パキスタンで解雇された船舶解撤労働者が復職
2016-05-25
パキスタンのインダストリオール加盟組織NTUFが主導した2日間のストの結果、約350人の船舶解撤労働者が復職し、賃金を支給された。労働者は政府・使用者に対し、この国の危険な船舶解撤場で基本施設を確保するよう引き続き要求している。
パキスタンの船舶解撤場における死傷事故をめぐって使用者を警察に告発したことに対する報復として、5月16日に約360人の船舶解撤労働者が解雇された。
この労働者たちは特定業務を遂行するために請負業者を通して雇用され、現地で「合意部門」労働者と呼ばれていた。2日間のストの結果、船舶解撤場所有者団体は交渉の席に着いた。5月24日の交渉成功で労働者全員が復職し、就業しなかった日数分の賃金を受け取った。
この勝利は成功だが、船舶解撤場の危険な労働条件は労働者が非常に大きな課題に直面していることを示している。
28歳の船舶解撤労働者ムハンマド・アシフが、3月に職場の火災で亡くなった。22歳の若い労働者シャヒッド・カーンも、2016年5月に重い鉄板の下敷きになって即死した。3月に5人の労働者が重傷を負った。4月にも2件の事故が発生し、25歳のイムランが片足を失い、38歳のムハンマド・シャフィクが高所から落ちて肋骨を負傷している。22歳のヒダーヤットゥラがガスボンベの爆発で片足を失った。
5月にカラチで船舶解撤労働者の代表が記者会見を開き、パキスタンの船舶解撤産業で1万5,000人以上の労働者が危険で悲惨な労働条件にさらされていることを強調した。
労働者はきれいな飲料水もトイレも利用できない。労働者ほぼ全員が正式な契約を結ばずに働き、薄給に甘んじており、残業を強いられ、政府後援の社会保障を利用できない。労働者たちは現地で「jamaadars」と呼ばれる請負業者を通して、労働法に十分な注意を払わないで採用されている。
船舶解撤のすべての段階が非常に危険であり、X線溶接やガス切断、化学物質の取り扱い、アスベストの除去、鉄板や薄鋼板の移動、毒ガスの排出を伴う。しかし、労働者は訓練を受けず、安全装置もなしでこれらの仕事に従事している。
そして、事故が多発する産業でありながら、ガダニ船舶解撤場には労働者に基本的な救急医療を提供できる病院がない。事故発生時に直ちに搬送するための救急車のないことが大きな心配の種である。労働者と家族は電気も水道も通っていない間に合わせの小屋に集団で住んでいる。子どもが通う学校もない。
松崎寛インダストリオール造船・船舶解撤担当部長は言う。「インダストリオールは事故の頻発に憤りを感じている。労働条件と安全衛生に関して、ガダニはたぶん南アジアで最悪の船舶解撤場だ」「パキスタン政府と使用者は、労働者の要求に取り組むために直ちに措置を講じなければならない」
労働者はパキスタン政府に対し、労働者代表と協議して速やかに船舶解撤政策を発表するよう要求した。この政策は、船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約と、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約を反映したものでなければならない。
その他の要求は以下のとおり。
- きれいな飲料水と衛生的な食べ物
- 危険物質を取り扱うための訓練
- あらゆる船舶解撤場における職場の安全と診療所・救急車へのアクセス
- 組合を結成して団体交渉代表権者を選出する労働者の法的権利の労働省による保護
- 賃金の倍増
- 社会保障制度の提供
- 死亡した労働者の遺族への適切な補償の支払い
- 職場で負傷した労働者への継続的な医療支援
- 使用者は、あらゆる種類の契約労働の撤廃を求めるパキスタン最高裁判所の命令に従うべきである。