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2002年5月27日
金属労協・労働政策局

2002年闘争評価と課題・中間まとめ



T.2002年闘争の経過
1.要求の策定について
2.闘争の経過と労使の主張
U.2002年闘争の評価
1.要求を振り返って
2.回答と評価
V.2002年闘争で示された課題と今後の取り組み
1.グローバルな市場経済化の進展における環境条件の変化
2.取り組み項目別の課題整理
3.「緊急労務対策」など逆提案への対応
4.JC共闘強化のための今後の取り組み展開について


T.2002年闘争の経過

1.要求の策定について

(1) 情勢認識
 
2002年闘争にあたっては、日本経済・社会が「大きな時代の転換点」を迎えているとの基本認識のもとで、以下の情勢認識に基づいて要求立案を行いました。

○21世紀型の日本経済・社会の構築に向けた構造改革の果敢な断行が叫ばれるなど、「大きな時代の転換点」を迎えている。
○グローバル化と市場経済化の進展によって、国際競争は熾烈を極めている。とりわけ金属産業では、生産拠点の移転、国境を越えた企業再編など、産業・企業の事業環境が構造的に変化をしている。
○日本経済は、名目・実質ともマイナス成長に陥っており、物価もマイナスとなる見通しであり、デフレスパイラルぎりぎりの状況が続いている。
○デフレが進行するなかで、グローバル化による国際競争とがあいまって、日本経済は中期的・構造的な課題に直面している。
○世界的な同時不況局面への突入など先行きへの不安定要因を増大させている。
○産業動向・企業収益においても、産業・企業ごとの違いがますます拡大している。
○完全失業率が5%台となり、雇用が危機的な状況におかれている。今後さらに雇用問題が顕在化し、勤労者生活の大きな圧迫要因となる恐れがある。

(2) 2002年闘争の位置づけ

 金属労協では、従来であれば2001年12月3日の第44回協議委員会において「2002年闘争の推進」を確認するところですが、これまでにない厳しい情勢認識から、10月15日の三役会議において「『2002年春季総合生活改善闘争』取り組みの基本スタンス」を確認し、これに基づいて2002年闘争の推進について具体的な検討を行うこととしました。
 「2002年闘争の推進にあたっての基本スタンス」では、2002年闘争を「勤労者の雇用を確保し、生活の安定を確立する」ための取り組みと位置づけ、

○「雇用の維持・確保」を第一義におき、あらゆる方策について協議を尽くし、雇用保障協定の締結等を含め、その達成に全力を傾注する。
○さらに、デフレスパイラルへの転落を阻止する観点から、所得の安定確保を果たすため、最低でも賃金構造維持分を確保する。その上で当該産別の産業状況を踏まえ「純ベア」に取り組む。

ことを確認しました。
 これを受けて、各産別においても、1〜2月に開催する中央委員会に先だって取り組みの基本スタンスを整理し、電機連合・鉄鋼労連では10月末から11月初旬に雇用を第一義としてベア要求を見送ることを決定し、一方、自動車総連・造船重機労連では11月末にベア要求を行うことを決定しました。

(3) 具体的な取り組み

JC共闘の推進にあたっては、「雇用の維持・確保のための基本的枠組みづくり」「賃金・労働条件の取り組み」「勤労者生活を守る政策・制度の取り組み」を「共闘の柱」として、2002年闘争を推進していくこととしました。

@ 雇用の維持・確保のための枠組みづくり
 
 1) 「雇用の維持・確保」のための労使協議の充実
 ・産業・企業基盤の強化を図りながら、雇用を維持・確保するために、産業政策課題や経営課題等についても、労使協議の充実を図り、真摯な議論を積み重ねていく。
 2) 労使協議にあたっての具体的対応
・雇用が最重課題であるとの認識の下、産別レベル、企業連・単組レベルで雇用の維持・確保のためのあらゆる方策について協議を行う。
・各産別の実態に応じて、産別労使、企業労使による雇用保障協定の締結などを含めて、雇用の維持確保の取り組みを進める。
 3) 今後に向けた対応課題
 ・「雇用の維持・確保」の取り組みは、一方で労使による「社会的合意形成」に向けた下地づくりともなるだけに、ワークシェアリングの考え方も含め、さまざまな課題について幅広く検討していく。

A 賃金・労働条件の取り組み

 1) 基本的考え方
@.デフレスパイラルに陥らせないための勤労者生活の維持・確保の取り組み
・全ての組合は最低でも賃金構造維持分を確保し、産業・企業の状況を踏まえ、「純ベア」に取り組む。
A.金属産業の相対的賃金水準の維持・確保に向けた取り組み
・金属産業にふさわしい賃金・労働条件の確立という基本的な考え方を堅持する。
・賃金水準の維持・確保を図った上で、可能な限り適正な成果配分を求める。
B.賃金構造維持分確保のための制度確立に向けた取り組み
・定期昇給制度を含む賃金体系整備を図っていく。同時に賃金体系整備を通して配分方式の確立を図る。
C.一時金の取り組み
・一時金を含めた年間総賃金を安定的に確保すべく、一時金に占める固定的支出部分が約8割(4カ月)程度あることを念頭におきながら、従来以上に下支えの取り組みを強化する。

