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2002年闘争ミニ白書

< 資 料 2 >

ヨーロッパにおけるワークシェアリングの事例
(JC国際局まとめ)

フランスの週労働35時間制
ドイツ金属労組の時間短縮
フォルクスワーゲン社のワークシェアリング
フォルクスワーゲン社の「5000×5000」モデル
オランダにおけるパートタイム労働

フランスの週労働35時間制

フランスでは、法定労働時間の短縮は、政府が週労働時間を39時間から35時間へ削減するとの発表を行った1997年以来雇用政策の中心となっていた。98年6月、企業もしくは産業分野レベルでの週35時間労働導入の交渉を労使に奨励するオブリ法が可決された。続いて2000年1月、新しい労働時間制度に関する詳細な条項を定めた第2次オブリ法が可決され、これらの法律により、21名以上規模の事業所には2000年2月から、20名以下規模の事業所には2002年1月から、週35時間労働が導入された。
第2次オブリ法では、99年6月以前に従業員全員もしくは一部に適用される週労働時間を少なくとも10%(35時間もしくはそれ以下)削減した協約を締結し、従業員を6%以上増やした企業に対して、5年にわたって社会保障拠出の減額が適用される。労働時間が削減された初年度は時短された従業員1人あたり9,000フラン減額され、以降1年毎に1,000フランずつ減額金額は少なくなる(2年度は8,000フラン)。また99年7月以降に締結した企業は初年度が7,000フラン、2年度が6,000フラン、3年度が5,000フランで、以降5年度まで同額が減額される。さらに、時短幅が大きい場合や労働時間削減に伴う新規雇用の数や内容によって拡大される。たとえば15%の時短かつ9%以上の雇用の増加が見られた場合や、期間の定めのない雇用契約、若年層、障害者、長期失業者および生産労働者が従業員の60%を超えるような事業所の場合などである。これらの雇用は、少なくとも2年間は維持されなければならないとしている。
なお、これらの法に先立って、96年6月にロビアン法が施行されている。これは労使で合意された労働協約で労働時間を10%以上削減し、それに見合う新規採用を行った場合に、企業の社会保障拠出を7年間にわたり30%以上免除するもので、労働時間が短縮されている産業別協約を適用した企業にもあてはめられる。また、余剰人員を抱える企業が時短を行うことによって解雇を回避する場合にも適用される(防衛的適用)。
2001年11月に発表されたDARES(雇用省調査統計局)の調査結果によると、週35時間制を導入した企業のほとんど全部が従業員の(週あたり)賃金を維持している。この調査の対象となったのは、98年6月から2000年7月までに国と補助金協定を締結した23,000企業を含め、週35時間制へ移行した39,500企業であるが、この期間に、140万人の労働者が労働時間を短縮し、115,000人の雇用が創出もしくは維持された。
労働時間の短縮に際し、オブリ法が適用されている協約のうち、93.4%が完全な(週あたり)賃金保証を規定しており、一部を補填しているのは6.3%であった。この賃金保証の方法については、時間あたり賃金の引き上げが最も多く(協約のうち約60%)、一時金の引き上げが約25%で、利益分配を賃金保証に組み込んだかたちのものが5〜6%程度であった。

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ドイツ金属労組の時間短縮

ドイツのIGM(金属産業労組)の時短の取り組みは、84年2月より適用された産業別協約から始まった。この26カ月の協約では、85年4月よりそれまでの週40時間労働が、月例賃金の引き下げは行われずに38.5時間労働に短縮された。月例賃金補填のために時間あたり賃金が3.9%引き上げられ、これとは別に84年7月から3.3%、85年4月から2.0%、賃上げが行われた。これ以降も、時短によって月例賃金の減額は行われていない。
87年4月からの36カ月協約では、初年度は賃上げのみ1.5%であったが、2年度は週労働38.5時間から37.5時間への時短が行われた。月例賃金補填の賃上げは2.7%であり、さらに2.0%の賃上げが行われた。3年度は週労働37.5時間から37時間の時短(補填の賃上げは1.4%)、および2.5%の賃上げが行われた。
90年代に入ってからは、7次にわたって協約改定が行われたが、そのうち時短に関係する協約は92年4月適用の21カ月協約と、95年1月適用の24カ月協約であった。92年からの協約では、92年4月に5.4%の賃上げ、93年4月に週労働37時間から36時間への時短と補填のための2.77%の賃上げ、および3.0%の賃上げが行われた。95年からの協約では、36時間から35時間への時短(補填のための賃上げは2.86%)、および3.4%の賃上げが行われ、さらに11月から3.6%の賃上げが行われた。

