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2002年闘争をとりまく情勢

5.国際労働運動の動向

1.IMF(国際金属労連)
2.欧州
3.北・南米
4.アジア
5.太平洋諸国

1.IMF(国際金属労連)

1.2001−2005年IMFアクション・プログラムの採択
2001年11月にオーストラリア・シドニーで開催されたIMF世界大会では、次期世界大会までの4年間の運動方針である「2001−2005年IMFアクション・プログラム」が提案され、採択されました。IMFアクション・プログラム2002−2005年は、「第1部はじめに」、「第2部IMFの使命」、「第3部IMFアクション・プログラム」、「第4部要約」からなっています。
アクション・プログラムの主な内容は、『多国籍企業のグローバルな勢力に対抗できるように、IMFがグローバルな組合組織機構を確立し、世界中どこでも全レベルで行動を調整・指示できるようにする。また、他のITSとより緊密な協力関係を積極的に追求する。IMF世界協議会の再編成、IMFモデル多国籍企業行動規範の取り組みを継続し締結をめざす。地域間活動の確立、組合統一と国別協議会の設置を目指す。各国の労働組合が選んだ教育担当者グループに訓練や資料を提供する。情報ニーズの高まりに応えるために、加盟組織と提携して情報・通信システムを確立する。国際キャンペーンを支援する書記局の能力を増強するとともに、効果的な国際キャンペーン実施方法の立案を促進する。 未組織労働者に焦点を当て、輸出加工区における労働者に重点を置いて組織化を進める。組合員の確かな生活水準を提供する労働条件と良い賃金をもたらす団体協約の締結へ組合を支援して行く。進歩と社会正義を希求する他の団体との対話を促進し、提携関係を確立すべく努力する。他の国際労働団体とともに代替的経済プログラムを立案し、その実施を求めて働きかける。ICFTUやTUACを初めとする他の労働組合機関とともに、WTOとブレトンウッズ機関の改革ならびに為替取引税の採用を求めるキャンペーンを実施する。加盟組織がILO条約に定める差別と闘うとともに、特にIMF活動への女性参画を改善し、団体交渉への女性参加を奨励するために講じることのできる具体的措置を取り決める。』というものです。

2.組織人員の拡大
シドニーIMF大会で確認された組織人員は、101カ国、207組織、2,480万人となりました。今回の新規加盟組織は、アジアからは後述のタイとインドネシアのみでしたが、ここ数年来の動きを反映してCIS諸国(ロシアおよびウクライナ)と東欧諸国で飛躍的に増加しています。また、メキシコでのIMF組織化プロジェクトが稼動を開始した結果、2組織があらたに加盟しています。欧州の組織ではフランスのFTM−CGTが加盟し、フランスの金属産業でのIMFの影響力の強化に期待が高まっています。

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2.欧州

(1) EMF(欧州金属労連)による共同交渉戦略の進展

2001年6月20−21日、ノルウェーのオスロで第4回EMF団体交渉会議が開催されました。ここでは欧州レベルでの金属産業の団体交渉の調整戦略について討論が行われました。この戦略は1998年12月にフランクフルトで開催された第3回会議で採択された各国別の団体交渉政策の欧州レベルでの調整に関する「調整規則」が基礎となっています。
欧州での単一通貨導入を目前にして、ユーロ導入による比較可能性の増加、競争圧力の強化から、経営側の費用削減の標的がもっぱら賃金や雇用・労働条件に向けられるのではないかとの労働組合の懸念があり、各国別の交渉が労働費用の削減を目的とした賃金交渉の下方スパイラルに陥ることに対する対策として戦略が練られています。
その団体交渉戦略とは、@各国の団体交渉政策と統合された戦略の決定を調整する地位にEMFを発展させる、AEMF加盟各組織が企画する団体交渉政策の定期的な情報交換と調整を行う。また欧州レベルで調整された枠組みで、各国レベルでの交渉を行う、B欧州産業同盟およびETUC(欧州労連)との協力と調整を強化する、Cデモやストライキでの共闘や国際行動の可能性を拡大させるためEMF加盟組織間の課題や労使紛争に関する情報交換をより緊密に行う、D団体交渉への参加者や交渉担当者の交流の実施をより拡大して行う、EEMFを代表する団体交渉参加者による汎欧州的地位についての企画を行う、の6点です。
第4回会議ではその「調整規則」に対する評価が行われました。1999年から2001年までのEMF加盟各国の団体交渉結果(図表40)に基づき欧州レベルでの共同交渉戦略の進展に際する問題点が挙げられました。第一に、数量であらわすことのできない成果についての直接的な比較に問題があるという点。EMFは団体協約においては購買力を維持し生産性向上へのバランスのとれた協力について言及していますが、職場委員の権利や企業への労組のアクセス、またはドイツに見られるような早期退職制度の一部導入などが団体交渉の結果として得られる場合比較が困難となっています。第二に、団体交渉の行われるレベルによる相違も問題となっています。全国もしくは地域レベルでの交渉が基本的に行われている中、イタリアやデンマークなど、産業分野での全国レベルの枠組みの中で実質的な交渉が企業別に行われるような国や、イギリスなどのようにほとんど企業別の交渉のみが行われる国があることによります。第三に、欧州で要求を組み立てる上で重要視されているのが消費者物価指数上昇率や生産性などの経済統計ですが、団体交渉に利用される統計は各国によってまちまちであり、ユーロスタットやOECD統計など各国比較の可能な数値とも異なっていることが挙げられました。
団体交渉の結果については、物価上昇分と生産性向上分を満たしているかどうかが焦点となりました。1999年の結果では、イタリア、アイルランド、スペインおよびポルトガルが満たされませんでした。2000年の結果についてみると、オーストリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、イタリア、アイルランドおよびイギリスが満たしていませんでしたが、イタリアの場合、企業や工場での交渉が長引いたため上方に見直され、またオーストリアとポルトガルについても今後の詳細により上方修正されることになっています。ドイツとデンマークについては労働時間の削減や年金制度の改善を含めば実際の妥結水準はより高くなるとされています。
今後の展開として、EMFは加盟組織が行っている近隣諸国との独自の共同交渉政策を、団体交渉の欧州化の進展に向けて促進するものとして重要視し、さらに加盟組織の努力が重要であるとしています。また、欧州での労使紛争などストライキ突入やそれに近い状況に対応するための情報交換体系を整備し、欧州レベルの同情ストライキの可能性の検討を含めた、EMFの支援をより公式な方法で強化していくとしています。また、欧州での賃金の下方スパイラルへの突入を防ぐため賃金やその他の労働費用とみなされる項目へ焦点をあてつつ、職業訓練や退職制度など賃金以外の項目との連携を深めていくとしています。
最後に、EMFが欧州レベルでの財政や通貨なども含めた経済政策を策定していくことの必要性と欧州中央銀行などとの対話を模索していくことが強調され、この報告は「労使関係の各国制度は各国の文化や歴史に基礎を持っており、これからもそうである。各国制度間の相違は今までと同様に存在していくであろう。このことは過去3年間に変化はなく将来においても決定的であろう。しかし変化したことといえば、調整が必要であるということをEMF加盟組織が深く認識したことである。このことは将来のEMF調整規則発展の基盤となる」と締めくくられました。(図表40)

