的義務を課す。2023年初めに実施されると予想され、まず従業員数3000人超の企業が対象となる。2024年から、従業員数1000人超の企業にも適用される。

他国の下請会社も同じ基準に従わなければならないが、間接的サプライヤーは問題が提起された場合に限り検査を受ける。これによって、ドイツ企業はサプライチェーンで起こる虐待に対して責任を負うことになる。これらの虐待を是正できなければ、労働組合やNGOは犠牲者に代わってドイツで企業に対して訴訟を起こすことができる。

「このサプライチェーン法により、国内の結社の自由を強化し、組合つぶし対策を講じる必要がある。各国のサプライチェーンで強力な労働組合が必要だ。労働組合は労働者とともに虐待を見つけ、労働者の権利を保護するために違反を処罰することができる」とインダストリオール加盟組織IGメタルのウォルフガング・レム執行委員は言う。

企業はセーフハーバーと呼ばれる政府認可の業界標準を実施すれば、責任を限定することができる。セーフハーバー認定の最低必要条件は、当該企業が関連グローバル・ユニオンとグローバル枠組み協定(GFA)を締結することだ、とドイツの組合は主張している。これは追加の苦情処理メカニズムを提供するとともに、フォルクスワーゲンのようにGFAの条件を侵害する企業を牽制する。

全世界で、デューデリジェンス法導入の傾向が強まっている。フランスは2017年、世界で初めて国連指針に基づく国内法を導入した。オランダは2019年に児童労働に関する法律を採択し、イギリスには現代奴隷法がある。アメリカとスイスで法律が成立し、香港とカナダでも準備段階にある。インダストリオール・グローバルユニオンの姉妹組織インダストリオール・ヨーロッパは、EUレベルでデューデリジェンス・ルールを要求している。

イニシアティブLieferkettengesetzの画像:「犠牲者なきファッションのために法的枠組みが必要」

 

ドイツの組合は一貫して類似の法律への賛成を主張しており、イニシアティブLieferkettengesetzで120団体を超える加盟組織と力を合わせ、そのような法律を求めてキャンペーンやロビー活動に励んでいる。自主的な取り組みの失敗を浮彫りにさせ、何年もかけて政治的な支持を得て、この法律は著名な経済学者から支持されている。チボー(ドイツのコーヒー店)をはじめインダストリオールとGFAを締結しているいくつかの企業も、この法律を支持している。

今、この議論に勝利を収めた。調査によると、市民の75%がサプライチェーン法を支持している。次第に、さまざまな政治的立場の政治家が、世界中でドイツ系企業の正当かつ平等な活動環境を生み出す法的枠組みの必要性を認めるようになっている。

ほとんどの多国籍企業が、デューデリジェンス法は不要であり、自主的な行動規範によって自社の事業を監視できると主張している。しかし組合側は、これが事実ではないことを示した。企業は自社の経済的利益にならなければ自発的規範に従わないことを、組合は繰り返し証明したのである。

ミハエル・バシリアディス

 

インダストリオール加盟組織IG BCEのミハエル・バシリアディス会長は次のように述べた。

「多国籍企業には、自発的プロセスによってこれらの課題を解決できることを示す時間がたっぷりあった。だが、それを示さなかった。今、企業は当然の結果を受け入れる必要がある――法律だ」

ドイツでは、中道右派のCDU/CSUと中道左派のSPDによる大連立が政権を握っている。SPDは一貫して法律を支持しているが、保守派の政治家さえ賛同している。海外援助や開発に責任を負うドイツ経済協力省(BMZ)担当のCSU出身大臣は、SPD出身の労働大臣とともに法律を要求した。

イェルク・ホフマン:

 

イェルク・ホフマンIGメタル/インダストリオール会長は述べた。

「ドイツ連邦政府は合意を達成した! フベルトゥス・ハイル労働大臣とゲルト・ミュラー開発大臣の努力が、この急進展をもたらした。IGメタルはデューデリジェンス法に関する合意を歓迎する。長く厳しい闘いを経て、これは明るい徴候だ」

「1つマイナス面がある――法律の実施に時間がかかりすぎることだ。使用者に対し、法定基準を事前に満たすよう強く促す。中期的には、バリューチェーンで問題発生に応じて間接的サプライヤーを検査するという方法で十分かどうか、評価しなければならない」

« 前のニュース  次のニュース »