第47回協議委員会   来賓あいさつ(連合笹森会長)

皆さん、こんにちは。IMF−JC47回の協議委員会、紹介ありましたように、連合を代表してごあいさつをさせていただきたいと思います。

◆2005年春季生活闘争について
 まず1つは、2005春季生活闘争の関係です。ご承知のように、過日、中央委員会を行い基本方針の確定をしました。皆さん方のほうにこれからご討議いただき、要求案の作成を、それぞれの企業段階でもしていただく状況になってきました。私の方からはこれについては、ぜひJCの皆さん方には積極的な闘いをお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。
 今年の要求案についてはいろいろ論議した結果、最終的には、そういう表現はなるだけとらないようにということになっておりますが、連合全体としてのベースアップの統一要求基準は示さない。しかし、環境の好転、さらにはそういう状況が整っているというところについては積極果敢にベアを取りにいくという方針になっています。その中では、全体としては出さないけれども中小地場組合を中心に昨年を上回る要求基準を示し、昨年を上回る答えを勝ち取ろうというのが、連合としての基本方針になっているわけです。これは今年の春、というより1月の冒頭の連合の賀詞交換会の中で私の方から、「すべて悪化をし続けたここ数年の指標、数字に対して、昨年を底として今年は反転の年にしたい。すべてその取り組みを連合がやり、その中で数字を戻していく。言うなれば下がり続けた数字に終止符を打ち、V字型の反転の年にする」旨申し上げました。幸いにして、春の交渉、さらには失業率の数字等々についても好転の兆しが出てきていることは間違いない。これを完全なV字に乗せる、これが来年の春の闘いになるだろうと思っています。

 冒頭、JCグループの皆さんには積極的な闘いをと申し上げたのは、企業業績の回復が言われている中で、特に金属産業部門にはこの傾向が数字的には出ているわけで、このことを給与、労働条件、雇用に還元をさせる闘いというのが、私はJCグループに課せられた来年の役割だと思います。冒頭、古賀議長のほうからJCに対する期待という表現が取られましたので、ぜひ連合会長の立場から、このことを期待とお願いということでまず申し上げておきたいと思います。<ページのトップヘ>

◆政策・制度の問題について
 その上で、2つ目は政策・制度の問題について申し上げます。これについては景気、雇用、そして生活に直接関係をする社会保障と税という問題があります。

◎景気について
景気については、回復の兆しというふうには言われておりますが、どうも最近の政府の表現を見るとそうはなってないような感じがあります。特に竹中大臣が「上り坂の中の微調整」という言葉を使いました。これは、小泉政権になって3年半を経過する中で、今この過ぎてきた3年半を見たら、小泉政権がやってきたこの3年半は景気が戻ってよくなってきたんだという数字になっているという。ばか言ってるんじゃないっていう感じです。このことをどう見るかということなんですね。
 確かに大手、中央というところでは業績回復や景気の回復が出ているという部分もあるけれども、「上り坂の中の微調整」をやり、これから景気の先行きに懸念材料が見え始めた、極めて警戒感を要するというような表現が取られた場合、大手や中央ではそのことの感覚はあったかもしれないけれども、回復の兆しなんていうのは毛筋一つも感じられていなかった中小地場の企業や、そして地方の実態、さらには同じサラリーマンの中でもプラスとマイナス面が極端に出たという二極化の中での状況から言うと、回復なんてどこにあったのかということの実感さえつかめない中で、また落ち込んでいきますなんていうことをやられる景気政策ではたまらない。このことに対して、「億総中流が失われた、崩れた」いう表現も最近のマスコミは使っていますが、我々自身の手でこのことをどういうふうに景気の刺激策、中小企業の育成策、そして地場の活性策、そして拡大をしている雇用所得の二極化の問題、これらについての政策実現行動がまず第一義の優先課題といえます。<ページのトップヘ>

