HOME

2002年闘争をとりまく情勢

3.金属産業の動向

1.電機産業
2.自動車産業
3.機械金属産業
4.鉄鋼産業
5.造船重機産業
6.電線産業
7.非鉄金属産業

1.電機産業
 
電機産業全体の動向としては、2000年には分野によりプラスが見られるという状況にありましたが、2001年は世界的なIT不況などのあおりを受け、大幅なマイナス傾向となっています。
半導体市場においては、世界ベースでの景気悪化の影響を受け、厳しい落込みが続いています。半導体集積回路は、2000年10〜12月期から出荷額の伸びが急速に鈍化し始め、2001年4〜6月期には前年比△30.3%の減少となっています。また、在庫率は大幅に上昇しており、半導体価格も下落しています。
コンピューター関連機器は、ウェイトの大きいパソコンが、生産量は前年並みの水準を維持しているものの、単価の下落により生産額が減少傾向となっています。周辺装置では、外部記憶装置が前年を上回る伸びを維持しているものの、入出力装置は単価の下落などから引き続き低調な動きが続いています。汎用コンピューターは、2000年末に一時的に前年を上回ったものの、減少傾向にあります。端末装置も、1〜3月期以降、減少傾向となっています。
通信機器においては、10月より第3世代携帯電話サービスが開始さましたが、若者層への普及が一巡したこともあって、携帯電話の需要は落ち込んでいます。通信機器全体の生産額は、4〜6月は前年比10.4%増となりましたが、7月には同△0.7%の減少となっています。設備投資関連の生産は、搬送装置が、アメリカ向け輸出の減少により一進一退の状況となっています。電子交換機は、ISDNに関連した需要や市内通話サービスへの新規参入に伴う設備投資が一巡したことから、4月は前年を上回りましたが、5月以降は急激に減少しています。
家電の国内出荷(台数ベース)は、総じて減少傾向にあります。AV家電をみると、品目ごとにばらつきがあるものの、総じてみると減少しています。品目別では、カラーテレビは、家電リサイクル法施行前の駆け込み需要の影響で1〜3月期は3.8%増と増加したものの、その後は反動減に加え、それまで好調であったBSデジタル放送対応型のハイビジョンテレビの伸び悩みもあって7〜9月期は前年比△8.6%となっています。VTRは大幅な減少傾向にあります。ビデオカメラはデジタルカメラの需要が一巡し4〜6月期前年比△8.4%、7〜9月期同△19.5%となっています。CD・MDプレーヤーは一進一退で推移しています。DVDは減少傾向にあります。
白物家電をみると、特に家電リサイクル法施行前の駆け込み需要により、洗濯機、冷蔵庫が1〜3月期に大幅に増加し、4月も堅調な動きをみせていましたが、6月より反動減となり、洗濯機は7〜9月期前年比△13.0%、冷蔵庫は7〜9月期前年比△12.9%となっています。また、電子レンジは低価格化と買い換え需要が重なり、2000年末より増加傾向にあるものの、伸びは鈍化しています。エアコンは堅調に推移しています。
家電の輸出(金額ベース)は、減少傾向にあります。AV家電では、デジタルスチルカメラなどの映像機器が増加傾向を堅持していたものの、全体では4月は減少に転じ、9月には総じてマイナスとなっています。地域別では、EU向け、アメリカ向け輸出の景気が弱い状態となっていることから減少しています。
家電の輸入(金額ベース)は、中国からの輸入が引き続き増加していますが、全世界ベースからみると減少傾向にあります。
重電分野については、重電機器合計の生産金額をみると、4月より減少傾向にあり、4〜8月は前年比△10.9%と落ち込んでいます。