 2) 具体的な取り組み
@.賃金
・賃金構造維持分の取り組み
  全ての組合は、賃金構造維持分確保の取り組みを進める。
    ・賃金引き上げ
      当該産別の産業動向を見据えた上で、ベア1,000円を基本に取り組む。
    ・標準労働者賃金
      高卒35歳・勤続17年・技能職 309,000円以上への水準到達をめざす。
      高卒30歳・勤続12年・技能職 266,000円以上への水準到達をめざす。
    ・標準労働者の最低到達目標水準
      上記到達目標の8割程度
    ・最低賃金協定
      18歳最賃 149,500円以上
      全従業員協定は、実効性が高まるように各産別の実態を踏まえて対応する。
      年齢別最低賃金の協定化に向けて取り組みを進める。
    ・産業別最低賃金協定
      法定産業別最低賃金の金額改正、新設に取り組む。
A.一時金
    ・年間5カ月を基本とする。
    ・一時金に占める固定的支出部分が約8割(4カ月程度)あることを念頭に、従来以上に下支えの取り組みを強化する。
B.労働時間
    ・金属労協全体で年間総実労働時間1,800時間台を達成すべく粘り強く取り組みを進める。
C.60歳以降の就労確保
    ・3原則(働くことを希望する者は勤労者個人の意思により誰でも働けること。年金満額支給開始年齢と接続すること。60歳以降就労するものについては、引き続き組織化を図ること。)を基本に粘り強く取り組みを進める。
D.その他の労働諸条件
    ・労災ならびに通災
    ・福利厚生・職場環境の改善

B 勤労者生活を守る政策・制度の取り組み

1) 基本的考え方
@.「新たな経済・社会システムづくり」をめざす取り組みの推進

・「市場経済が公正・有効に機能する透明で合理的な経済・社会システム」    「勤労者・消費者・納税者の立場を重視した人間尊重の経済・社会システム」の構築をめざす。
A.小泉内閣の「聖域なき構造改革への対応」
・金属労協「政策・制度要求」の具体化をめざし、理解促進を図っていく。
B.金属産業をはじめとするものづくり産業の基盤強化に向けた対策の強化
・ものづくり産業の基盤強化を図り、国際競争力の再強化と雇用の維持・確保を図るべく、産業政策課題への取り組みを強化する。

2) 具体的な取り組み
@.雇用を最重点とした運動の推進

    ・雇用のセーフティーネットの抜本的拡充
    ・市場経済を公正・有効に機能させるためのワークルールの確立
A.民間・ものづくり・金属産業の観点からの政策・制度課題への取り組み
    ・行政改革の強化
    ・財政構造改革
    ・社会保障制度改革
    ・税制改革
    ・規制の整理・撤廃、公共料金の内外価格差是正
    ・金融政策
   B.金属産業の健全な発展を促す産業政策
    ・金属産業「新産業政策」の策定
    ・ものづくり技術・技能の継承・育成
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2.闘争の経過と労使の主張

(1) 闘争の経過

@ 前段の取り組み


○「小泉内閣の構造改革方針に対する金属労協の見解」(2001年11月5日)
○「政策・制度シンポジウム」(2001年11月19日〜20日)
○「2002年闘争シンポジウム」(2001年11月20日〜21日)