◎雇用政策
 そして、2つ目は雇用政策。これは、今年の春に当面とりあえず4%台の失業率にしたいということを申し上げました。それに対して全力を挙げると。幸いにしてピーク時5.7、これがワンポイント下がり、4.7までの数字にはなったけれども、古賀さんも触れられていたように、中身があまりにも悪い。実際的な300万人を超す失業者の数は、これはずっと固定化をした人たちにもう入っているという状況であり、そして地域差がありすぎる。有効求人倍率が1.5を超えている地域もあれば、0.6にも届かないというような地域もある。そして失業率も4.7と言いながら、実際には6%台から下がらないような地域もある。これも二極化の現象が非常に激しい。だから、この地域格差をなくしながら、雇用については引き続き連合としては手を緩めないという取り扱いをしていくべきだ。
 残念ながら、小泉総理大臣の頭の中には雇用のコの字もないというのが、草野事務局長の解説にもなってますが、この雇用のコの字もない小泉政府に対して、やっぱり雇用が最優先なんだ、そのことが景気を支え、日本の経済を戻すという一番の原動力になるんだということを、これから連合として突きつけた行動を展開したいと思っています。
 3つ目は社会保障と税の問題です。昨日、自民党三役と政策協議を行いました。連合の政治方針の中では、いかなる政権とも政策協議を行う。そして与党野党を問わず、政策協議を行うということは明確に出されている。今の中で特に国民の最大の関心事は、社会保障政策の1日も早い一体的に見直しによる抜本改革ということです。これについては、連合の組織の中でも意見が分かれている部分は重々承知をしながら、私は、ちょうど今から1年前、昨年の10月に、2001年に発表した連合社会保障の21世紀ビジョン、そして昨年10月に発表した年金制度の抜本改革案、この2つをもって連合が改革を成し遂げたい、その役割を果たすんだと皆さん方にお話をし、その理解をいただきました。
 昨年の10月以降どういうことが起きたかといえば、11月の衆議院選挙の前に各党がマニフェストを出し、年金や社会保証制度の部分について打ち出しをした。しかしてその内容をもって1月からの通常国会が行われた。どちらにどう責任があるといえば、与党のほうに責任があるのは決まっているけれども、ろくな内容の論議もせずに、未納だ、未加入だ、何とか三兄弟だというあげつらいばかりやっていて、内容的な論議もせずに、あげくの果てが政府の強行採決による現法案が10月1日から施行されるという状況になっている。
 このことに対して、7月の参議院選挙が終わり、そして秋の臨時国会があと明日で終わるというこの段階まで来て、昨年の10月以降、1年を経過するのに国会の中で1つも改善策の論議もされずに、何の国民に対しての政策定義も出されていないことをいつまで放置をしておくんだ。このことを、皆さん方、本当に許せますか?
 そこに私は、連合は外に対する在り方懇をつくり、そして連合の案による国民のための揺るぎない抜本改革を必ずつくるんだと。その中身についてはカンパという手段を通じながら、組合員すら理解されないものが国民世論の支持が得られるはずがないから、組合員に対する理解活動を周知徹底を行った上で、自信を持って国民の信を問うた連合案によって社会保障制度の抜本改革を成し遂げるということを、大会を通じ、中央委員会を通じ、皆さん方にお願いしてきた経過があるわけで、民主党との政策協議を行いました。4項目合意をしました。しかし、具体的にそのことを、どういうふうに中身をつくっていくか、民主党はこの国会に法案は提出したけれども、マニフェストの内容から変わった点がありますか。具体的な数字はどこに入ったんですか。一元化をやるのはいいけれども、どういう段取りを踏んでやっていくのか何も明示されてない。それに対して与党のほうは3党協議を盾に取りながら、3党合意、3党合意という呼びかけをするだけで、具体的な制度についてどうつくろうかという提議もしない。
 私は、在り方懇の中で信を問うた連合案、皆さん方のカンパのお金を使いながら国民に対して連合のコマーシャルを打ったあの内容が、国民に対して一番今求められている社会保障制度の揺るぎない抜本改革をする最大の案だという自信を持ちながら、連合がつくり上げる役割のその先頭に立つということを申し上げてきている。このことをつくり上げるためならば政府に対して、各政党に対しても政策協議を行い、連合案の正当性を訴え続け、あの内容によって1日も早い、それも1日も早いというような期限つきで、15%を超えない中で、税と年金、医療、介護、そして社会保障制度その他の部分も含めた一体的見直しの抜本改革をやる、このことをぜひ連合の総意として職場、地域の中での運動展開をし、国民世論を味方につけながら抜本改革をするんだということを、JCの皆さん方はぜひご理解をしていただいて、運動の先頭に立っていただきたいと思います。
 そしてその上で、緊急的な対応をしなければいけないもの、プラス1つあります。これは定率減税の縮減廃止の問題です。99年に小渕内閣がサラリーマン向けに出しました。結果、増税です、この縮減廃止は。そのほかに各種税控除も縮小・廃止をしていくという案が次から次と出されてくる。そのターゲットはどこなんだということになれば、すべてサラリーマンなんですよ。その人たちに対してのターゲット。ここは増税であり、高負担であり、給付の減、すべてそこに持ってくる。一番取りやすくてやりやすい箇所だから。そのことをいつまでも許すわけにはいかない。
 だから仮に減税という問題、税制の見直しをやるなら、先ほども言ったように税と社会保障の一体的見直しの中で抜本改革をするという、セットで論議をしなければいけない。このことは、反対をするという運動は極めてたやすい。しかし、そのことで答えが得られるか。今回の問題は、初めて自分たちのつくった政策・制度を自分たちの力で国民のために政府に認めさせ、政党に認めさせ、そのことによる揺るぎない制度を確立するという、言ってみれば初めての試みになる運動だと私は思います。その意義を十分に理解をしていただいて取り組んでいただきたいことを、2つ目にお願いをします。<ページのトップヘ>