<このページのトップへ>

2.自動車産業

 自動車産業においては、国内販売(新車新規登録・届出台数)の実績が僅かではあるものの2000年を下回る状況となっており、アメリカを中心とした世界的景気停滞により完成車輸出がアメリカ・ヨーロッパを中心に減少しているため、生産が低調に推移しており、暦年・年度ともに2001年は、1,000万台割れの可能性が高まっています。また、アメリカ同時多発テロの影響による世界的な景気後退懸念に加え、国内でも不況感が鮮明になってきており、2002年下期の収益見通しは厳しさを増しています。
自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数)は、2001年4〜6月期前年比△0.7%、7〜9月同0.1%増と減少と増加をくり返しながら推移しています。車種別にみると、普通乗用車はモデルチェンジをした車の需要が一巡したことなどから、前年を下回っています。小型乗用車は新型車及びモデルチェンジをした車が好調であることから、4〜6月期前年比4.9%増、7〜9月同6.7%増と、増加傾向にあります。普通トラックは、2000年5月に一部で初回車検期間が1年延長され、車検期間延長による購入増加の反動から5月、6月は減少に転じましたが、その後7〜9月期前年比6.7%増となったものの、10月には減少しています。小型トラックは、2000年好調であったモデルチェンジをした車の反動から、5月以降は減少傾向にあり、7〜9月期前年比△11.5%となっています。軽乗用車は新規格車の投入以降の需要が一巡して減少傾向にありましたが、10月に入り、各社の新車投入効果等もあり、前年並みを維持する可能性もあります。軽トラックは新規格車の投入以降の需要が一巡し、減少傾向にあります。
自動車の輸出(完成車台数ベース)は、1〜9月で前年比△7.6%、4〜9月で同△7.8%と減少しています。仕向地別にみると、アメリカ向けは新車販売台数の減少、現地生産の拡大などから減少しています。欧州向けはユーロ安の影響、現地生産の拡大などから減少しています。アジア向け、中東向け前年を若干上回る傾向にあります。自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、海外生産用、OEM用とも前年を下回っています。

<このページのトップへ>

3.機械金属産業

一般機械の生産は、総じて減少に転じています。機械受注(原動機・産業機械・工作機械・半導体製造装置のみ、金額ベース、前年同期(月)比)をみると、原動機が増加に転じているものの、産業機械、工作機械の伸びも鈍化に加え、半導体製造装置が減少しており、全体では4〜6月期前年比△9.3%、7〜9月同△2.2%と緩やかな減少傾向にあります。
 産業機械の受注は、4〜6月期前年比8.8%増、7月は前年比△20.6%、8月同6.0%増と一進一退で推移しています。内需は、非製造業向けでは電力業の一時的な需要が集中したことから増加していることに加え、製造業向けにおいて電気機械等の業種で増加がみられたことから、4〜6月期前年比3.6%増となりましたが、その後減少に転じています。外需は、プラント案件が一時的に集中したことから増加しており、機種別ではプラスチック加工機械等は低調でしたが、ボイラ・原動機等が増加したため、4〜6月期前年比33.4%、8月は93.7%増となっています。地域別ではアジアが減少傾向にありますが、アメリカ向けは増加しています。
 工作機械の受注は、4〜6月期前年比△11.8%、7月前年比△21.3%、8月同△25.9%と、このところ月を追って受注環境は厳しさを増しています。内需は、IT関連投資の急速な衰えに加え、ウェイトの高い一般機械向けや電気機械向けの伸びが鈍化していることから4月より減少に転じており、このところ弱含んでいます。外需においても、4〜6月期前年比△9.1%と6四半期ぶりにマイナスとなりました。アメリカの景気停滞によりアメリカ向けの減少傾向がみらますが、ヨーロッパ向けは堅調を維持しています。
 建設機械の出荷は、建設不況に加え、世界経済の悪化から内外需ともに低迷しており、全体では4〜6月期前年比△13.9%、7月同△16.1%、8月同△15.3%となっています。内需は、全体で減少が続いており、外需においては、ウェイトの高い北米・中南米向け、欧州向けの大幅な減少が続いており、主要機種別にみると、トラクタ、掘削機械、建設用クレーンの減少が続いています。
ベアリングの受注は、内外需ともに減少しており4〜6月期前年比△11.3%となり、7〜9月期では同△14.2%と予測されています。

