バングラデシュ・キャンペーンの成功要因
2017-03-02
キャンペーン成功の舞台裏をのぞいてみよう。社会変革をもたらすのは難しく、クリックティビズム(オンライン請願への署名)だけでは不十分である。では、キャンペーンを実施して勝利を収めるにはどうすればよいのだろうか。
問 題
バングラデシュの繊維・衣料労働者は組合に加入し、労働条件の改善を求めて闘っている。2016年12月、最低賃金の増額を求めて数千人がストに入った。労働者1,600人が解雇、労働組合員35人が逮捕され、身を隠した組合員もおり、労働組合事務所が閉鎖された。
インダストリオールと姉妹グローバル・ユニオンのUNIは、弾圧を終わらせるためにキャンペーンを開始した。私たちは昨日、このキャンペーンの成功を確認した。最後の労働組合員が刑務所から釈放され、政府と使用者団体(BGMEA)がバングラデシュの加盟組織を交渉パートナーとして承認したのである。
どのようにしてこの成果を達成したか。
1.下準備
何年もかけてバングラデシュの状況に対する認識を高め、事態の改善に取り組んでいる人々との関係を築き上げた。簡単なメッセージですぐにキャンペーンを起こすことができた。
2. 組合員の動員
世界中の加盟組合に連絡し、バングラデシュ政府に抗議書簡を送るよう頼んだ。行動デーを調整し、ベルリン、ジュネーブ、ロンドン、ブリュッセル、ハーグ、ワシントンDC、ニューヨーク、オタワ、カトマンズ、ソウルのバングラデシュ大使館前で組合が抗議行動を組織した。
3. レイバースタート・キャンペーン
労働運動向けのオンライン請願サイト、レイバースタートでキャンペーンを実施。世界中の労働組合員1万人以上がバングラデシュ政府に抗議文を送った。
4. ネットワークの活性化
パートナーNGOと強力な関係を築き上げている。クリーン・クローズ・キャンペーンやファッション・レボリューションのような組織に接触、これらの組織は私たちのキャンペーンを支援し、この運動を自分たちのネットワークに広げてくれた。
5. 行動の指示
ソーシャルメディアを利用して衣類製造労働者の現状を伝えることによって、人々を関与させた。共有しやすいコンテンツと多くの画像を利用した。
労働組合員の釈放を要求する簡単なポスターを作成し、ダウンロードできるようにした。ポスターを持った自分の写真を撮り、キャンペーン・ハッシュタグ#EveryDayCountsをつけてソーシャルメディアで共有するよう人々に頼んだ。数百人が画像をアップし、メッセージをさらに広めてくれた。
6. 前向きな代替策の利用
敵対勢力は労働組合の抗議を犯罪的・暴力的と表現した。私たちは前向きな代替策によってこれに対抗した。弾圧期間中に加盟組織2団体がバングラデシュの衣料使用者と労働協約を締結し、前向きな労使関係が可能であることを示した。
7. グローバル枠組み協定の利用
何年もかけて、バングラデシュから商品を調達している主要ファッション・ブランドとの関係を築き上げてきた。H&M、インディテックス(ザーラ)、チボー、ミズノとグローバル枠組み協定を締結している。これらの協定には、ブランドにサプライチェーンに対する責任を負うよう求める強力な規定があり、団体交渉を支援するという約束が盛り込まれている。
消費者行動主義とは、自分の服がどのように作られたかを気にかける人が増えている現状を意味する。ブランドが競争力を保つには、自分たちも同様に気にかけていることを示す必要がある。有名ブランドは、バングラデシュの労働者弾圧に自社が関係していると思われてはたまらない。その結果、ブランド各社は、重要な産業見本市であるダッカ・アパレル・サミットに出席しない旨発表した。
これは工場所有者にとって忍耐の限度を超える打撃となった。
8. パートナーとしての地位の確立
組合は取引している。良質な雇用を提供する成功した衣料産業を生み出すために、今後は政府や使用者連盟と協力していく必要がある。
私たちは、政府・使用者が弾圧を続ければ大きな代償を払うことになる状況を作り出し、私たちがこのキャンペーンを徐々に拡大できることを明確にした。そのうえで解決策を提示した。
現場の組合代表とインダストリオール・バングラデシュ協議会が合意を目指して交渉した結果、逮捕された労働組合員が釈放された。解雇された労働者を復職させるという約束を取り付け、IBCが交渉パートナーとして承認されるという先例を作った。
結論
私たちの成功の2大要因は以下のとおりである。
1. 時間をかけてあらかじめ協力関係と信頼を確立し、すぐに多くの人々を動員できるようにしたこと。
2. さまざまな角度から問題に取り組んだこと。バングラデシュ政府にメールや書簡、大使館宛抗議文を送り、ブランド各社がアパレル・サミット出席を拒否することで、あらゆる面から圧力をかけた。
このキャンペーンは協力関係とネットワークに依存していた。私たちの長所(ネットワーク)を活用するとともに、使用者の弱点(イメージの低下や仕事を失う脅威)に照準を絞った。