◎平和の問題について
 そして3つ目は平和への問題です。これは、緊急に明日院内集会を行います。そして今、世界大会が終わり、残念ながら10日に予定をされている閣議で強行延長が閣議決定をされるという状況になったときに、再び連合としては抗議行動を行わなければいけないだろうと思っています。
 12月14日にイラクの派兵の期間が切れます。延長問題、これはいろいろな意見があるけれども、イラクに今自衛隊を派兵をする大儀はもうなくなったんですよ。派遣されている自衛隊員にとっては、大変にご苦労なことだと思いますが、あそこで今安全が保障されているのか。それから、イラクの復興支援に対して毎日自衛隊の作業として展開をされているのか、これもノーなのです。その上で、小泉総理が国会で答弁をした中身はあまりにもひどい。特措法の中身は一体どこへ行ってしまったのだ。自衛隊が活動している地域が非戦闘地域だと言った。特措法には、自衛隊が活動する地域は非戦闘地域とすると言ったんです。している地域とする地域は違うんです。いるところはどこでも非戦闘地域でいいという解釈を小泉さんは答弁でしたわけだから、今のイラクは戦闘が継続されている地域なんです。そこに自衛隊を特措法の精神で送っていくということは、これ以上はもうできないはずです。国民世論もそのことを求めていることは全く無視をして、国会の中で何の論議もせずに閣議決定をして、そのまま延長させるということは、これは認めてはならないと私は思います。連合としてはこの行動を行います。
 その上で、極めて危険な徴候は、このことを許していくと武器輸出三原則の問題、さらには、来年ちょうど45年になる60年安保、日米安保の本質的な見直しが行われるという時期、そこに憲法論議がかかってくる。いわゆる日本の平和に対する扱いが極めて危険な徴候になることについて、その入り口から1つ1つ、我々としては明確な意志をあらわし、国民の声をそこに結集させるということが必要だということの思いを申し上げておきたい。<ページのトップヘ>

サマータイム制と産業別最賃問題でJCと連合が共闘体制を
◎サマータイム制
 最後に、これは追加になりますが、古賀議長のほうから触れられた2つの問題について、連合としてはぜひその方向で協力もし、共闘態勢を組みたいと思います。1つはサマータイムの問題です。昭和23年ごろだったと思います。私が小学校にちょうど入るころ、日本にもサマータイムが行われた3年間がありました。あのころは古い柱時計を、私が小学生のころ、いすの上に乗っかって時間を合わせる作業をやった記憶があります。この月から1時間延びるんだよなんてお母さんに言われて、一生懸命直したんですが、これ3年間でなくなった。時代的なものとかいろんなことがありました。
 その後、環境問題、そして省エネでこのサマータイムが浮上した。どちらが効率があるかというような論議の中で、これもまたいつの間にか反対・賛成の中でポシャってしまった。
 しかし、今回の問題は、かなり本気で取り組んでやらなければいけないだろうと思っている。それはどういうことか。20世紀型の生き方、暮らし方、働き方を変えようと連合は提起をした。サマータイムそのものを導入することは、これからのライフスタイルをどう変えるかという一番大きな問題にもつながるんです。そこに労働側が危惧をしていたのは何か。オーバータイムにつながるのではないかということだった。そんなことは自分たちの力で止めればいいでしょう。それが不払い残業の撲滅運動にもつながっていくわけだ。
 サマータイムというのは、労働環境をどうするかというのは自分たちがカバーすればいい。今の社会慣行、生活環境をどういうふうに変えるかということで重要な要素であるというなら、試してみる価値はある。だからまずやってみようかというのが私の考え方です。

◎産業別最賃
 その上で最賃の問題。これを廃止なんて言うのはとても認められるものではないということです。特に古賀さんが触れられたように、非典型雇用の問題を含めた均等待遇、ここに安い労働対価で使いたいという経営側の発想が、極めてその数を増大させていることにつながっていく。これは産業別の中でも地域でも、最低賃金制度というのを法できっちりと定めた上で、これ以下の使用は認めないんだという網を張らなければいけない。
 そこにもう1つ危惧をされるのは、ここに移民労働者をどう適用するかということも、この問題としてはかかわってくるわけです。今、フィリピンの問題等が出てきておりますが、日本にシステムもルールも決めないままで導入をしていった場合には、極めてチープレイバーを増やすということになってしまうということに対する、きちっとした法の整備、これは最賃制度の役割というのは絶対に欠かすことができないという制度だろうと私は思っています。
 極めて時代の変化の中で難しい要素がありますが、労働運動、今こそ出番という思いを共通の認識にしていただいて、JCの皆さん方の連合労働運動の先導役を心からお願いをして、ごあいさつにさせていただきたいと思います。(拍手)<ページのトップヘ>