<このページのトップへ>

4.鉄鋼産業

鉄鋼需要は、内需が急速に落ち込み厳しさを増しています。2001年の春先までは輸出の大幅な減少にもかかわらず、内需が比較的堅調さを維持してきました。しかし、4月以降は、建設関連需要の大幅な減退に加え、製造業からの受注も先細り傾向を強め、需要総崩れの様相を呈しています。内需の足元の動向では、建設は公共土木の減少に加え、非住宅の建築の不振から前年比で2桁の減少が避けられません。また、製造業では、唯一堅調な造船を除き、自動車、電機、産業機械などは、輸出の減少やIT関連需要の急減から前年水準を割り込む動きとなっています。
一方輸出は、アメリカでは高炉大手2社が破産申請するなかで、通商法201条にもとづくセーフガード発動に向けた動きが強まっており依然として厳しい環境が続いています。足元では電炉メーカーが市況対策から輸出成約をすすめていることを加えても、前年水準を大幅に下回るものとみられます。
足元の需要は急速に悪化しており、本年度下半期では、需要規模のさらに一段の縮小を余儀なくされる見通となっています。
需要の低迷と在庫の積み上がりによって、最近の鋼材市況は、条鋼類・鋼板類ともにかつてない低水準にまで落ち込んでいます。今回の在庫調整局面では、条鋼類に比べて鋼板類の価格の落ち込み幅が大きくなっています。総合各社の2001年度上期での鋼材販売単価(単独)は、前年度に比べて1,800〜6,400円も下落しており、各社の経営内容が日々悪化していることを示しています。2000年度の総合5社単純平均の鋼材販売単価(単独)は、55,000円でした。1991年当時は85,000円でしたから、この10年間に30,000円、35%も下落したことになります。5社計鋼材販売数量を少なめに6千万トンと置くと、この10年間の減収額は1兆8千億円の巨額に達します。
2001年度の粗鋼生産は、4〜6月期2,638万トン、7〜9月期2,583万トンと走っており、上期計では5,221万トン、年率では1億400万トンペースの高水準となりました。9月中間決算発表時の総合各社の需要見通しでは、2001年度の粗鋼生産は9,900万トン程度となっています。それをそのまま受け止めれば、下期は全国粗鋼ベースで4,600〜4,700万トン程度となり、上期とは対照的な生産水準となります。経済産業省の生産計画ヒヤリングでは10〜12月期の生産水準は2,466万トンとされており、そこまでの減産が実際にできたと仮定しても、2001年度の粗鋼生産を9,900万トン程度に止めるためには、2002年1〜3月の生産水準は2,200万トンまで落とす必要があります。
2002年度、2003年度の粗鋼生産は、日本経済の実質経済成長率を2002年度△0.5%、2003年度1.1%とし、内需の減少に見合った生産水準とすること、価格重視の観点から在庫調整をきちんと実施すること、さらに輸出も需要に見合ったものにすること等を全て実行すると想定した上で、9,000万トン程度ときわめて厳しい見通しとなっています。

<このページのトップへ>

5.造船重機産業

2001年度上期までの情勢では、造船、プラント、宇宙、鉄道車輌が好調となっています。
2001年度上期の新造船受注量(建造許可ベース)は、ばら積み船、コンテナ船、タンカーを中心に、前年同期比22.5%増の680万総トンとなり、船価も若干上昇しました。この傾向が続くと、今年度も昨年度に引き続き1,000万総トンを越え、1,300万総トンに達することも予想されています。
2000年、2,079万総トンもの大量受注をした韓国は、低船価受注に対する欧州のWTO提訴への動き等があり、また、中国では、急速な市場経済化の進展への対応等により、それぞれ上期の受注量が減っています。
2000年度のエンジニアリング産業の受注高は、国内が対前年度比2.7%増、海外が同23.1%増と海外需要の増加が大きく、合計で5.9%増の11兆6.927億円となりました。2001年度以降の受注見通しも、国内が弱含み、海外が伸張という傾向が続くと見通されています。2001年度上期のプラント輸出契約は、化学・石油化学プラントが大きく伸び、合計で141.2%増の1,199億円となりました。
2000年度の航空機生産額は、防衛需要の一時的回復により、対前年度比5.1%増の10,250億円が見込まれています。2001年度は、「部品」と「発動機」の増加があるものの、「航空機」及び「装備品」の減少により、合計で前年度比5.4%減の9,696億円の見通しとなっています。うち輸出は、2000年度が、対前年度比△5.0%の2,748億円の見込み、2001年度が、同17.6%増の3,231億円の見通しとなっています。受注は、2000年度(見込)が0.8%増の9,814億円の見込み、2001年度が、△5.8%の9,241億円の見通しとなっています。今後アメリカ同時多発テロの需要・開発への影響が懸念されます。
2000年度の宇宙産業売上高(機器)は、対前年度比3.2%減の3,356億円となりました。2001年度は、H2A2号機の打ち上げに伴う飛翔体、地上施設の回復が予想されることから、9.4%増の3,672億円が予想されています。
 2001年度上期の鉄道車両生産(貨車換算量数)は、このところ増加基調にある輸出が横這いだったもののJR向けが大きく増え、合計で、60.0%増の11,950両となりました。新幹線、LTR(ライト・レール・トランジット)等内外プロジェクトの推進に期待がかかります。