(2)フランス

1.最低賃金制度の動向
政府はSMIC(法定最低賃金)を4.05%引き上げる方針を決定し、6月25日、ギグー雇用連帯相が主宰する団体交渉全国委員会の席上、労使代表に伝えました。
フランスの法定最低賃金は、消費者物価と賃金購買力の動きをもとにした一定の計算方法に従い改定されますが、政府は、この自動的に算出される改定幅よりも高く決定できる権限を有しています。今回、5月の消費者物価上昇率と1−3月期の賃金購買力の伸びから算定された自動的な改定幅は3.76%でした、政府は、それに経済成長の報酬として0.29%上乗せし、過去10年間で最大の4.05%の引き上げを決定しました。この改定により、法定最低賃金(税込み)は、週39時間労働者で、1時間当たり43.72フラン(月換算で7,288.68フラン=約12万円強)となります。
今回の改定については、フランス経済が3年連続で3%前後の安定成長を達成していることから、その配分として労働組合や左派政党は大幅な引き上げを要求していましたが、政府は、物価上昇率は今後落ち着くと予想されることや雇用手当の支給が9月に始まることから、慎重な姿勢を崩しませんでした。
時短法第1法の発効から3年が経過した現在、すでに週35時間労働が適用された労働者については、その移行時期によって3つの最低賃金が並存しています。これは、時短による最低賃金の目減りを避けるため、週35時間へ移行した労働者の最低賃金を移行時点の週39時間労働者の最低賃金に固定(月額ベース)するよう時短法で定めたことによります。したがって、週35時間労働者の最低賃金については、最終的に週39時間労働者のものに収斂させるため(時短法により2005年までに最低賃金の統一が義務づけられている)、改定率は低く設定されます。今回も週35時間労働者については、改定率は政府の上乗せ分も含め2.85%とされました。これにより、たとえば、1999年7月〜2000年6月までの間に週35時間へ移行した労働者については、月額7,180.43フランとなります。
なお、上述の雇用手当とは、近年創出された雇用の大部分がSMICの1.3倍以下の賃金であり、また全国でこのSMICの1.3倍以下の賃金の労働者が40%程度を占めていること等を背景として、低所得者家計を援助するとともに、雇用を促進するという目的で創設されました。具体的には、家族の少なくとも1人が働いていて、かつ所得が一定限度内にある家計に支給されます。これまで住宅手当名目などで低所得者家計を援助していたものを、雇用に関連付けて支給する形に改組したものです。このため、政府は400億フランの支出を決定しています。

(3)ドイツ

1.IGM(金属産業労組)が訓練に関する協約を締結
 2001年6月、IGMは、ダイムラークライスラー、ボッシュ、ポルシェ、ABBといった多数の著名な金属関連会社の製造工場があるバーデン・ヴュルテンベルク地域で、資格取得・上級訓練に関する労働協約を締結しました。
 この協約は、「すべての従業員には、使用者と定期的に評価会合を開き、資格取得措置や上級訓練の必要性を判断する権利がある」と定め、この訓練に係る費用はすべて会社側が負担することとしています。また、「個人で資格取得措置を受ける場合、従業員は限定的に休暇を取得する権利を与えられるが、この個人訓練の費用は自分で支払わなければならない」との規程もあります。この協約は工場の従業員全体を対象とし、細目については各工場で取り決められます。