A 闘争方針決定後の取り組み

○12月3日の第44回協議委員会において、「2002年闘争の推進」を決定し、戦術委員会と中央闘争委員会を闘争指導機関として設置して、2002年闘争を推進することとしました。
○第1回戦術委員会(2001年12月17日)では、各産別は2月中旬までのそれぞれの機関手続きを経て要求の集約を行うこと、集計対象A組合を中心に2月15日までに要求提出を行い直ちに団体交渉を行うこと等、2002年闘争の大綱日程を確認しました。
○「2002年闘争中央討論集会」(2002年1月15日〜16日)を開催し、闘争方針の理解促進と直近の情勢把握を行い、意思結集を図るとともに、「2002年版『日経連・労働問題研究委員会報告』に対する金属労協見解」を発表しました。
○第2回戦術委員会(2002年1月21日)では、日経連「労働問題研究委員会報告」に対して、われわれの要求が厳しい産業・企業実態を踏まえたものであるとして、要求の正当性を強く主張しました。また、集中回答日を3月13日に設定し、第1次交渉ゾーンを2月18日から3月1日、第2次交渉ゾーンを3月2日〜12日とすることを確認しました。
○「2002年闘争ミニ白書」を2月上旬に発行し、この中で、「日経連・労働問題研究委員会報告」に対する詳細な反論を行いました。
○第3回戦術委員会(2002年2月20日)では、要求提出状況や提出時の団体交渉の状況を踏まえて、第1次交渉ゾーン後半の交渉に臨むにあたり、「これ以上のデフレを阻止するために、雇用不安の払拭と同時に、賃金構造維持分を確保した上で、さらにベアを実施し、将来不安を払拭していくことが労使の責務である」とする基本姿勢を最後まで堅持し、確かな成果獲得に向けて、全力を傾注して交渉を展開していくことを確認しました。
○第4回戦術委員会(2002年3月1日)では、第2次交渉ゾーンに向けて、経営側が、労使がこれまで積み上げてきた制度や考え方についても変更を主張するなど、これまでにない厳しい態度で臨んでいることに対して、@雇用安定協定の締結などを含め、「雇用の維持・確保」を果たす。A賃金については、すべての組合で「賃金構造維持分を確保」し、「ベア獲得をめざす」組合をJC共闘全体で支える。B一時金は組合員の協力・努力と切実な思いに応えるべく底支えを図り、「水準の維持・向上」を果たす。C60歳以降の就労確保は、これまでの成果をもとに「具体的な前進」につなげる、等の方針を確認し、JC共闘一丸となって状況を打開し、最後まで徹底して交渉を展開していくことを確認しました。
○「ガンバローものづくり・製造業『2002年闘争推進集会』」を同3月1日に開催し、金属産業をはじめとする「ものづくり・製造業」の位置づけの重要性を確認するとともに、各産別委員長・会長等から「今次闘争の基本態度と最終交渉に臨む決意」が表明され、第4回戦術委員会での確認のもと、最後まで徹底して交渉を展開することをアピールしました。
○第5回戦術委員会(2002年3月8日)では、経営側の頑ななまでに厳しい交渉姿勢に対して、JC共闘7産別の総力を結集して状況を打開すべく、@雇用安定協定の締結などを含め、「雇用の維持・確保」を果たす、A賃金については、全ての組合で「賃金構造維持分を確保」し、ベア要求組合をJC共闘全体で支え、「ベア獲得」を実現する、B一時金は、組合員の協力・努力と切実な思いに応えるべく、底支えを徹底し、全体として「水準の維持・向上」を果たす、C60歳以降の就労確保はこれまでの成果をもとに「具体的な前進」につなげる、等の方針を堅持し、不退転の決意で団体交渉を展開していくこととしました。
○第6回戦術委員会(2002年3月11日)では、交渉の最終局面を迎えて、相互に交渉状況の把握を行いました。
○3月13日の集中回答日には、12時時点で集計対象75組合中40組合が回答を引き出しました。
○第7回戦術委員会(2002年3月13日)では、集中回答日12時段階の回答状況を踏まえて、交渉を継続する産別ならびに企業連・単組を全面的に支え、3月月内決着に向け交渉を強化していくとともに、企業内最低賃金協定の締結についても一層の前進を図ることなどについて確認しました。
○第8回戦術委員会(2002年4月4日)では、4月初頭段階での金属労協全体の回答状況を踏まえて、引き続き共闘体制を維持しつつ、集約に至っていない組合に対しては、産別指導のもと、何としても「雇用の維持・確保と生活基盤の確立」を果たすべく、4月月内の解決をめざして、粘り強く団体交渉を展開していくこととすること等を確認しました。
○第9回戦術委員会(2002年4月24日)では、4月下旬段階での金属労協全体の回答状況を踏まえて、2002年闘争の課題整理を行いました。

(2) 労使の主張点

@ 経営側の主張


○日本経済は、過去に例をみないような厳しい状況にあり、日本の製造業は生産拠点としての危機に立たされている。
○あらゆる面で競争力を再生することが最優先課題であり、総額人件費の適正化を果たすべきである。
○国際競争力の再生と雇用確保のための企業基盤強化を最優先すべきである。
○2年連続のマイナス成長、加えて消費者物価上昇率は3年連続マイナスであり、賃金を引き上げる理由はない。
 【具体的要求課題について】
1) 雇用

 ・会社施策の制約につながる協定締結には慎重にならざるを得ない。
2) 賃金構造維持分
   ・1年ごとに必ず賃金が上がっていくことそのものの考え方を問い直す時期である。
   ・現行賃金制度の維持すら困難であり、賃下げをも検討せざるを得ない。
3) 賃金引き上げ(ベア)
   ・労務コストへの影響の大きい賃金を引き上げることは競争力の低下につながり、賃金をこれ以上引き上げるべきではない。
   ・デフレ経済下、実質賃金は維持しており、賃金を引き上げる必要性はない。
4) 一時金
   ・過去からの連続性よりも、現時点の会社実態での適正水準を根元から検討すべきである。
   ・安定部分の確保など到底応えられる状況にない。
5) 60歳以降の就労確保
   ・60歳までの雇用を守ることが最優先課題である。