<このページのトップへ>

6.電線産業

 日本電線工業会の「平成13年度電線需要改訂見通し」によると、総じて需要が減少すると予測しており、とりわけ世界のIT不況の影響で主力の電気機械、建設・電販部門の不振が顕著となっています。銅電線の受注量は内外需要合計で83万2,000トン、前年度比△10.1%、出荷量で内外需要合計84万1,000トン、前年度比△10.2%の見通しとなり、この出荷量の水準は、1977年度以来の低水準となっており、大変厳しい見通しとなっています。
 通信部門においては、2001年度のNTTの設備投資は、大幅に圧縮され、東西会社合わせて1兆円を割り込む見込みとなっています。メタルケーブルは光化もあいまって減少が続き、1万9,000トンと前年度比△9.1%の見通しとなっています。
電力部門においては、電力需要が東京電力等が7月の猛暑によりピークを更新しましたが、電力供給力には余力があり、経営効率化の促進もあいまって、電力会社の設備投資は抑制が続けられています。2001年度の銅電線の見通しは、8万5,000トン、前年度比△10.4%となっています。
電気機械部門では、世界のIT関連不況に伴い電子通信分野が急減していることや、海外生産シフトの影響、個人消費の伸び悩みによる家電等の不振など、総じて電機部門は厳しく、20万6,000トン、前年度比△14.3%と予測されています。
 建設・電販部門は、首都圏の大型再開発プロジェクトが2001年度末から多少寄与することが予想されますが、関連の深い投資項目である民間設備投資、民間住宅投資、公共投資ともにマイナスが予測されるため、電線銅量では36万トン、前年度比△8.7%と見込まれています。
 輸出部門においては、アメリカ、東南アジアの景気が厳しさを増していることに加え、生産の現地化、ローカルメーカーの成長、世界のメーカーとの競合など、輸出環境は厳しく、電線銅量で3万7,000トン、前年度比△23.1%の見通しとなっています。
 2000年度の光ケーブルの需要においては、国内需要の8割以上を持つ公衆通信、とりわけ、NTT、各電力会社、新興キャリアが中心となって牽引し、前年度比62.8%増の15,263kmCと、初めての10,000kmCを大幅に上回る予測となりました。2005年度は加入者系のインフラ整備に加え、新たな需要としてFTTHが本格的に動き始めることに加え、地域情報化、データトラフィック増加によるインフラ増強が活況を呈し、2000年度から2005年度年平均伸び率13.0%増の17,300kmCと、今年度をさらに上回る需要が続くと予測されています。しかしながら、光ケーブル価格の下落が顕著となっています。 

<このページのトップへ>

7.非鉄金属産業

非鉄金属産業においては、為替は前年同期と比べて円安で増収要因となりましたが、世界的なIT関連需要の大幅な減退にともなう電子材料や伸銅品が落ち込んだ上、地金の国際価格の低下や販売不振などにより、非鉄製錬各社では軒並み減収となりました。また、IT不況による電子材料の需要不振、業績悪化に対応して、非鉄製錬大手8社は2001年度設備投資計画を修正し、当初計画の合計810億円に比べると100億円強の圧縮となっています。
 非鉄金属の生産動向(製錬所)をみると、金、銅、亜鉛については増加と減少を繰り返しながら推移していますが、銀、鉛については落ち込みが激しく、全体として減少傾向となっています。アルミニウム圧延品や伸銅品などの生産は軒並み減少しており、8月の前年比をみると、伸銅品は△18.4%、アルミニウム圧延品は△5.8%の減少となっています。
 非鉄ベースメタルと金、銀の中間期決算期中の建値平均は、低調に推移しており、トンあたりで、銅が233,000円、鉛が94,000円、亜鉛が150,000円となっています。鉛は前年同期比をやや上回りましたが、銅、亜鉛は同△10%前後の大幅なマイナスとなっています。

<このページのトップへ>

<目次に戻る>