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フォルクスワーゲン社のワークシェアリング

93年11月に合意された協約により、フォルクスワーゲン社は94年1月から2年間に限定し、週労働時間を36時間から28.8時間に7.2時間短縮した。これにより従業員102,000人のうち30,000人の削減が回避され、94年と95年の2年間については企業内の理由による解雇が回避された。
当初は93年10月にフォルクスワーゲン社の経営側から、会社再建策の一環として週4日労働というアイデアが出された。11月に入って労働協約に関する労使の話し合いがもたれ、IGMは企業からの拠出による月例賃金の確保を主張した。最終的には以下のようなかたちで時短と月例賃金の確保が達成された。
Fクラスの熟練労働者を例とした場合、月例賃金は4,099DMであったが、労働時間が28.8時間となるとそのままでは賃金は20%、820DMの削減となる。そのため、@年次特別一時金の12分の1(274DM)、A先に合意されている週35時間制到達時の賃金保証の前倒し、休養休暇の換算および企業からの拠出(204DM)、B休暇一時金の換算(158DM)、C93年11月の3.5%賃上げ(143DM)、94年の1%賃上げの前倒し(41DM)を原資として補填し、月例賃金が減少することを回避した。しかし年間収入で見た場合は、93年と比較した場合約16%の収入減となっている。
95年9月に締結された協約でも、96年1月以降の週28.8時間労働や2年間の雇用保証が継続されることになった。この協約で導入されたのは、労働時間配分に関する新たな規定である。これは経営協議会で合意された交代計画に沿って、週の平日(月曜日から金曜日)の4日もしくは5日間に、年間の労働時間計画の枠内で1日8時間まで、週あたり超過分最大10時間まで配分できるというものである。暦年の範囲で週28.8時間労働は遵守され、また工場別協約でその確保のために従業員ごとに労働時間の口座を設定できることとなった。
また超過労働に関する新しい規定も導入された。週単位での労働時間の超過について、原則的に有給の労働免除で調整することとなった。これにより、超過労働に対する手当は週35時間労働以降から適用の対象となる。なおこの協約では、4%の賃上げも行われた。

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フォルクスワーゲン社の「5000×5000」モデル

これは、フォルクスワーゲン社のミニバンを製造する新規のプロジェクトの立ち上げに際して、IGMがオート5000社との間で締結した協約を指す。この団体協約は4つの部分に分かれており、賃金・労働条件を定めた労働協約、資格制度合意、共同決定に関する合意およびフォルクスワーゲン経営協議会と共通の経営協議会設立に関する合意である。
協約では、このプロジェクト立ち上げ時点に3,500名を、後に1,500名を雇用し、さらに採用から6カ月後には期限の定めのない雇用契約へと移行する。労働時間については年間平均で週あたり35時間、週労働時間の最高は土曜労働も含み42時間に制限される。超過労働時間は基本的に労働免除で調整され、従業員個人に設定された「弾力時間口座」に年間200時間まで積み立てることができる。基本賃金は4,500DM、年間一時金の最低水準は6,000DMとなっており、ここには夜間交代手当、クリスマス手当、休暇手当も含まれている。月額の最低水準は5,000DMとなるが、これに日曜祝日の出勤手当や個人業績給や企業業績配分給付が付加される。IGMでは地域の金属産業の産業別協約と比べても遜色がないとしており、従業員の年間収入は、初年度が年間59,500DM、2年度は64,000DM、3年度は69,000DMになるとしている。
なお、これは新規に立ち上げられたプロジェクトで、新規雇用を創出したものであり、現行の従業員の労働条件の変更ではない。

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オランダにおけるパートタイム労働

労使は81年にパートタイムとフルタイム労働の平等処遇に関する全国枠組み協約に合意、産業別協約、企業別協約および個別の労働契約にこれを反映させてきている。また労使が参加している「労働財団」が、パートタイム労働の奨励を行っている。パートタイム労働の導入は、労働市場への女性参加の拡大、高齢労働者の就業促進、労働報酬の平等な分配、および失業の減少などを目的としている。
オランダではパートタイム労働に関する定義といったものはとくにないが、通常はフルタイム雇用の労働者の労働時間より短い労働時間で働くこと、とみなされている。雇用条件の面では、パートタイム労働者はフルタイム雇用の労働者と同様の処遇が法で定められており、広範囲な福利厚生が適用されている。
賃金では、パートタイム労働者は同様の仕事に就いているフルタイム労働者の時間あたり賃金と同額を支払われており、93年1月からはパートタイム労働者も全国最低賃金と同じ水準の最低水準の賃金が保証されている。
またパートタイム労働の時間に比例して有給休暇が取得できる。たとえばフルタイム雇用の労働者が年間20日の有給休暇であれば、半分の労働時間のパートタイム労働者は、年間20回の半日(パート労働者にとっては1日)有給休暇を取得できる。有給休暇の法定最低水準は年間20日であるが、団体協約では通常25日の場合が多い。その他、特別休暇や育児休暇についてもフルタイム雇用と同等に規定されている。
その他年金、社会保障、健康保険についてもフルタイム雇用の労働者と同等の処遇が規定されている

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