2.金属産業労組(IGM)とフォルクスワーゲンの団体交渉
IGMとフォルクスワーゲン経営側との間の交渉は、2001年6月に会社側の提案に対する組合側の反対により決裂し、8月27日再開しました。今回の団体交渉では、「VW5,000×5,000」プロジェクトを焦点にして行われ、同月27−28日にわたる交渉の末、クラウス・ツヴィッケルIGM会長が「組合にとって成功」であると宣言した内容で合意されました。
この新たな企業別協約は、当初会社側から「VW5,000×5,000」プロジェクトが公表され、賃金の追加支払い無しで週35時間労働から週48時間労働への引き上げるという案に対して、ツヴィッケル会長が教育訓練時間を含めて週40時間以上の労働は受け入れない姿勢を示し、現行の週35時間労働と地域賃金協定に適合するように要求した結果、修正されたものです。この新協定には作業編成と権利について新たな項目を含んでいます。
この協約によると、新たに雇用される従業員は、これまでの固定勤務時間制(平均で週32−33時間)による週5日の3交替制ではなく、原則として週35時間の可変勤務が適用されます。また、シフト交替や受注状況に応じて週7時間、年間200時間までの労働時間延長が認められることになります。超過時間は個々の従業員の「勤務時間口座」にカウントされ、会社側はこの口座の残り時間を利用することで、必要ならば土曜日の3交替勤務も可能となります。夜間・週末勤務手当は支給されませんが、ボーナスを含む月給として業界水準と同等の一律5,000マルク(約28万円、ただし当初の見習い期間中は4,000マルク)が支給されます。このほか、従業員の自発的な技術開発のための週3時間の超過勤務手当や個人の能力に応じた業績手当なども支給されます。
この他のドイツ国内の産業別協約は、金属産業においては2002年2月以降に協約期限を迎えることになっています(図表41)

3.雇用のための同盟
 ルフトハンザ紛争でパイロットの給与の大幅上昇があったことなどから、 2002年連邦議会選挙年の賃金協約交渉ではIGMなどが純然たる賃上げ闘争を行うとの発言とこれに反対する使用者側の発言があり、「雇用のための同盟」に影響することが懸念されていましたが、 このような状況を踏まえて、 BDA(使用者連盟)とDGB(労働総同盟)が2001年7月20日、 同盟維持を標榜する概略以下のような共同声明を発表しました。
 過去1年間に60万人の新たな雇用(金属電機産業だけで10万人)が創出されたことが確認され、 BDAとDGBが今後も過去の同盟の取り決めにしたがって訓練職と雇用の創出に努力することが謳われました。 また従来どおり職業上の資格付与に努め、 労働意欲と能力のある若年者に職業教育の場を提供し、 特に今後も協約並びに事業所レベルでこれらのことがさらに実施される期待が表明されました。
 超過労働については、 パートタイム雇用、 期限付き雇用の利用、 各種労働時間貯蓄等による労働時間の弾力化の利用によって、 これを今後も削減する努力を行うことが同意されています。 年金については、 公的年金を補充する事業所年金、 企業年金に関する年金改革法で、 事業所レベルでの年金拡充の可能性が開かれたことが述べられ、 2001年3月4日の「雇用のための同盟」の会議で表明された期待をさらに推し進めて、 協約交渉当事者が次の協約交渉までに、 協約レベルと事業所レベルでの年金規制について提言することの期待が強調されています。

4.フォルクスワーゲン労使が中核的労働基準に関する共同声明作成で基本合意
 VW(フォルクスワーゲン)経営側とVWグループ世界労使協議会、そしてIMF(国際金属労連)は、3者が2000年の年末までに社会的基準および労働者代表と経営者の協力関係に関する共同声明を準備することで合意しました。声明の項目はILO(国際労働機関)の中核的労働基準の実施と、労使協調型の紛争処理を含む世界的規模のフォルクスワーゲン人事哲学が基本となります。その内容はフォルクスワーゲンの労使協調哲学の基本原則を示すこととなります。2002年の上半期に開催予定のVWグループ世界労使協議会を機に、協定の最終的な議決が行われると考えられています。

(4)イギリス

5.最低賃金制度の動向
 政府は2001年7月、全国最低賃金を10月に引き上げると発表しました。16〜21歳の若年者向け最賃(時給)は現行の3.2から3.5ポンドへ、22歳以上の成人向け最賃は3.7から4.1ポンドへ引き上げられました。
 全国最低賃金制度は、1999年4月1日から実施されました。200万人に近い労働者がこの影響を受け、最低レートが導入された時点で、平均30%の賃金引き上げを得ました。全国最低賃金制度に関して現在までに明らかになったことは、この制度が雇用創出に対して全く悪影響を及ぼさなかったということです。導入に反対であった保守党は、雇用に対して否定的な影響が出る可能性を強調したが、導入後は保守党議員も、たとえ政権に復帰しても最低賃金制度は維持することを公約しています。
 全国最低賃金制度の恩恵を受けた200万人の労働者のうち、約130万人が女性であり、その多くは、パートタイムで働く比較的裕福な家庭の第2番目の賃金稼得者です。このため、イギリスの最貧困家庭の多くを占める働き手のいない家庭に対しては最低賃金制度は援助とはならず、家計所得の不平等の是正に関してはほとんど影響を及ぼすことができませんでした。

