OECDで労働者の権利と公平な競争環境めぐり議論
2024-10-31
OECDは、脱炭素化が造船業にもたらす課題、中国の台頭、紅海危機に起因する世界貿易の混乱で、市場がゆがめられることを懸念している。
OECD造船委員会は10月30日、世界の造船業が「バランスと競争力」を保ち、不当な国家的支援などの要因によってゆがめられないようにするために、造船部門の公平な国際競争環境に関するワークショップを開催した。
国際海事機構は2050年までに海運業のネットゼロ達成を目標に掲げており、2025年4月の海洋環境保護委員会(MEPC83)で、中期的な対策――この目標の達成に向けた経路――に合意しなければならない。
代替燃料について合意しておらず、今後の軌道は特定の燃料に投資するという大手船会社の決定に左右されるため、これは造船会社に課題をもたらしている。多くの船主はLNGを移行燃料として利用しているが、これはメタン排出量が多いためグリーンソリューションではない。
環境に優しい燃料は、運賃――ある場所から別の場所へ貨物を運ぶ費用――を80%上げると予想される。
OECD加盟国にとって最大の懸念は、造船超大国としての中国の台頭だった。総トン数で見て、世界の船の過半数が中国で建造されている。中国の船は国家的支援を受けて生産されており、競争をゆがめている。
インダストリオールは労働者の見解を示した。組合にとって、公平な競争環境を損なっている最大の要因は、労働者の権利と条件である。組合は、次のようなものが優れた慣行であることに合意している。
- 高い安全基準
- 競争力のある賃金と良好な労働条件
- 基幹労働力への投資
- 訓練と造船業への参入ルートの提供
- 移民労働者・契約労働者の平等待遇
しかし、最良の慣行にはコストがかかる。企業と国は、基準を下げることによって短期的な費用優位を得る。組合の力が強い国は最良の慣行を支持する可能性が高いが、それによってコスト面で不利になる。OECD諸国の中にも違いがあるが、OECD諸国と非OECD諸国(特に中国)との違いのほうが大きい。
中国は造船にかかる人件費が世界で最も安く、ドイツの7.4分の1である。中国は結社の自由と団体交渉に関する中核的ILO条約を批准しておらず、中国には自由労働組合がない。労働者には権利がないので、中国は競争相手より安いコストで活動している。
USWのロイ・ハウスマンとIAMAWのピーター・グリーンバーグが会合で演説、米国政府に301条の発動を要請するという両組合の決定について説明し、国家的支援、知的財産窃盗、労働者の権利の欠如によって中国は優位に立つことができていると主張した。両組合が提案した救済措置の1つは、中国製の船に対する港湾料金である。
ウォルトン・パントランド・インダストリオール船舶解撤産業担当部長はこう述べた。
「造船委員会には高い労働基準を支持しようという善意がある。しかし、これは中国が労働者の権利を尊重しないために損なわれている。アメリカの組合はこの問題の興味深い解決策を持っているが、労働運動はグローバルな対応を行う必要がある」
インダストリオールは、最良の慣行について合意するために、ILO部門別技術会合の開催を提案した。
【原文記事URL】
https://www.industriall-union.org/workers-rights-and-a-level-playing-field-at-the-oecd