A 労働組合の主張

○デフレスパイラルの阻止と景気の底支えをめざし、組合員の「雇用の維持・確保と生活の安定」を確立することが今次闘争の重要な役割である。
○政労使は総力を挙げてデフレスパイラルからの脱却を図らなければならず、そのためには、雇用安定に向けた労使の役割発揮が求められている。
○雇用不安の払拭と同時に、賃金構造維持分の確保を図ったうえで、更にベアを実施し、生活の将来不安を払拭していくことも労使の責務である。
○組合員の雇用・生活を守るのは経営の責任であり、生産性の向上等によって収益を確保している以上、ベアなどの要求に応えることは当然の経営の責任である。そのことが健全な労使関係の維持・発展につながり、経済・社会の発展の前提となる。
○今後とも産業・企業が発展していくためには、高付加価値化による競争力強化が不可欠であり、それを支える勤労者の労働条件確立が重要である。
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U.2002年闘争の評価

1.要求を振り返って

(1)「雇用の維持・確保」を共闘の柱の一つとして取り組みを推進


 2002年闘争においては、「雇用の維持・確保のための枠組みづくり」を取り組みの柱のひとつとしました。春季総合生活改善闘争の枠組みの中で、「雇用」を取り上げることは、完全失業率が5%を超え、雇用を軽視する風潮が強まるなど、雇用の危機的な状況に歯止めをかける観点からの取り組みであり、金属労協の労使が雇用の維持・確保を図るのみならず、社会全体に雇用の重要性を訴える意義を持つこととなりました。
 また、この取り組みによって、産別・企業連・単組の各レベルで雇用の維持・確保のためのあらゆる方策について論議をすることは、労使協議を充実させ、「労使合意による社会的合意形成」に向けた下地づくりを図る観点からも、重要な取り組みとなりました。

(2) 取り組みの幅を持ちながらJC共闘を推進

賃金の取り組みについては、デフレスパイラルぎりぎりにある日本経済の状況や、危機的な雇用状況、産業・企業動向の違いを踏まえて、「ミクロ産業事情主軸・マクロ経済動向加味」の考え方のもとで、幅を持った取り組みを行うこととしました。
JC共闘共通の取り組みとしては、組合員の生活の安定を図り、デフレスパイラルを阻止する観点から、「賃金構造維持分の確保」に取り組みました。金属産業を取りまく環境が厳しさを増すなかで、「賃金構造維持分の確保」という現行の賃金水準を維持するための最低限の取り組みとなりました。
また、当該産別の産業動向を見据えた上でベア要求を行う組合に対しては、「純ベア1,000円」の要求基準を示しました。連合は、今次闘争における賃金の統一要求基準について「賃金カーブ維持分+α」として、「産業別部門連絡会との調整の上、各産別が設定する」こととしました。こうしたことから、金属労協では、「JC共闘」として要求基準を示し、統一的にベア要求を行う産別や、企業業績を踏まえ、格差是正等のためのベア要求を行う単組に対して、連合金属部門としての役割を果たすこととなりました。
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2.回答と評価

 金属労協は、2002年闘争を「雇用を維持・確保し、生活の安定を図る」ための取り組みと位置づけました。そのための「雇用の維持・確保のための枠組みづくり」と「賃金構造維持分の確保」については一定の成果が得られ、組合員の生活を守るとともに、デフレスパイラル阻止のための労働組合としての一定の役割を果たすことができました。しかし、ベアについてはほとんどの組合で獲得できず、一時金においても年間4カ月を下回る組合が半数近くになるなど、ベアのあり方や一時金水準など多くの課題を残すこととなりました。

(1) 雇用の維持・確保のための枠組みづくり

今次闘争では、「雇用の維持・確保のための枠組みづくり」を取り上げたことによって、産業・企業基盤整備に向けた政策・制度課題、産業政策課題を含めて、従来以上に産別レベル、企業連・単組レベルにおける労使協議の充実を図ることができました。
また、集計対象A組合においては、産別レベル、企業連・単組レベルなどで、取り組みの違いはあるものの、ほとんどの組合において、「経営として雇用の維持・確保に最大限の努力をしていく」旨の雇用の維持・確保に向けた労使確認を行うこととなりました。これは、経営側として組合員の切実な思いに応えたものであるとともに、金属各産業の経営者としての決意と姿勢を社会的に示したものといえます。
雇用軽視の流れに歯止めをかけ、雇用の維持・確保の基本的な枠組みを強化するとともに、デフレスパイラル阻止に向けた底支えの取り組みとしては、今次闘争の目的を達することとなり、この取り組みによって雇用に対する社会的な役割を果たすことができたと評価できます。

(2) 賃金・労働条件の取り組み

@ 賃 金

 1) 賃金構造維持分

集計対象A組合のほとんどの組合では、定昇の実施等によって賃金構造維持分を確保し、現行賃金水準を維持することができました。デフレスパイラル阻止に向けた底支えの取り組みとして一定の役割を遂行することができたと評価できます。しかし、金属労協全体でみると、14%程度の組合で賃金構造維持分を確保することができず、今後の取り組みに課題を残すこととなりました。
金属労協全体でみると、回答・集約組合2,679組合のうち、現時点で賃金構造維持分確保を判断できる組合では、純ベア確保組合が167組合、賃金構造維持分確保組合が810組合、賃金構造維持分が確保できていない組合が366組合となっており、回答・集約組合のうち14%程度の組合で賃金構造維持分が確保できていない状況にあります。
なお、賃金制度上、定期昇給制度または賃金構造維持分が明確化されている組合は金属労協全体で4割程度に過ぎない現状にあります。今次闘争では、現行の賃金水準を維持するためのぎりぎりの取り組みとなった組合が多かったことから、定期昇給制度を含む賃金構造維持分の明確化や、賃金制度整備の取り組みの重要性が改めて浮き彫りになりました。