(5)スウェーデン

1.金属労働者の協約
 ブルーカラー労組である金属労働者労組の組合員への賃金原資の分配は、工場ごとで行われる3度の支部交渉においてなされます。そこでの平均賃上げ率は、2001年2月に2.3%、2002年2月に2.0%、2003年3月に1.7%となります(計6%、さらに協約期間中、賃金ドリフトで1%の上積みが保証され、合計7%の賃上げとなる)。2002年4月までに、少なくとも475クローネの賃上げがなかった金属労働者には、この額の増額が行われます。その次の賃金見直しは2003年5月に予定されており、最低増額は225クローネに設定されています(計700クローネ)。即ちこの38カ月協約の期間内に、個々の労働者に対して4%の賃金増額が保証されています。
 4つの賃金グループ(おおよその職業評価システムに基づく)の中で最も低いグループの最低協約賃金は、現在、時給で65.04クローネ、あるいは月給で1万1,300クローネとなっています。この最低協約賃金は、2001年に3.5%増額され、以後毎年さらに3%ずつ増額されます。2004年には、この額が1万2400クローネとなります。この最低協約賃金が該当するのは金属労働者のうち1万人にすぎず、平均時給は1時間当たり100クローネを超えています。
 休暇中の給与は3年の間に12.5%増額されます。これは、実質的に連帯的賃金政策に向けて一歩を踏み出したものと考えられます。現在はホワイトカラー労働者にのみ与えられている、就職した年に5週間の休暇を取る権利が、将来的には金属労働者にも与えられると考えられるからです。
 ブルーカラー労働者は、要求より低い賃上げを受け入れなければなりませんでしたが、使用者が労働時間を弾力的に設定する権利を強化することは拒否しました。組合の指導者らは1998年の交渉で年間労働時間を3日間短縮することを受け入れた後、組合員から、労働時間の予定作成に関し、使用者が労働時間を設定する権利について、過度に譲歩したと厳しく批判されたからです。
 弾力的な勤務時間に基づいて働き、超過勤務時間が生じた場合、その時間は、「労働時間銀行」の口座に投資されます。年末に100時間を超える労働時間が銀行に蓄えられている場合は、当該労働者が希望すればそれを年金保険に払い込むことができます。
 労働時間は今後3年間に毎年1日分短縮されます。短縮された時間に対する報酬は全額支払われるので、使用者にとっては3年間で1.5%のコスト増となります。政府が、現在の労働時間委員会の報告に従って、労働時間の短縮が法によって定められた場合、協約による時短に加え、時短がさらに一層進むことになります。

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3.北・南米

(1) アメリカ
1.失業率の動向

 アメリカの2001年1月現在の軍人を除く16歳以上の人口は2億1,093万人であり、労働力人口は1億4,196万人、労働力率は67.3%です。
 アメリカでは1991年以降景気の拡大が続いてきましたが、2000年第3四半期の実質GDP 成長率は2.2%に落ち込みました。また、経済成長を牽引してきたインターネット関連企業でも、2000年5月以来一時解雇者数は増加を続け、2000年1月から9月までにその数は1万6,000人余にのぼっています。
 労働省は2001年9月7日、8月の失業率が4.9%(7月は4.5%)に上昇し、1997年9月以来約4年間で最も高い水準に達したと発表しました。非農業部門の雇用者数は前月比11万3,000人減少しました。特に製造業雇用者数は、前月比14万1,000人減(13カ月連続の減少)、サービス業では政府部門などで雇用増があったものの、前月比2万3,000人増にとどまり、雇用を支えてきたサービス業にも勢いがなくなりつつあります。中でも小売業(2万6,000人減)・運輸では人員削減が目立っており、今後の雇用増も期待しにくい状況です。
 ブッシュ大統領は、失業率の悪化を懸念し、何らかの対策を取る意向を表明しました。しかし、その後、同時多発テロの影響で、航空業界を始めとするサービス業や製造業での人員削減、米経済を支えてきた消費意欲の減退が不可避となっています。

2.雇用・失業の特徴
 年齢別の失業率をみると、若年者の失業率が極めて高く、2000年12月の失業率は、年齢計では4.0%であるが、16〜19歳層の失業率は13.1%、20〜24歳層は7.0%となっています。
 1990年以降のアメリカの労働市場における雇用増の多くは、サービス業および小売業において創出されています。クリントン大統領就任以降の7年間(93年1月〜99年12月)における雇用者数の動向をみると、サービス業では1,106万人増加して全雇用増の約58%を占めており、小売業は318万人増加し、全雇用増に占める割合は約17%となっています。
 失業期間は長期化しています(再就職の困難性)。1993〜98年の5年間において、3年以上の長期勤続者の解雇420万人となっていますが、この420万人は1999年2月時点で74%が再就職をはたし、13%が失業を継続しています。再就職の困難性は、女性、高齢者においてより高くなっています。また、420万人中270万人がフルタイム職から解雇され、再びフルタイムに就職したのは220万人(82%)ですが、以前の職より賃金水準が低下した者の数が多くなっています。このため、就業者の5.4%(730万人)は複数の職を持っています。

3.コンティンジェント労働
 今日のアメリカの労働市場では、高賃金、福利厚生充実、フルタイムの典型労働者とは対照的な、いわゆる非典型雇用が増加しています。アメリカではこの非典型雇用をコンティンジェント労働と呼んでいます。コンティンジェント労働は、おおまかには企業が必要に応じてフレキシブルに使用する労働者を意味し、具体的にはパートタイム労働者、一時雇い、派遣労働者、下請業者などの形態があります。

4.労働組合組織率
 雇用者総数に対する労働組合組織率は、2000年に13.5%に低下し、政府が983年(組織率20.1%)に統計を取り始めて以来、最低になりました。労働組合員総数も1999年の1,650 万人から1,630万人に減少しました。労働組合は、一時解雇の影響を受けにくい公共部門で高い組織率を維持しており、同部門での組織率を1999年の37.3%から37.5%に上昇させました。しかし、経済成長に陰りが見え始めた民間部門での組織率は、1999年の9.5%から9.0%に低下しています。背景として、歴史的に組織率が高い製造業や運送業が、近年、人員削減を続けているうえ、雇用者数の伸びが著しいハイテク産業や人材派遣業での組織化が進んでいないという事情があります。労働組合が、これらの雇用構造の変化に対応しきれないまま経済成長の鈍化が始まり、労働組合の勢力が強い自動車産業などで人員削減が進行しています。
 1999年には、組織率は98年と同じ13.9%でしたが、総組合員数が98年の1,621万人から1,648万人に増加したため、AFL−CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)は、組織化が成功しつつあると歓喜していました。それだけに、新たな統計は、AFL−CIO幹部を意気消沈させる数字となった。AFL−CIOのマーク・スプレイン組織化部長は、今回の数字にがっかりしたと認めながらも、「エンジニアや他の専門職を対象にした組織化に成果を上げつつある」としています。

