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第53号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2016年5月20~30日)

多国籍企業はサプライチェーンに対して責任がある

2016-05-25

 多国籍企業は、インダストリオール・グローバルユニオンに加盟する労働組合・労働者が働いている産業・エネルギー・鉱業部門を牛耳っている。だが、自社製品を作る労働者の6%しか雇用していない。私たちは多国籍企業に対して、サプライチェーン全体で労働組合権と生活賃金に責任を負わせている。

 ITUC(国際労働組合総連合:1億7500万人)は1月、不祥事に関する報告書を発表し、主要多国籍企業50社が自社製品を製造している労働者の6%しか直接雇用していないことを明らかにした。残りの94%、すなわち総勢1億1,600万人の隠れた労働者は、サプライヤーと下請業者に雇われている。

 原則として、これらの労働者の賃金と労働条件は劣悪であり、ほとんどの組合権侵害がサプライチェーンで発生している。しかし、ビジネスと人権に関する国連指導原則が確認しているように、多国籍企業はサプライチェーンに対するデュー・ディリジェンス(適当な注意)責任を負う。

 インダストリオールはグローバル枠組み協定(GFA)によって、この責任を確保しようとしており、すでにGFAは47社と各社のサプライヤーで1,000万人以上の労働者を対象としている。これはバングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定の狙いであり、200万人を超える衣料労働者のために工場の安全性を高めるべく取り組んでいる。

 サプライチェーン責任はACT衣料ブランドとの協力の基礎であり、産業レベル団体交渉構造の構築を通して結社の自由と生活賃金の保障に努めている。産業全体でもっと高い賃金を設定すれば、個々の工場やブランドが賃下げに基づく価格の引き下げを交渉するのを防止できる。

 ブランドが自社製品を製造していないもう1つの部門は電子産業である。この産業でも衣料産業とまったく同様にブランド・イメージが傷つきやすい。そこでインダストリオールは、フィリピンのNXPセミコンダクターズによる組合つぶし反対キャンペーンでアップルにターゲット絞って成功を収め、アップルは要求に応じた。

 スウェーデンの小売大手H&MとのGFAは、ミャンマーとパキスタンの紛争解決に成果を上げた。インダストリオールとH&Mによる積極的介入のおかげで、中国のサプライヤーが最終的にミャンマーの加盟組合を承認し、パキスタンでは解雇された労働者88人が復職した。

 サプライヤーと下請業者による搾取や労働者の権利の侵害は注目の話題である。したがって、6月のILO総会では「グローバル・サプライチェーンのディーセント・ワーク」が主題になる。

 インダストリオールと他のグローバル・ユニオンは、グローバル・サプライチェーンに関する条約を締結し、本国の政府と受入国の政府、購入企業とサプライヤーの役割と責任を明確にしたいと考えている。この条約は法的責任を規定し、サプライチェーンで労働者の権利の尊重を確保する政策や法律を策定するための指針を与えるべきである。

 政府は条約を待っている必要はない。フランス議会は企業のデュー・ディリジェンス義務に関する法律を審議している。その他の国々も、例えば賃金や社会保障負担の不払いの場合に購入企業に責任を負わせている。

 企業構造が変化している。法律や交渉構造もそれに応じて変化し、グローバル・サプライチェーン全体で組合権と生活賃金を確保しなければならない。

インダストリオール・グローバルユニオン書記長

ユルキ・ライナ

 

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