2) 賃金引き上げ(ベア)
ベア要求については、産業状況を踏まえて自動車総連と造船重機労連を中心に取り組みを行いましたが、残念ながらほとんどの組合でベアの有額回答に至ることができませんでした。
業績が好調な組合においてもベア回答を引き出すことができなかったことについては、国際競争が熾烈を極めているなかで、経営側としては、将来に向けたわが国産業・企業の国際競争力維持と企業の生き残りを図る観点から、ベア拒否の姿勢を貫いたものと考えられます。今後、デフレ経済とグローバル経済のもとでの賃金引き上げの要求根拠や共闘体制のあり方など、総合生活改善闘争のあり方について検討を深めていくこととします。

A 一時金

集計対象A組合では、74組合が要求を起こしましたが、回答を引き出した73組合中、昨年と比較可能な55組合でみると、月数または金額で昨年を上回ったのが12組合、横ばいが9組合、下回った組合が34組合となっています。他に業績連動による決定組合が14組合となりました。産業・企業による業況の違いを反映して、一時金水準を回復した組合が増加する一方で、かつてない水準にまで低下した組合も多く、課題を残すこととなりました。電機連合・全電線では、産別のミニマムの考え方に基づき、強力な取り組みを進めた結果、それぞれの産別ミニマム基準である年間4カ月を確保することができました。
金属労協全体でみると、年間4カ月未満の組合が半数近くを占めることとなりました。金属労協では、一時金のうち生計費の固定的支出部分が約8割(4カ月)程度あることを念頭におきながら取り組みを行っていますが、年間総賃金としての一時金水準の安定確保に向けて、従来以上の対応が必要となっていると考えられます。

B 60歳以降の就労確保

金属労協全体でみると、60歳以降の就労確保が図られた組合は、2001年闘争後の888組合から、2002年5月下旬段階で1,004組合へと116組合増加しています。
また、鉄鋼労連、造船重機労連では、集計対象A組合を中心に実施時期の確認や具体的な条件整備に入るなど、前進が図られました。
雇用問題が深刻化する状況のなかで、前進回答を引き出したことの意義は大きいものがあります。今後さらに社会全体のセーフティーネット確立の観点を含めて、取り組みを強化することとします。

C その他の取り組み

 電機連合では、18歳最低賃金協定の水準を1,000円増額し149,500円としました。均等処遇に向けた一歩として評価されます。
 全電線では、通勤途上災害を死亡・1〜3級で、有扶者1,600万円、無扶者1,500万円と要求に沿った回答を引き出し、新たな制度を確立することとなりました。

(3) 政策・制度の取り組み

  今次闘争では、「労組代表者交流集会」を「ガンバロー ものづくり・製造業『2002年闘争推進集会』」として開催し、金属産業をはじめとする「ものづくり・製造業」の重要性と金属産業の抱える課題についてアピールしました。
また、「雇用の維持・確保」を今次闘争で取り上げたことは、国際競争力強化を支えるための産業・企業基盤整備も含めたあらゆる方策について、産別レベル、企業連・単組レベルにおいて、労使協議の充実が図られることとなり、ものづくり産業・金属産業の維持・発展に向けて、JC共闘全体での取り組みを進展させることができました。労使合意による社会的合意形成の取り組みと併せて、政策・制度の取り組み強化につなげていくこととします。
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V.2002年闘争で示された課題と今後の取り組み
 
取りまく環境が大きく変化するもとで取り組んだ2002年闘争において、わたしたちは、これまでの運動そのものに関わる重要な課題を抱えることとなりました。今次労使交渉の経過を改めて振り返ると同時に、回答内容を見つめ直し、今後の取り組み方向を見定めていく必要がでてきています。
 各産別によって受け止めに違いはあるものの、少なくとも示された課題については共有をしていかなければなりません。わたしたちは今後とも、JC共闘を闘争の母体としてその強化を図り、あらゆる課題の克服に向けて、果敢に取り組みを推進していくことを改めて相互に確認しておくこととします。
 以下、取り組み項目ごとに課題をまとめ、今後の取り組みの展開について一定の方向を整理し、JC共闘の一層の強化を図り、新たな闘争基盤の確立を推進していくこととします。