(2)ブラジル

自動車労働者はフォルクスワーゲン社と基本合意に達し、フォルクスワーゲン社最大の海外工場であるサン・パウロの自動車組立工場で行われた1週間ストライキを終結しました。この合意は、スト中の900台/日にのぼる生産不足分を補うための大量解雇や生産中止を防ぐために結ばれたものです。老朽化が進むサン・パウロのサン・ベルナルド・デ・カンポにあるアンチエッタ工場の新たな投資と更なる近代化の道を開くことにもなります。
この合意の下、フォルクスワーゲンは一週間以上前に解雇となった3,000名の従業員を復職させることとなります。その半数が直ちに仕事に復帰することになり、残りの1,500名は1月末まで有休が与えられるとのことであり、同時にフォルクスワーゲンは700名の雇用削減をするために任意退職プログラムを行う予定とのことです。
また従業員は給料と労働時間の削減を承認する予定であり、削減は15%くらいになると考えられています。この合意は金属労組のルイス・マリノー会長がドイツを訪問してフォルクスワーゲン本社に赴き2日間の交渉の後結ばれたものです。
アンチエッタ工場は、近年行われてきた近代化への努力にもかかわらず、ブラジルにある新しい工場にくらべると競争力が落ちています。その原因は他の工場より人件費がおよそ30%高いことが大きく作用しています。フォルクスワーゲンとの合意の一部として、工場の更なる近代化への追加投資と大量解雇を避けるための新しいモデル車組立の導入が考慮されています。マリノー氏がエスタド新聞通信社に伝えたところによると、これが失敗した場合、現在の従業員16,000名の半分の過剰雇用が2年以内に生まれるとのことです。

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4.アジア

(1)韓国

1.労使政委員会での議論と民主労総連帯闘争
政労使三者で構成されている各種委員会で主要な争点となっている項目は、労働時間の短縮、非典型労働者の保護、構造調整関連の問題の3点が挙げられています。
労働時間の短縮については、1998年2月の政労使による社会的合意に盛り込まれていた「労働時間の短縮」について、労使政委員会で2000年10月23日、「現行の週44時間から40時間に短縮し、週5日勤務制を定着させる」という基本合意には達しましたが、国際基準に基づいた休暇制度の導入とそれに伴う賃金補填については労使の間で意見の一致をみている以外の細目については合意されていません。
 政府労働時間短縮特別委員会の公益委員案では、労働時間短縮に関する基本的な立場として、「社会・経済の現実からみて労働時間の短縮は受け入れられるべきものであり、労使はそれに伴う社会的コストを分担し、その利益を共有しなければならない。今後労働界は生産性向上、財界は経営革新を通じての費用節減、政府は労働時間短縮のための環境整備などにそれぞれ全力を尽くすことが求められる」としています。
 細目については、@「年・月次有給休暇」を「年次有給休暇」に一本化して、勤続年数1年以上の者に18日を与え、3年毎に仕事に1日を加算し、上限を22日とする。生理休暇は無給とする。A施行時期については2002年7月から2007年1月にかけて4段階に分けて施行するが、中小企業に対して早期実施する場合は政府の支援措置が必要である。B変形労働時間制(2週間単位、1カ月単位)については労使間の書面による合意に基づいて1年に拡大する。C超過労働時間の上限(週12時間)と超過労働手当ての割増率(50%)については現行の水準を維持すること、などとなっています。
9月5日の本委員会では上記の公益委員案が検討されましたが、労使間の合意には至っていません。労働界は「労働者の休暇日数と賃金が引き下げられ、実際に生活の質向上にはつながらない」としたのに対して、財界は「施行時期が早すぎるうえ、休暇日数が多すぎて受け入れられない」との立場を貫いたとのことです。
非典型労働者の保護につながる、最低賃金の引き上げについては、労使公益それぞれ9名ずつで構成されている最低賃金委員会で論議されています。同委員会7月20日、2001年9月1日から2002年8月31日まで適用される最低賃金を前年同期より12.6%引き上げ、時間当たり2,100ウオン(月47万4,600ウオン)にする案を決議しました。経営側の要求が2,060ウオンであったのに対し、労働側の要求は2,100ウオンと労働側の要求が採択された結果となりました。
 この決定に対して、韓国経総は「企業の実情を無視したものである」とし、これから最低賃金制度の諸問題点を是正するため立法請願などの措置を講じる計画であることを明らかにしました。一方、労働界は「労働者間の賃金格差や階層別所得格差の拡大傾向に歯止めをかけるため、最低賃金を最終的に常用労働者平均賃金の50%水準(例えば、今回は当初の要求案として時間当たり2,837ウオン)に引き上げなければならない」との立場を強調しました。労働部の関係者は「労働側の要求水準には及ばないものの、労働生産性増加率(7.3%)、名目賃金上昇率(7.5%)、労使交渉による賃上げ率(5.7%)などを勘案すれば、労働側の立場がかなり反映されたものといえる。最低賃金は常用労働者(20万1,000人、全体の2.8%)のみでなく、非典型労働者にも適用されるため、実際にその対象になる労働者数はかなり多いだろう」と述べています。
構造改革をめぐっては、民主労総系の労働組合が賃金闘争などの経済闘争とあわせて、大宇自動車の売却阻止などの運動を連帯闘争として6月から繰り広げてきていますが、この連帯闘争に対して政府が民主労総執行部に逮捕状を発行したことから、「労働弾圧」であるとして7月5日から第2段階に突入し「対政府闘争」を繰り広げるとしました。この闘争において民主労総が中心的役割を果たすと考えられていた金属産業大手企業労組でしたが、その参加や動員が低調であり、組合員の参加率が相当程度低い結果となりました。これは、これらの大手企業が争議行為の調停手続きに入っていたため、この段階でのストライキ突入が不法行為とされる恐れが企業労組の幹部にあったこと、この闘争の政治的色合いの強さが組合員とはかけ離れていたこと、政府の不法争議行為に対する厳正な法執行という姿勢の圧力があったこと、などによるものです。
 この連帯闘争に際して、民主労総の段炳浩(ダン・ビョン・ホ)委員長は、6月のストライキとデモを指揮したとして、8月2日に再度逮捕されました。段委員長は大統領の大恩赦によって、2カ月と4日の刑を残して1999年に一度釈放されましたが、残りの刑期を務めれば数カ月におよんでいる政府とKCTUの抗争に終止符を打つという政府の約束を受けて、この8月に再び拘留されました。この約束は、民主労総と政府の調停役となっていた高名なカトリック指導者であるキム・スンフン氏により結ばれたもので、この間民主労総執行部は明洞(ミョンドン)大聖堂の前で座り込み抗議を指揮していました。政府は段委員長が自首すれば、逮捕を緩和し合法的なKCTUの活動とその指導権を認めることで合意しました。
 このような合意があったのにもかかわらず、段委員長は現在もソウル刑務所から釈放されておらず、拘留の期限も明らかになっていないとの報告が民主労総よりされました。9月8日、検察庁が段氏に新たな罪状を言い渡し、取り調べと法廷への拘留をするために逮捕令状を発行し、また、政府高官がそのような合意はなかったと否定し、9月29日の大統領官邸でのトップ会談で、段氏の投獄を継続するという決定がなされたとのことです。

