EUシップリサイクル規則の実施強化が必要
2025-03-03
欧州委員会による最近のEUシップリサイクル規則(EU SRR)評価は、世界の船舶解撤場で危険な労働条件と環境破壊を防止するために、実施の強化が緊急に求められていることを改めて浮き彫りにしている。
欧州委員会は2月19日、EU籍船のリサイクルに適用されるEU SRRの評価を発表した。EU SRRは国際規制より高い基準を設定しているが、大きな抜け穴があるため、船主は責任を回避することができ、労働者を危険な状況にさらして持続可能な船舶リサイクルへの移行を妨げている。インダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、これらの欠陥を補って部門の労働者全員が確固たる安全・環境基準によって保護されるようにするために、断固とした行動を要求している。
船舶リサイクルはサーキュラーエコノミーで極めて重要な役割を果たし、一般的に船の重さの75〜85%を構成する高性能鋼など、貴重な資源の回収と再利用を可能にしている。しかし、船にはアスベストや重金属、石油、水銀のような危険物も含まれている。規制を厳格に実施しなければ、これらの物質は人間の健康と環境の両方に深刻なリスクをもたらす。
国際レベルでは、2025年6月26日に国際海事機構の香港条約が発効する。EU SRRのほうが厳しい枠組みとして認められているが、EU籍船だけに適用されるため、多くのヨーロッパ所有船舶が対象外となっている。
委員会の報告は、EU SRRの主要な業績を認めている。特に、高い環境基準と労働安全基準を満たす船舶リサイクル施設のEU認可リストの作成である。このリストには、EU、トルコ、イギリス、アメリカの解撤場が掲載されている。しかし報告書は、船主が解体直前にEU域外の国に船籍変更する慣行など、重要な抜け穴も確認している。この戦術によって船主はEU安全・環境規制を迂回することができ、規制の効果が損なわれている。この評価は、危険物(IHMs)の在庫がなくなったり質が悪かったりする場合が多く、安全なリサイクルの確保を難しくしていることも強調している。
船主側は、EU SRRに列挙される解撤場の能力不足が原因で船籍変更は必要であると主張。リストを拡大し、国際基準を遵守していると主張するインドのような非OECD諸国の解撤場も含めることを支持している。
インダストリオール・ヨーロッパ労働組合は長い間、船主が労働者と環境を犠牲にしてこれらの抜け穴を利用することを防止するために、より強力な実施機構を強く要求してきた。
「船舶解撤は依然として世界で最も危険な仕事の1つであり、欧州連合は、船主の責任回避を許す規制の欠陥をなくすために緊急対策を取らなければならない」とイザベル・バルト・インダストリオール・ヨーロッパ労働組合書記次長は述べた。
「労働者を保護しなければならない」
欧州委員会は、ヨーロッパ船舶リサイクル施設リストの最新版で、ラトビアとリトアニア、トルコの3つの解撤場を削除した。報告書で船舶リサイクル部門の労働条件に関する現実の懸念が強調されているため、インダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、これを失敗とみなしている。単にリストから現場を削除するのではなく、これらの解撤場が遵守を回復できるようにするために労働安全衛生基準と環境保護の即時改善に焦点を当てなければならない。
「EU SRRは世界の船舶リサイクル産業が目指すべき最重要基準だ」とウォルトン・パントランド・インダストリオール・グローバルユニオン部門担当部長は言う。
「しかし現在、特に9割方の船舶がEU域外の解撤場で解体されているので、この基準の対象範囲は狭すぎる」
インダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、香港条約の完全な批准と実施を支持しているが、その基準を補強して厳格に実施し、EUの要件に適合するか上回るようにしなければならないと強調している。これに不可欠なのは、すべての労働者に結社の自由と団体交渉の権利を与えることである。労働条件を改善して安全で持続可能な船舶リサイクルを確保するには、あらゆるレベルでの真の社会的対話が欠かせない。
【原文記事URL】
https://www.industriall-union.org/stronger-enforcement-of-eu-ship-recycling-regulation-is-needed
次のニュース »