韓国の労働組合員、現代造船所の死亡事故を全世界に警告
2015-11-18
今週、韓国の労働組合員が9,000キロ離れたスイスのジュネーブに赴き、国連ビジネスと人権フォーラムに出席した。その目的は世界中の人々に、世界最大の造船会社、現代重工業(HHI)の造船所で労働者が死亡している現状を伝えることである。
2014年3月から2015年9月までに、予防可能な恐ろしい事故で16人の労働者が死亡した。これはほぼ月1人のペースである。だがHHIは、死亡した労働者全員が下請会社で働いていたという理由で、事故に対する責任を取ろうとしない。
KMWUを通してインダストリオール・グローバルユニオンに加盟しているHHI下請労組のハ・チャンミン地方組合委員長はこう述べている。
「私たちがジュネーブと国連フォーラムにやってきたのは、HHIが労働者の人権を侵害しており、労働者が日常的に死の危険に直面しているからだ。労働者は解雇を恐れるあまり、安全性への懸念について語ろうとしない」
HHIは石油・ガス産業向けにコンテナ船やタンカー、海洋プラットフォームを製造している。HHIの造船所では約5万人が働いているが、その80%に相当する4万人が下請会社に雇われている。
このところ死亡事故が増えているのは、過去2年間にHHIが下請業者の利用を増やしているからだ。
「下請労働者の安全管理はまったく行われておらず、下請労働者は十分な訓練や教育を受けないまま、より少ない時間でより多くのことをしなければならない。安全衛生訓練などめったにない」とハ委員長は語った。
当局に報告される事故は全体の3.5%にすぎないと推定されている。
「2012年から、病院を1施設ずつ1週間監視し、負傷してHHI造船所から運ばれてくる労働者の人数を調べている。負傷した労働者は週40~80人に上った。これは一度に病院1軒ずつ調べた数字であり、この地域には10軒ほどの病院がある」とハ委員長は言う。「時には、救急車ではなく、HHIがトラックや車で労働者を病院に連れてくることもある。HHI側は病院の職員に、けが人は家で事故に遭ったと言っている。労働者自身は、失業を恐れて負傷の理由を当局に話すことさえ嫌がる」とも述べている。
2012年9月、1人の労働者が救急車ではなくトラックで病院に運び込まれ、適切な応急処置を受けられなかったために死亡したという。
ハ・チャンミン委員長によると、組合は事故を報告しなかったという理由で下請会社を訴えざるを得なかった。いくつかの企業が同じ理由で当局に処罰されたが、大した罰ではない。
「事故の隠蔽は労働者の死につながる」とハ委員長は指摘する。
労働組合はHHIで安全性を改善しようと努力しているが、今のところ効果はない。
「HHIから何も反応がない。経営陣に安全衛生に関するアンケートを送ったが、はねつけられた」
HHIでは組合に対する敵意が非常に強い。下請労働者は組合員であることがHHI側に知られると直ちに解雇される、とハ委員長は言う。これは韓国の法律と国際法に完全に反している。韓国では、労働者には団結権がある。
下請業者で働く労働者は賃金が常用従業員より70%少なく、いつ解雇されるか分からない。下請業者は倒産を宣言し、賃金を支払わずにいなくなることが知られている。
HHIが利用する下請会社KTKサンバックの労働者は、200日以上にわたって街頭デモを繰り広げ、同社が2015年3月に閉鎖されたあとの未払賃金を求めて闘っている。これは同社とHHIとの契約に違反している。契約によれば、労働者の賃金の資金を確保するために、売上高の一定額を取っておかなければならない。HHIはKTKサンバックを閉鎖させておきながら、責任を取ろうとしていない。
松崎寛インダストリオール造船担当部長は次のように述べた。
「月1件というHHI造船所の死亡事故の頻度は常軌を逸しており、同社が下請労働者の権利や命をまったく尊重していないことを明らかに示している。HHIはHHI下請労組の地方組合を承認しなければならない。同労組は経営側との協議と交渉を通じて、職場の安全性と持続可能性を高めることができる」