ガダニ船舶解撤場の事故から2周年、安全確保は依然不十分
2018-11-05
パキスタン船舶解撤産業史上最悪とも言える死傷事故から2周年の翌日、またしてもガダニ解撤場で火災が発生した。
2016年11月1日、ガダニ船舶解撤場で石油タンカーが大爆発し、労働者29人が死亡、40人以上がやけどを負った。4人が行方不明と伝えられ、事故発生時に現場で何人の労働者が働いていたかについて、誰も確かなことは知らない。またしてもガダニ解撤場で火災が発生した。
組合幹部は事故2周年に際して集会で演説し、2016年11月以降の一連の事故で、教訓がまったく学ばれていないことが明らかになったと述べた。政府・使用者は労働者の命を犠牲にして安全衛生を無視し続けている。これらの事故は、パキスタンの船舶解撤労働者が命がけで生計を立てていることをまざまざと思い出させる。
2017年1月8日、1人の労働者が船から落下して亡くなった。2017年1月9日にも、液化石油ガス・コンテナ船の火災で少なくとも5人の労働者が死亡。2018年10月14日には火災で7人の労働者が負傷している。
労働者が事故2周年を追悼して犠牲者に敬意を表したまさに翌日の2018年11月2日、第66解撤場でミストラル号の解体中に事故が発生し、さらに5人の労働者が負傷した。
ガダニの船舶解撤労働者は、危険な労働条件、不安定雇用、劣悪な賃金、労働法の未実施、結社の自由と団体交渉の権利の行使を妨げる障害、保健医療施設の不備、きれいな飲料水へのアクセスの欠如に直面している。
労働組合は長い間、バルチスタン州政府が新しい規則を採択し、パキスタンの船舶解撤産業で安全衛生を改善するよう要求してきた。2016年11月の悲劇のあと、船舶解撤労組は船舶解撤場で安全性を高めるための法案を提出したが、政府はまだそれについて決定を下していない。政府は2016年11月の事故を調査して新しい安全規則を提案するために委員会を設置したが、状況改善に向けて大きな進展は見られない。
アプールヴァ・カイワール・インダストリオール・グローバルユニオン南アジア地域事務所所長は次のように語った。
「経営側と解撤場所有者が労働者の安全を無視し、労働者の命が日常的に危険にさらされる事態にまで至っているのは恐ろしいことだ。政府・使用者両方が過去の事故から教訓を学び、労働者の死亡事故をなくしてパキスタンの船舶解撤産業で安全な船舶解撤を確保するために、直ちに積極的な措置を講じなければならない」
松崎寛インダストリオール造船・船舶解撤部門担当部長は述べた。
「政府が船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約を直ちに批准し、条約の条項を実施するために国家・連邦の規則を採用するよう繰り返し要求する」
「政府は条約の速やかな実施に向けて、船舶解撤労組と使用者が参加する政労使安全衛生委員会を設置すべきだ」