1.グローバルな市場経済化の進展における環境条件の変化

わたしたち自身、取りまく環境条件の変化をどのように受け止めるのか。また、どのような観点から、今後、成果配分としての労働条件決定の枠組みを組み立てていくかが、最も重要な対応の視点と考えます。
今次交渉において経営側は、「物価が下がっているなかで、ベアの必要性はない」などと主張、デフレ経済下のベアを否定するとともに、「経営の立場から国内において産業・企業基盤を守っていくためには、これ以上の賃金の引き上げはすべきでない。産業・企業基盤の確立が最優先課題である」等、グローバルな市場経済化の進展のもとで国際競争力強化の観点を特に強調しました。
輸出型産業である金属産業は、世界の工場と呼ばれるに至った中国の追いあげによって、国内外における競争が激化しており、こうしたことが経営側の姿勢に繋がっていると受け止められます。各産業によって構造的課題の表れに違いはありますが、全体としてみれば課題の共有化はできるものと考えます。
今後とも、経済・社会の変化に適応した運動基盤を確立すべく、果敢に取り組みの改革に挑戦していかなければなりません。
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2.取り組み項目別の課題整理

(1) 雇用の維持・確保をめざした協定締結等の取り組み

今次闘争における雇用の維持・確保の取り組みは、雇用状況が危機的な状態にあるもとで組合員の雇用不安を払拭すると同時に、社会的な雇用軽視の流れに歯止めを打つべく取り組みを展開したものです。しかし、それは成果配分のひとつとして要求を起こしたものではありません。雇用の維持・確保は労働組合だけでなく、経営側にとっても根源的なものであり最も重視しなければならないものだからです。
今後は、多くの労使間で雇用の維持・安定に向けた協定締結や労使確認を得たことを踏まえ、その成果に実効性をもたせることが課題となります。その最大のカギは産業・企業基盤の確立にあることは云うまでもありません。労働組合としても産業全体の構造的な諸課題を的確に把握し、まちがいのない対応を経営側に求めていくことは当然の取り組みとなります。わたしたちはそのためにも産別レベル・企業レベルでの労使協議の一層の充実・強化を図るとともに、経営チェック機能をより高めていかなければなりません。また、金属労協として、新たな労使フレームワーク構築をめざすとともに、産業・企業基盤の確立に向けた政策・制度の取り組みを強力に推進していきます。

(2) 賃金構造維持分確保の取り組み
  
わたしたちは、これまで毎年ベースアップの要求を起こし、経営側に対して賃金水準の引き上げを求めています。しかし、その取り組みは、定期昇給やその相当分を区分しない平均賃上げ要求が主力となっていると同時に、定昇制度が未確立の組合が多いことや、賃金構造維持財源の峻別ができない組合が未だ金属労協全体で6割を占めるなどの課題を抱えています。
今次の取り組みは、多くの組合がベア要求を見送ったこともあって、改めてそうした課題が浮き彫りとなったと考えます。人件費を抑制したい経営側への対応として、現状の賃金水準を確実に維持・確保するためにはこうした賃金制度の整備が不可欠の取り組みとなります。また、一方で、今次交渉では定昇制度そのものの見直しについても提起された組合が少なからずあり、今後こうした経営側主張がさらに顕在化してくることが考えられます。
わたしたちは、生活の安定を図りつつ、働きがいのある賃金・処遇制度のあり方について理論整理が必要とされており、「賃金・労働政策」の見直し・補強を含め、的確な対応を進めていかなければなりません。

(3) 賃金引き上げの取り組み
 
 金属労協は連合の要求方針を踏まえ、JC共闘として要求基準「純ベア1,000円」を設定しました。これは2001年の闘争方針でも提起した通り、「現状においてはマクロ経済論的な要求根拠を持ち得ないことから、共闘毎に産業・企業状況を主軸にした闘争推進に切り替えるべき」との考え方に基づいたものであり、共闘推進の役割として決定したものです。
  交渉において経営側は、日本全体の高コスト体質に対する危機意識を表明し、「国内において産業・企業基盤を守っていくためには、これ以上の賃金の引き上げには応じられない。まず産業・企業基盤の確立が最優先課題である。また、物価は下がっており実質賃金はすでに確保している」等の主張を展開し、ほとんどの組合において要求に応えませんでした。
  こうした回答に対する受け止めは、産別のおかれている状況によって相違するものの、自動車・造船に対する回答は、日本全体の賃金交渉課題として受け止められます。今後ともわたしたちは、JC共闘を基軸に、より闘争の推進の強化を図っていかなければなりません。グローバルな市場経済化の進展のもとで、国内外の企業間競争は熾烈を極めており、国際競争力と労働条件の関係など難しい課題はありますが、闘争推進の大きな転換点にあることは間違いなく、わたしたちはこうした認識をもとに、今後の闘争推進のあり様について検討を深めていくこととします。