(2)中国

1.金属労組の組織動向
 中国には、中華全国総工会の指導のもと、2つの金属関連の産別工会、中国機械冶金工会と中国国防工業工会があります。中国機械冶金工会は中華全国総工会の指導のもとにある機械冶金産業の全国産業工会で、組合員は2,000万人、全国からの中央代表は105名となっています。機械冶金産業は省庁所在地に集中しており、地方の産業工会は70組織あり現在調整を行っているところです。中国機械冶金工会では市場経済の状況のもと、労使関係対策に力を入れています。地方組織の調整と同様、全国組織についても総工会と調整しており、今後建設建材工会の一部と合併する予定です。
また、中国国防工業工会は郵便・電信電話の工会と合併する予定であり、合併後は電子産業から情報産業まで幅広い産業分野の労働者を組織化する工会となります。軍事産業も従来どおり組織しています。国防産業の範疇では原子力工業、航空工業、電子工業、兵器工業、船舶工業および航空宇宙工業の6つの産業は、すでに13の集団企業(中国原子力工業集団公司、中国原子力工業建設集団公司、中国航空宇宙科学技術集団公司、中国航空宇宙科学工業集団公司、中国航空工業第一集団公司、中国航空工業第二集団公司、中国船舶工業集団公司、中国船舶重工集団公司、中国兵器工業集団公司、中国兵器装備集団公司、中国電子情報産業集団公司、中国電子科学技術集団公司、中国長城計算機集団公司)を設立しています。
これらの産業工会の主旨と主要任務は、労働者の広範な利益を保護し、労働者階級の地位・生活条件などを向上させ、企業の民主的管理を進め、企業の発展を促進することであり、具体的な運動は、@労働者の経済利益を保護する、A団体交渉の推進と団体協約の締結のための運動を行う、B労使関係の整備、バランスのとれた労使関係の構築を進める、C労働法に定められてある労働者の権利である、労働者の利益を守るための規制を維持する活動を行うとしています。
また、今後の構造調整によって、業績の悪い企業、老朽化した企業、特に地方の企業は閉鎖していくことも考えられることから、そのような場合の労働者の利益を保護するための活動を、@下崗労働者の再就職活動、A再編された企業や新設された企業での工会組織化、B新しい技術の導入と産業の発展を促進、C労働者の民主的権利の擁護し、企業の民主的管理制度の基本である労働者代表大会制度を堅持・完成させ、経営情報の公開と企業との民主的協議を推進する、としています。
労働者代表制度については、工会は各企業別に設置された企業における民主的な制度であり、経営目標、方針、生産計画など重要な項目はこの大会で審議、採択されなければならないとしています。また、労働者の賃金については労働協約に含まれなければならないとしています。代表大会への選出は、末端組織から一定の比率に基づいて選出されます。工会は労働者代表大会の活動機構であり、各小委員会の代表はほとんどが工会の代表であり、主導的な役割を果たしているとしています。工会の主要な活動の一つとしてこの大会を主催しており、年2回開催で、1981年の条例で制定され20年の歴史があります。

