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第115号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年11月15日)

企業の免責なくす拘束力ある国連条約が必要

2020-11-06

<JCM記事要約>

  • 企業の人権侵害に対する免責をなくすため、ビジネスと人権に関する拘束力のある国連条約に関する交渉が行われた。これが採択されると、企業はサプライチェーンの人権侵害に法的責任を負うようになる。
  • 組合は草案に対し、ジェンダーの視点の採用などは歓迎しているものの、労働者の人権が明確に取り上げられず、組合がデューデリジェンス・プロセスの不可欠な部分として認めていないことについて批判した。
  • インダストリオールは、企業責任の確立のため、パンデミック下においてさらに条約の必要性が増している、と主張した。また、文書採択へ向けたプロセスが富裕国の使用者団体や政府に弱められることのないよう、プロセスを推進する勢いを維持する必要がある、とした。

 

最近の交渉は使用者団体と一部の政府による妨害のせいで望ましい結果をもたらしていないが、インダストリオール・グローバルユニオンは、企業の人権侵害に対する免責をなくすためにビジネスと人権に関する拘束力のある国連条約に取り組んでいる。

この法的拘束力のある文書に関する交渉が先週、ジュネーブで行われた。この文書が採択されれば、企業はサプライチェーンの人権侵害に法的責任を負うようになり、国際法で会社の説明責任を確立するうえで重要な一歩となる。

交渉に先立って、グローバル・ユニオンは草案原文の発表を歓迎しつつも、労働者の権利が人権であることを強調した。組合は、ジェンダーの視点の採用や、多国籍企業の組織構造における説明責任の欠如に取り組むための措置を歓迎した。

組合は、この文書が労働者の人権を明確に取り上げていないこと、労働組合員を人権擁護者として認めず、組合を人権デューデリジェンス・プロセスの不可欠な部分として認めていないことを批判している。

交渉中、国際使用者連盟をはじめとする企業ロビー団体は、草案のすべての条項のあら探しをしてプロセスを妨害しようとした。米国政府はこのプロセスを拒絶し、英国は草案原文の内容に異議を唱え、EUは加盟国から交渉マンデートを得ることができなかった。今回の交渉は大きな進展のないまま終了し、来年も継続する。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は、一連の交渉について次のように述べた。

世界中で企業責任の確立に向けた動きが見られる。これは遅きに失している。この条約の必要性はCOVID危機下でさらに高まっている。 というのも労働者は、しばしば大きな個人的リスクを冒して、十分な保護や疾病手当、安全保障なしで、根気強くグローバル・サプライチェーンを動かし続けているからだ

人権運動家や市民社会グループ、労働組合は、国際法と国内法を変更し、企業に他の管轄区域での行動に責任を負わせることを求めて、長い間キャンペーンを展開してきた。これらのキャンペーンが実を結び始めており、国内レベルでは、スイスで2020年11月に企業の社会的責任に関する国民投票が行われる予定であり、他の国々でも類似の法律が提案されたり、すでに可決されたりしている。

国際的には、2014年に運動家たちが国際連合人権理事会(UNHRC)で重要な勝利を達成し、法的拘束力のある国際文書を策定するための決議が初めて採択された。決議26/9によって政府間作業部会(IGWG)が設置され、一連の交渉でその文書の詳細を練り上げることになった。先週、ジュネーブで第6回IGWGが開催された。

UNHRCは加盟国で構成される。エクアドルと南アフリカが2014年の決議を提案した。多くの欧米諸国政府が、この案に反対票を投じた。今後の進展は加盟国の交渉力次第である。この理由から組合は、各国政府に圧力をかけ続け、草案原文が骨抜きにされないようにすることが重要だと考えている。

反対意見があったにもかかわらず、最終報告が採択され、当事者は原文をめぐる交渉に移る。IGWGは、2021年3月までに交渉で提起された問題に取り組む文書を編集・配布する。

ヴァルター・サンチェスは次のように締めくくった。

この文書はビジネスと人権に関する新しい世界的ベンチマークを設定する。特に富裕国の使用者団体と政府は、このプロセスをひそかに弱めようとしている。プロセスを推進する勢いを維持する必要がある

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