(4) 一時金の取り組み
 
 「企業業績を踏まえた成果配分については一時金で対応する」との経営側主張のもとで、一時金水準の回復を図った組合がある一方で、4カ月を下回る組合が金属労協全体で半数近くを占めるなど、大きく水準が低下することとなりました。企業業績の悪化が、一時金へのしわ寄せとなって現れたものと考えられ、一時金水準の安定確保に向けた対応が喫緊、かつ重要な課題になったものと認識します。
  組合員の生活安定にとって、一時金水準の大幅ダウンは大きな影響を及ぼします。それだけに今次闘争の経過からして、一時金水準の要求基準だけでなく、最低獲得水準の設定などミニマム的な視点での取り組みが必要になります。また、賃金を含めた年間総賃金としての考え方も検討視点にいれておかなければなりません。JC共闘として今後どのように一時金の取り組みを展開していくのか、早急に検討をしていくこととします。
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3.「緊急労務対策」など逆提案への対応

2002年闘争は、一方で交渉途上あるいは回答直後において、企業側から「緊急労務対策」の観点から、賃金カット、定昇の延期、時間外労働割増率の引き下げなど、賃金抑制の逆提案が金属各産業において相次ぐ状況となりました。これは、各企業が環境条件の大きな変化のもとで、それだけ追い込まれている証左ともいえますが、春闘は翌年1年間の労働条件を決定する交渉であり、こうした期間中に労働条件変更を求める企業側の姿勢は、望ましいものではありません。
春季生活改善闘争と明確に切り離すとともに、期間を限定することを基本に対応していくことを確認しておくこととします。
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4.JC共闘強化のための今後の取り組み展開について

金属労協は、総合生活改善闘争の中心的な役割を担う共闘組織として、適宜かつ的確な闘争の改革を推進してきています。95年闘争からは「個別銘柄別賃金決定」に本格的に着手し、2000年闘争からは要求根拠にトレンドとしての付加価値生産性を加えてきました。また、2001年の闘争方針では、取り組み環境の構造的な与件変化のもとで「従来通りの春闘の単なる継続は困難である」との課題を提起し、産業部門別共闘の確立の必要性を提起すると同時に、要求の考え方をマクロ経済準拠から産業・企業主軸へと切り替えてきました。しかし、今また闘争を取りまく環境は、時代的に大きな転換点を迎えていると考えざるを得ません。
2002年闘争は、その一大契機をわたしたちに示しています。産別毎にも様々な課題をもっていますが、金属産業全体として見るならば、それは国内外の企業間競争の激化に起因した共通の構造的課題として受け止められます。わたしたちは、2002闘争で示された課題を深堀しつつ、JC共闘基盤の強化と共に、新たな共闘軸の構築をめざし取り組みを進めていくこととします。

(1) 取り組み環境の変化と対応について

2002年闘争は、グローバルな市場経済化の進展による企業間競争の激化や、低成長が続くもとで、今後どのように成果配分を求めていくかの課題を突きつけました。また、消費者物価上昇率が3年連続でマイナスとなるなどデフレが深刻化しており、デフレ経済下における労働条件決定のあり方についても、早急な対応の検討が必要とされています。
それは賃金闘争を中心とした、従来型の取り組みの見直しを迫るものといえます。同時にそうした変化は、JC共闘に対しても新たな共闘軸の構築を迫っているものと受け止めます。
  金属労協はこうした観点から、経済・社会の成長と労働の質にふさわしい賃金引き上げは不可欠との考え方を堅持しながら、これらの環境下における総合生活改善闘争のあり方について、十分な議論を尽くした上で取り組みの展開方向を見定めていくこととします。

@ 絶対額水準重視の取り組みと金属産業の賃金水準回復に向けた取り組みについて

経営側は、国際競争力の観点から、日本の賃金水準は国際的に見て高すぎるとの主張を強めています。しかし、賃金構造基本統計調査によれば、金属産業の賃金水準は全産業平均の95%程度にあり、低位におかれているといえます。
金属産業の発展には、技術・技能の継承・育成による高付加価値化によって国際競争力を強化していくことが必要であり、そのためには、国内立地の追求と高付加価値化を支える勤労者の労働条件確立を図ることが不可欠です。
絶対額水準を重視した取り組みを強めることによって、金属産業の賃金水準の回復を図るべく、取り組みの展開を図っていくこととします。

A 賃金制度の整備による定昇制度確立と賃金構造維持分確保の取り組み

賃金構造を維持する取り組みは、今後においても重要な取り組みになります。しかし、6割の組合で定期昇給および賃金構造維持分が明確化されていない状況にあり、この取り組みを進めるための態勢は決して整っているとはいえません。定期昇給制度のあり方について理論整理を行い、賃金制度の整備を通して取り組みの強化を図るべく、各産別の指導のもとで対応を進めていくこととします。

B 個別銘柄別賃金決定方式の強化と大括り職種別賃金水準の形成に向けて

経済・社会の変化のもとで、雇用移動が増加するなど労働市場は大きく変化をし始めています。また、パートタイマーなどの非典型雇用労働者も2001年2月調査で1,360万人まで増加をしてきており、こうした就業構造の変化は、従来に増して社会横断的な労働条件の形成を必要としているものと考えます。大括り職種別賃金形成の考え方は、こうした変化への対応として提起してきたものであり、その実現のためには個別銘柄別賃金の取り組みをさらに強化していく必要があります。今後、個別銘柄のあり方など一層の取り組みを推進していくこととします。