(3)マレーシア

1.電子産業の産業別組織による組織化問題
 マレーシア政府人的資源省は、1995年雇用法、1959年労働組合法、1967年労使関係法など労働関連の法律の改正について検討を行っていましたが、2001年8月20日、新聞報道で、フォン・チャン・オン人的資源相は「マレーシアの電子産業の企業の多くには効率的な企業内組合が存在している」として、電子産業への全国労組による組織化を禁止し続けることを強調し、これからもこの産業の企業には企業内組合しか認めない方針を変えないと述べました。
 この問題は1970年代までさかのぼる問題であり、1988年に政府が電子産業企業の企業内組合の結成のみを認めたこと以外、方針の変更はありません。人的資源省労働組合部によれば1996年の数値として電子産業では8つの企業内組合が結成されており、4,400名の組合員がいるとしています。
 EIWU(電機産業労組)やMIEU(金属産業労組)をはじめとするマレーシアの労働組合は、政府が企業を組織化する際の労働組合の形態を規定することはILO条約など国際的に認められている労働者の権利を侵害するものであり、また電子産業であるかどうかの判断が非常に恣意的であり、同じ製品を製造している2工場の一方が電機産業、もう一方が電子産業という判断がされるなどの問題があると指摘してます。さらに企業内組合結成の申請に際しても、組合の名称を企業の名称と同一としなければならないことから、企業が一方的に名称変更を繰り返し、その間に組合幹部を解雇するなどして組合つぶしを行う例が発生しています。
 IMFは9月にこの問題に対して、マルチェロ・マレンタッキIMF書記長が、マレーシアで電子産業労働者の全国労働組織を設立するための闘争への支援を継続し、「この20年以上にわたる問題に終止符を打つための強力な活動を計画していく」と述べました。IMF−MC(マレーシア協議会)ではマレーシアの電子産業労働者150,000名のうち、企業内組合に組織されている労働者でさえ5%に満たないことから、このような諸制度の乱用により企業内組合では組合員の雇用を守ることはできないと指摘しています。今後IMF−MCとして人的資源省に異議申し立てを行い、ナショナルセンターであるMTUC(マレーシア労働組合会議)とともに、電子産業の労働者の全国労組による組織化が行われるように活動していくこととしています。

(4)インドネシア
 
1.労働法の動向
2001年7月23日、国民議会でワヒド大統領の罷免が圧倒的多数で可決され、メガワティ副大統領の大統領昇格が全会一致で決定しました。それに伴い、メガワティ新政権が誕生し、遅れること18日、新内閣のメンバーが発表されました。
 新労働・移住大臣は、最大手のFSPSI(全インドネシア労働組合連合)のヤコブ・ヌワウェア議長が就任した。ヤコブ新大臣は、メガワティ新大統領率いるPDI−P(闘争民主党)に所属しています。
 アル・ヒラル前労働・移住相が、ワヒド前大統領の省庁再編の際、移住大臣から横すべりした大臣だったため、労働組合側は度々「専門家以外の大臣就任」に不平を露にしてきました。また、ここ数年のインドネシア国内の労働紛争に関しても、前大臣の任期中には具体的な対策がとられずに、多くの批判が挙がっていました。
懸案となっている、解雇規定に関する2000年第150号労働大臣令に関しては、「政労使の三者会談で合意に達するまでは、当面同大臣令が有効である」との考えを示しました。また最低賃金の改定や、労働者保護法、産業紛争解決法、出稼ぎ労働者法の早期成立、懸案となっている解雇に関する労働大臣令に関しての三者協議の開催など諸課題に意欲的に取り組むとしています。

2.金属労組の組織動向
SPMI(インドネシア金属労組)は2001年8月、定期大会を開催し、向こう5年間(2001−2006年)の活動方針と役員を決定しました。活動方針の最重要案件は、@組織再編と組織拡大、A労連加盟費の徴収、であり、組合員の支払う組合費の40%はSPMI本部へ上納されることとなりました。組織の再編が行われ、これまでSPMIに加盟していた繊維工業の約3,000名が話し合いによりSPMIを去り、他の産別へ移りました。役員選挙では現行15名の役員の中からモシイ委員長をはじめ14名が再選され、事務局長に新人のサイード・イクバル氏が就任した。
2001年シドニーで開催されたIMF世界大会では、SPMIの加盟が承認されました。SBSIロメニックについては、労組幹部の間での内紛から生じる組織運営上の問題があり、今回の加盟承認は見送られました。

(5)フィリピン

DOLE(労働雇用省)の発表によると、1月から5月までに、258社(従業員約5万人)の労働組合が、ストの通告を経営者側に行いました。DOLEは、今のところこの結果を楽観的に捉え、これらの労働争議は、ほとんどがNCMB(中央斡旋調停委員会)を通じて解決されるものと予想しています。NCMBの資料によると、この258組合は、昨年同時期の340組合に比べ約24%減少しています。
DOLEの担当者によると、実際に実行されたストは20件で、その多くはマニラ首都圏です。ストに参加した労働者は3,462人で前年同期に比較し67%減少しました。実行されたストの内訳を見てみると、製造業が16、ホテル・外食産業が2、調剤業が1、電力業が1です。
フィリピンでは、ストの通告及びその後の交渉の手続きは、交渉がデットロックに乗り上げた場合、労働組合はストの通告を労働雇用省に対してその予定日の30日以上前に提出します。ただし、不当労働行為の場合、予告期間は15日に短縮され、さらに正式に選出された労働組合役員の解雇の場合で、それが労働組合の存在を脅かし、労働組合解体の要因と成り得る場合には、15日の予告期間は適用されず、労働組合は直ちに行動をとることができます。
ストの予告がなされると、NCMBは、直ちに双方を調停会議に招集します。NCMB招集の調停会議に完全かつ迅速に出席することは、労使双方の義務とされています。NCMBは、争議を平和的に解決するために全力を尽くすとともに労使双方が事案を自発的にNCMBが認定した任意労働仲裁人に提出することを奨励します。労使が賛成し、任意仲裁が行なわれることになった場合、任意労働仲裁人は、30日以内に聴聞を行い、決断を下します。ただし、労働雇用大臣が国家の利益に不可欠な産業の労使争議であるという見解を持った場合、労働雇用大臣は争議の所轄を引き受け、それを決着させることができます。

