鉄鋼業の過剰設備と安全衛生に対処
2021-03-24
【JCM記事要約】
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2021年3月24日:3月19日と22〜23日のOECD鉄鋼委員会で、TUACはインダストリオール・グローバルユニオンおよびインダストリオール・ヨーロッパ労働組合と協力して、過剰設備の問題ならびに安全衛生状況と労働者に対するその影響をめぐる労働者の懸念を表明した。
120人を超える政府・使用者代表団が、COVID-19パンデミック下の鉄鋼部門における最近の動向をめぐって議論した。市況の軟化とパンデミックにもかかわらず、2020年に世界の製鋼能力は再び1.5%以上増加し、年末に24億5000万トンに達した。その一方で、実際の鉄鋼生産は世界の多くの地域、すなわち北米とヨーロッパで急減した。
過剰設備の増加は問題であり、世界的な過剰生産能力は国際市場をあふれさせ、人為的に鉄鋼価格を引き下げる恐れがあるため、緊急行動が必要である。労働者は今までにもまして、全世界で公平かつ平等な競争条件を確保し、公正な国際貿易を可能にするための国際的行動を要求している。OECD労働組合諮問委員会(TUAC)には、OECD鉄鋼委員会で労働者に発言権を与える権利がある。
マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール鉄鋼担当部長が、TUACを代表して代表団を前に発言し、声明を提出した。
「私たちにとって、インド、ヨーロッパ、北米、ラテンアメリカ、オーストラリア、アジアのどこであれ、鉄鋼業で日々精を出して働く従業員が、鉄鋼業の繁栄と未来のために自分の雇用や生活を犠牲にしないようにすることが欠かせない。鉄鋼業で従業員の安全衛生を尊重しなければならず、そのためには労働者および組合との真の対話が必要だ。これはパンデミックの影響に取り組むためだけでなく、安全衛生一般に取り組むためにも重要だ」
鉄鋼業はパリ気候協定の目標を達成するうえで重要な役割を果たす。クリーン技術への投資にあたっては、労働者・労働組合との交渉により、鉄鋼労働者のための協調的な公正移行計画を立てなければならない。
TUAC経済政策アドバイザーのフィリップ・ステファノビックは次のように述べた。
「COVID-19危機は鉄鋼部門に悪影響を与えており、生産量が対前年比で実に9.5%増加した中国のおかげで緩和されたものの、世界の生産量は2020年に約1%落ち込んだ。2020年に総生産量が減少していながら、世界の生産能力は1.6%増加した。鉄鋼貿易の減少と世界的な過剰設備の増加はCOVID-19の結果ではなく、現在の景気後退との関連で加速した長期的問題だ」
「国際協力と違法生産能力を減らす協定は、部門の回復力を強化・改善するために重要であり、鉄鋼業で既存の雇用を守って公正な移行への道を開く鍵となる」
過剰設備の増大は労働者に圧力をかける。失業は抑えなければならないが、最近インドやスペイン、韓国、南アフリカで見られるような鉄鋼労働者の死亡事故の増加傾向を食い止めなければならない。
組合は、安全衛生措置に労働者とその代表を本格的に関与させることが、COVID-19感染率を低く抑え、労働者の命も守るための最善の方法だと主張している。
ジュディス・カートン=ダーリング・インダストリオール・ヨーロッパ労働組合書記次長が次のように述べた。
「全世界で平等な競争条件を作り、高い雇用・環境基準を確保する必要がある。労働組合はOECD鉄鋼委員会に対し、世界的な過剰生産能力と低価格鉄鋼のダンピングに取り組むよう要求し続けている。これにより、すべての鉄鋼労働者の雇用権が尊重される質の高いグリーンな鉄鋼の生産に向けて、真の共同国際努力が可能になるだろう。鉄鋼業と鉄鋼労働者は、パリ気候協定の目標を達成するうえで極めて重要な役割を果たす。企業はクリーン技術と労働者の両方に投資する必要がある」