C 一時金水準の安定確保にむけた取り組みの強化

経営側は、成果については一時金で配分するとの主張を展開しているものの、金属労協全体では大きく水準が低下しています。これは、企業業績の悪化が影響していると考えられますが、大幅な水準の低下は組合員の生活不安に直結するだけに、その安定確保に向けた取り組みの強化が必要となっています。年間総賃金の視点や最低獲得水準の設定など、取り組みの一層の強化を図っていきます。

D 労働時間短縮の取り組み

失業率が5%を超えるなど、厳しい雇用情勢が続いており、金属産業においても雇用調整が行われている実態にあります。雇用の維持・確保にとって、労働時間短縮の取り組みは極めて大きな意味を持っており、年間総実労働時間短縮を含め、今後さらに重要な取り組みとして強化していく必要があります。
また、仕事と家庭を両立しながら、ゆとりある豊かな生活を可能とするライフスタイルの実現の観点からも、労働時間短縮に向けた取り組みが不可欠です。
金属労協は、「年間総実労働時間1,800時間台」の達成に向けて取り組みをすすめてきましたが、ここ数年、労働時間短縮は足踏み状態となっており、今後の労働時間に対する考え方について再整理を行い、取り組みを強化していくこととします。


(2) 格差是正の取り組み展開

  グローバルな市場経済化が進展し企業間競争が熾烈を極める中で、各企業は自企業の収益力をより高めるため、コスト削減の追求やこれまでの取引慣行を見直す動きを強めており、そうした動きが特に中小企業に影響を与えています。また、金融機関は、中小企業切り捨てとも思えるような強引な不良債権処理をすすめており、中小企業は企業体力の限界に近いところまで追い込まれている状況にあると認識されます。
  こうした状況は、労働運動面にも影響しており、ここ数年来、労働条件の格差は残念ながら拡大を続け、現状においては雇用を維持・確保するのが精一杯、もしくはそれもままならない企業が増加し、労働条件の維持・向上になかなか手が回らないのが実態といえます。
これまでは良好なマクロ環境条件を背景に、上位平準化を基本に格差是正に取り組んできましたが、すでに限界がでてきており、新たな取り組みの確立が求められています。今後はそうした方途に加え、標準労働者の最低到達目標水準の設定や、最低賃金協定、法定産業別最低賃金など、ミニマム運動の観点からも、一層の取り組み強化を進めます。
また、格差是正を進めていくためには、公正取引の確立に向けた不断の対応が不可欠であり、その確立には労働組合の組織力を生かした取り組みが必要となっています。
今後さらに格差是正のための取り組みを強化すべく、各産別の問題意識を糾合し、問題点の掘り起こしや格差要因の分析を行うなど、対応を練っていくこととします。

(3) 企業内最低賃金協定の締結促進など、最低賃金の枠組み強化への対応
  
企業内の最低賃金協定の取り組みは、各産別とも課題を共有化し意欲的に前進をめざしているものの、協定締結の取り組みはここ数年来、あまり進展を見せていない実態にあります。
  一方、日経連に代表される経営側は、法定産業別最低賃金などコスト削減を阻害する社会的な規制を撤廃する主張を強めてきており、わたしたちはこうした動きにも対応していく必要があります。最低賃金協定の締結は、今後のミニマム運動のベースともなる取り組みです。また、労働市場における賃金の最低規制である法定産業別最低賃金とも繋がるものだけに、今後、一層の取り組みの強化をしていかなければなりません。

(4) 金属産業の競争力強化に向けた政策・制度課題、産業政策課題の取り組み強化

  経営側は、国際競争力の観点から、労務費を含む高コスト是正の必要性を主張し、「日本は製造業の生産拠点としての危機に立たされている」として、賃金水準の抑制姿勢を最後まで崩すことがありませんでした。
しかし、日本の高コストの要因は、主として規制に守られている部門に起因していると考えられます。内外価格差の是正は、国際競争にさらされている金属産業共通の課題であり、国際競争力強化に向けた規制の整理・撤廃、政策・制度課題の取り組み強化を図っていきます。また、技術・技能の継承・育成などによる、ものづくり産業強化など、産業政策課題の取り組みについても強化していくこととします。

(5) JC共闘の推進と課題
 
連合は、賃金の要求基準を「賃金カーブ維持分+α」とし、「+α」については、産業別部門連絡会との調整の上、各産別に委ねる方向を打ち出しました。これは、金属労協が従来から主張していた部門別連絡会の運営強化と文字通り軌を一にしたものであり、JC共闘は部門別共闘の先導役として、役割と責任を負うところとなりました。今後さらに、連合および産業別部門連絡会の役割を明確化し、春季生活改善闘争における部門別共闘を強化していく必要があります。
一方で、今次闘争は、グローバル経済下における労働条件決定のあり方について多くの課題を突きつけたものと受け止めます。今後、環境条件の変化を踏まえた新たな共闘軸の構築など、JC共闘の更なる強化に向けて検討を続けていくこととします。

以 上
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