(6)タイ

 おもに日系企業の労働組合が加盟している電機、自動車および金属の産業別組織が、IMF地域事務所の支援のもとにTEAM(タイ電機・自動車・金属総連)を、1999年に結成しました。この労組に対しては海外の様々な支援組織(アメリカ、スウェーデンおよびドイツなど)からの支援、特に教育訓練や労使関係について行われており、サムトプラカーン県の工業団地の労働者を中心に3万人の組織人員を擁しています。シドニーIMF世界大会ではこのTEAMがタイの組織として加盟が承認され、従来タイの加盟組織であったIMF−TC(IMFタイ協議会)は、IMFからの文書による加盟費納入の通達に対する返答がないことから、除名となりました。

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5.太平洋諸国

(1)オーストラリア

1.労働事情
 オーストラリアは1970年代半ば以降慢性的失業の時代に入っています。失業率は1993年半ばに11%の高水準となり、95年5月には急激に8.4%に下降、その後ゆっくり上昇して、96年9月から97年6月までは8.7%で安定、その後再び低下して2000年2月には6.7%になりました。労働市場は雇用の不安定化で特徴づけられています。労働力人口は962万3,800人、就業者数は890万5,100人、失業率は6.7%(2000年2月現在)となっています。
 性別による労働市場の分割は高い比率のまま継続し、女性の賃金は男性の約83%のままですが、この格差は労働市場の「弾力化」が進むにつれて減少しつつあります。
 所得の不均等も拡大しつつあります。高所得者層、とくに上級管理職および若年の優れた技能を持ち移動性のある、いわゆる「ゴールドカラー」労働者、とくに情報技術分野の慢性的技能労働者不足で、高給がとれる者の賃金は増加しています。
 一方、低所得者層は、社会保険の低所得者層への支払いが増えているので所得は徐々に上がってきています(このことが低賃金の実態を分かりにくくしている)。中間層の収入は減少傾向にありますが、これは確実なフルタイムの仕事が減少していることと関連しています。
 企業のリストラは職場に大きな変化をもたらし、下請けと外注が増大しています。経費削減とは労働者が速い速度でより多くの仕事をするということ、つまり「労働強化」を意味することになりました。また、これらの労働者たちの労働時間が増えて、しばしば手当がつかない時間外労働を伴うことになりました。こうした結果をもたらしたのは労使関係が根本的に変わって、これらの労働者の交渉力が低下したことにも一因があります。

2.総選挙
 オーストラリアの総選挙が11月10日に行われました。ハワード首相が率いる与党の保守連合が勝利を収め、労働党の政権奪回はなりませんでした。ハワード政権は経済の不振で劣勢にありましたが、米国同時多発テロの後にアフガニスタン派兵や不法難民阻止などの強攻策を貫き、支持率を逆転させました。

3.ジョブ・ネットワークが直面する新たな問題
 オーストラリアは職業紹介事業をいち早く民間委託し、どの国も、現政権が実行したほどまでは職業紹介事業の改革を行っていないことから、諸外国から注目を集めています。しかし、1998年にジョブ・ネットワークが開始されて以来、多くの問題が生じており、中でも最近発生した問題はかなり深刻なものです。
 職業紹介事業の改革は、まず公共職業紹介所を廃止し、そのかわりにジョブ・ネットワークを作ることでした。同ネットワークは公的機関であるエンプロイメント・ナショナルと職業紹介を行うおよそ300の民間職業紹介機関から構成されています。 求職者はセンターリンクの評価を受け、3つのカテゴリーに分類されます。
大きな問題は制度自体にあります。職業紹介機関は、日常業務に関し政府からわずかな資金を提供されますが、求職者1人あたりにつき払われる政府からの報酬が大きな収入となっています。求人情報は職業紹介機関にとって報酬を得る手段であるため、その情報をネットワークに載せたがらず、適当な求職者が来るまで密かにこうした情報を蓄積していたため、労働市場が分断される一因となりました。
 2001年6月に開催された上院委員会の審問では、新たな問題が明らかにされました。それは、職業紹介機関が自ら人材派遣会社を設立し、求職者に対し職業紹介や仕事の斡旋を行うためにこの人材派遣会社を利用しているということです。この方法だと、職業紹介機関は、自らが提供した職業紹介について政府から報酬を得ることが可能となります。政府は職業紹介1件につき約400豪ドルを支払いますが、この報酬の支払い要件として求職者が15時間雇用されることが課されています。人材派遣会社が仕事を提供し、15時間働かせるためのコストはおよそ150豪ドルであり、職業紹介機関はこれらのコストを超えるかなりの報酬を得ていることになります。上院委員会の審問では、2,000人程度の求職者がこうした方法で職を提供されたということがわかっています。
 政府はこの問題に対処するために、主な首謀者であるクィーンズランド州にある職業紹介機関の捜索を行いました。これに対し職業紹介機関側は、政府がこの方法を承認していたと主張し、政府やマスコミに対しこの方法を承認するという旨の高級官僚の文書を提出しました。さらに雇用サービス大臣がこの方法に暗黙の承認を与えていたとも伝えられ、問題は深刻化しています。

以 上

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