マクロの雇用環境の悪化とあわせて、日本の基幹産業である金属産業が置かれた状況が、産業による相違はあるものの、かつてのどの不況よりも深刻な状況に置かれているとの危機感を持っている。
かつて日本は、敗戦の廃墟から立ち上がり、国としての的確な経済戦略や企業経営、高い技術力と労働能力、さらに勤勉さを有した勤労者の努力によって世界市場を席巻し、1人当りGDPで世界第3位の経済大国を作り上げてきた。資源のない加工貿易立国として生きる日本経済は、こうした国際競争力のある金属産業によって初めて成り立ち、国民生活の豊かさが実現されている。
しかし、近年において発展途上国の技術水準、製造能力の向上は目を見張るものがあり、その総コストの有利さから他国製品を駆逐する勢いである。その一方で、未だ発展途上国に比してはるかに競争力を有し、かつ従業員の貢献によって付加価値を生み出し、今日の不況下においても比較的好調な業績を記録している日本の産業・企業もあり、金属労協としてはそうした環境下で2002年闘争を迎えようとしている。
そこで、私たちは産業の相違を越えて、当然のようにまず「雇用確保」に手立てを尽くすことによって組合員の将来にわたる「雇用不安」を払拭し、同時に生み出された付加価値にふさわしい分配を求める方針を確立したものである。
日本における高コスト体質は、何も賃金だけに原因があるのではなく、生産に関わる全てのコストが国際的に高いことによるものである。低生産性部門から高生産性部門への資本・人材などの移転を目指す「構造改革」は、その意味においては正しい政策といえる。貧しい生活から、より豊かな生活を目指す日本の春闘は、日本の高度経済成長を支えた個人消費を拡大させ、今日の経済発展を実現した重要な柱であることは誰しもが認めているところである。
しかしその結果として、生産性が低く、規制や政策的な保護に守られてきた産業、あるいは公的な部門においては、そのコスト増加を価格に転嫁し、今日の内外価格差、高コスト体質を作り上げてきた側面もあることを指摘したい。
私は、この2002年闘争においては、単に「雇用」や「ベア」の具体的交渉ごとに限定することなく、日本経済の基幹を担う金属産業の今後のあり方について、それぞれの産業や企業の中で、労使が真剣に話し合わなければならない時期に来ていると考えている。これからも引き続きドルを蓄積する産業が欠かせない日本として、金属産業のあり方、「製造能力の強化」のための政策は、日本国の「国家戦略」であるべきであり、労使が共通の認識を持たなければならない課題である。
2002年闘争が抱えるもう一つの特徴は、再三指摘されてきた労働組合に対する「横並び非難」が、今度は経営側にも問われているということである。企業において業績が比較的好調であるにもかかわらず、マクロの雇用状況の悪化を理由に従業員への分配に応えないことがあるとすれば、それはまさしく「悪しき横並び」であり、企業経営者が今日まで非難してきたことを、今度は自分たちが行うという矛盾を抱えることになる。経営側のそうした取り組みは、今日の環境下で懸命に努力してきた従業員・組合員の労働意欲を著しく損なうことになる。
私たちは、再度「雇用確保」と「ベア確保」をJC共闘全体の柱として確認し、この中央討論集会を通じて、各産業別組合の取り組みを理解した上で、その成果を目指して全力をあげることを決意したい。回答指定日については、連合と調整してきた結果、おおむね3月13日を想定して今後の日程配置を決めていきたい。
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